Re: 新世界への神話 ( No.7 ) |
- 日時: 2009/09/21 18:37
- 名前: RIDE
- 更新します。
第3話のラストです。
3 「ところで、その盗まれなかったって言う精霊なんだけど、見せてくれねえか」
しびれも収まったダイは、これから戦う事になる精霊というものがどんなものか知っておく為に、賢明大聖に要求した。
「わかった。ついてきたまえ」
一行は賢明大聖に続いて大聖の間を出て、とある大広間へと着いた。そこには床に八芒星が描かれてあった。
その八芒星の一角だけ、光っている所があった。
「ん・・・・?」
光は、真っ直ぐにハヤテの元へ向かった。良く見ると光を放っている勾玉なんだということがわかる。ハヤテは手にとってみると、光は一瞬強くなり、それが止んだ後ハヤテの手にあったのは、勾玉ではなく鳥獣のぬいぐるみみたいな物であった。それには手触りというものが全く感じられない。
「これは・・・・」
ハヤテの近くにいたマリアとヒナギクも彼の手を覗き込んでくる。
「それが精霊だ」
賢明大聖はわずかに驚きを含みながら説明する。
「これが・・・・」 「そうだ、風のシルフィード。綾崎ハヤテ、君の精霊だ」 「ええっ!!」
急に自分のものだといわれたハヤテは、理由を聞かずにはいられなかった。
「な、何で僕なんですか!?」 「君の心が、シルフィードの主にふさわしかったのだろう。だからシルフィードは君を主に選んだ」 「でも・・・・」
そこまで言いかけたハヤテはふと思った。自分はナギの執事。主がさらわれたのなら全力で取り返さねばならない使命がある。
そのためには、この力は必要不可欠である。
「わかりました。シルフィードは、僕が預かります」
シルフィードはハヤテの決意した表情を見た後、意匠された腕輪を出現させ、それをハヤテに渡す。
「シルフィリング。シルフィードの主の証だ。決して離すなよ」
説明する賢明大聖に、ハヤテは強く頷いた。
「でも、シルフィードって言われても、これじゃカッコいい感じはしないわね」 「そうですわね。とても強そうには見えません」
ヒナギクやマリアの言葉に苦笑しながら賢明大聖は二人に述べた。
「仕方ない。その姿は力を抑えている状態なのだから。力を開放すれば真の姿、さらに人型に変わる事ができる。そして、精霊と使者が一体化したとき、その形態は精霊以上の戦闘力を持つのだ。」
マリアとヒナギクは驚きをこめて、改めてハヤテの周りを飛び回っているシルフィードを見る。その様子は可愛げがあって、やはり戦うようなイメージが沸けない。
「最後に二つ言っておく。妖精や精霊は通常、力のある人間にしか見えない。君たちは精霊界に来た為に目にすることができるようになったが、一般人の前で妖精や精霊をみても動揺したりしないように気をつけてくれ。もう一つ、妖精は人の心から生まれる。人の淋しさから生まれた妖精は時として人の心に取り込み、その人の心を弱くする。それらに引き込まれないように、自分の心を強くもってくれ。そしてそれらを気味悪がっては駄目だ。その妖精は、その人が救いの手を求めているという現われなのだから」
そして賢明大聖はもう一度ハヤテに向き直った。
「シルフィードを頼んだぞ、綾崎ハヤテ」
霊神宮を後にし、来た道を戻って歩くダイたち。
「あの・・・・タカスギさん、少し聞いてもよろしいでしょうか?」
マリアの質問に一同は足を止める。
「あなたはこれから、精霊と戦うのですよね。そのための力はあるんですか?」
するとダイは、表情をきょとんとさせる。
「何言ってるんだ。精霊は精霊同士戦わせるのが得策だろ?だから艶麗とか言う女とその手下は綾崎にみんな任せる」 「ええっ!」
精霊の使者になったばかりだというのに、そんな大変なことを押し付けられたハヤテは、声をあげずにはいられなかった。
「当然だ。俺たちの標的は俺たちの世界の住人と、艶麗だ。」 「でも、あなたに戦う力があることは確かなんですよね?その力を見せてくれませんか?」
ダイはマリアたちを見ながら少し考え、その要求をのむ事にした。
「まあ、見せるぐらいなら問題ないかな」
そうつぶやいた後、ジェットたちを手招きした。彼らに何か話した後、ダイはマリアたちに説明を始めた。
「賢明大聖も言ってたが、俺たちの世界は機械文明が他の二つの世界より発達している。その世界には精霊なんてものはねえけど、かわりに戦闘用の巨大ロボットがあって、人々はそれに乗って戦うんだ。けど」
ダイはそこでジェットたちを指す。
「このジェット、ドリル、ジムの3人は違う。こいつらはクロノス星の機械生命体であった前世の力を受け継いでいて、その力を開放する時、ロボット形態に慣れるんだ」
「ええっと・・・・つまり・・・・」
いまいち話の内容を理解できない。
「ま、百聞は一見に如かずだ。ジェット、ジム、頼むぞ」
二人は頷き、そのまま通路から飛び降りる。
ハヤテたちは髪を逆立てる様に驚いた。ここは空中で、しかもかなりの高さである。そんなところから飛び降りたら自殺行為にしか見えない。
だが、下から光が大きく発したかと思うと、下からジェット飛行機とヘリコプターが上昇してきた。
「これは・・・・」 「これがあいつらの力だ。ちなみに飛行機はジェットで、ヘリコプターはジムだ」
ハヤテとヒナギクは常識を超えた状況に、開いた口がふさがらないような心境だった。精霊の事も信じられない事ばかりだが、目の前で人が乗り物に変わった事は、それ以上にインパクトがあった。
マリアも興奮が冷め遣らぬ様子で、再びダイに質問する。
「タカスギさんも、変身できるんですか?」
すると3人の表情を見て満足そうなダイは笑いながら答えた。
「いや、俺はそんなことはできない。俺の力は、見せる時がきたら見せるさ」
どうやらダイはもったいぶるのが好きそうだ。それに、まだ戦う気ではないらしい。
「さて、このまま地上に降りるとするか。綾崎たちはジムに乗ってくれ。俺とドリルはジェットに乗る」 「ダイ、俺の方がジムよりも速くお客を降ろせるぜ」 「速く降ろせるって、おまえはスピード狂だろうが!そんな奴に乗せられるか!」
そんなやり取りを聞きながら、ハヤテたちは恐る恐るヘリコプターに乗り込んだ。
全員が乗り込んだのを確認したら、ジェットとジムは降下を始めた。
精霊界の人間が住む地上へと。
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