Re: 新世界への神話 ( No.73 ) |
- 日時: 2010/09/11 13:44
- 名前: RIDE
- 更新します。
21話ラストです。
6 別の入り口から入っていったエイジは、広大な場へとたどり着いていた。
「かなり広いな・・・・」
その先の道も、自分が歩いてきたところよりもかなり大きく、なんとなく感心してしまう。
「フフフ・・・・やっと来たか」
背後から笑い声が聞こえ、エイジは振り返った。
「青銅のムーブランが来てくれることを期待していたのだが、まあ、その弟で我慢してやるか」
自分の頭上にある岩場に、黒いムーブランとその陰鬱の使者が待ち構えていた。戦いの空気を感じ取り、ウェンドランは人型形態となる。
「ムーブランの偽物か」 「このネガティブムーブランが偽物かどうか、この必殺技を受ければはっきりするさ!」
使者と共に飛び降りたネガティブムーブランは黒い炎を宿らせた剣を構えた。
「黒龍斬り!」
その黒い炎が龍の頭を形取り、ネガティブムーブランが剣を振ると同時に龍の口から黒い炎の弾を放った。炎弾はウェンドランの腕や胴、脚に直撃し、そのすぐ後に全身を黒い炎が包み込んだ。
「岩本エイジとウェンドランはこの程度か」
物足りなさを感じるネガティブムーブランの使者。エイジが青銅のムーブランの使者である佳幸の弟だと聞いていたので、中々の実力者ではないかと思っていただけに、その落胆は大きい。
「この分だと、青銅のムーブランとおまえの兄貴も噂ほどではなさそうだな」 「どうかな」
勝ち誇るネガティブムーブランの使者に対し、エイジは不敵に笑う。その途端、ウェンドランは黒い炎を吹き飛ばした。その光景に、陰鬱の使者は目を見張らせる。
「なにぃ・・・・」 「兄貴とムーブランの炎はこんなもんじゃねぇぜ。守りたいものや相手を思う心もなければ、どう頑張ってもおまえたちは偽物だ」
ウェンドランは、銃を取り出した。
「そして、俺たちにも劣る!」
その銃は、両手持ちの大型ライフルへと変わり、ウェンドランはその銃口をネガティブムーブランに向けた。
「バスターモードファイブラスター!」
高熱の火炎が放射され、それを浴びたネガティブムーブランは封印されてしまった。
「このまま雷矢のところまで突き進んでやる」
自分の精霊がやられて呆然としていたネガティブムーブランの使者だったが、それを聞く と負けたにもかかわらず得意げになった。
「残念だが、雷矢様のところへなど辿り着けん」 「なに?」
無視して通り過ぎようとしたエイジは、その言葉が気になって足をとめた。
「な、なんだ一体・・・・?」
そして、段々と体温が上昇していくのが感じてくる。
訳がわからないエイジ。だが、腕や腹などウェンドランが黒龍斬りを受けた箇所と同じところが疼くように感じている。
「こ、これは・・・・?」 「それこそ黒龍斬りの、黒炎の恐怖だ・・・・」
先に必殺技を放っていたネガティブムーブラン。その黒い炎は、精霊を通り抜けて使者に直接攻撃するものであった。
「おまえもすぐに、俺と同じ運命をたどるのだ・・・・」
そう言って、ネガティブムーブランの使者は自決した。
エイジはそちらに気を取れる余裕はなかった。体温はどんどん上がっていき、あの黒炎に 燃やし尽くされるようであった。
「だ、だめだ・・・・気をしっかり持たないと・・・・」
エイジは足に力をこめた。精霊の攻撃によって使者が不調になることは、使者の心が揺らいでいるということだ。心をしっかりと持たなければ、左程問題ではない。 だが、エイジは段々と身体が重く感じられてきた。
「くっ・・・・」
遂には壁に寄りかかり、息を荒くさせる。
先へは、当分進めそうにはなかった。
「チャンスだ」
そして、物陰から今の戦いを眺めていた一人の陰鬱の使者が、ぐったりとしているエイジに狙いを定めたのだった。
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