Re: 新世界への神話 ( No.66 ) |
- 日時: 2010/06/22 19:51
- 名前: RIDE
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5 「詳しく教えてください」
エーリッヒは、伝助の覚悟を汲むことにした。
「先ほど申し上げたとおり、失ったリングの魂は取り戻すことはできません。ですから、替わりとなる新しい魂をリングに吹き込んでやればいいのです」
どうあっても甦ることができないのなら、新しいものを用意すればよい。寿命の切れた電 球を取り換えるような簡単な話である。
「それには、あなたの思いをこめればいいんです。血と共にあなたの全身を駆け巡る思いを」
使者の思いを魂とする。
そう語るエーリッヒだが、ここで釘を刺す。
「リングに思いを込めるのはそう容易いことではありません。数に関係はありませんが、これは黄金の使者でしかできません。白銀の使者でさえやっとできること。青銅の使者であるあなたがどうがんばってもできないでしょう」
しかし、とエーリッヒはあるものを取り出した。それは、濁った色の液体が入ったガラス瓶であった。
「これを飲めばあなたでもそれが可能となります。ですが、あなたはその間酷い幻覚を見ることになるでしょう。並みの人間なら、それだけでショック死してしまうほどの」
リングの修復のために死ななければならないということがこの言葉でわかった。
正直、幻覚に対して恐れを抱いたのは事実だが、それでも伝助は臆することなくその液体を飲み干し、イーグルリングとライガリングを手に握った。
それから伝助は、幻覚を見せ付けられることとなる。
「ぐ・・・・ぐぁああ・・・・」
身を切りそうな表情と、耳を塞ぎたくなるような呻き声から、伝助の痛々しい様子がよくわかり、ミハエルでさえ目を背きたくなってしまう。
しかし伝助の変化にそれ以上のことは起こらない。発狂してもおかしくない中で、彼はただ耐えていた。
「ぐわぁぁぁっ!」
しばらくして、彼の両手が光り出し、それは二つのリングへと吸い込まれた。それと同時に伝助も気を失い、倒れこみそうになるが、そこはエーリッヒが支えた。
「自分のリングのみならず友のリングのために死をかけるとは・・・・」
エーリッヒは、気を失った伝助の顔を覗き込む。
「あなたは、友に対して誠実なのですね」
エーリッヒは、ミハエルのほうを向いた。
「ミハエル、道具を用意してください。私は、伝助を運びます」
命じられたミハエルは道具を取りに行くため、エーリッヒは伝助を安静な所へ安置しておくためそれぞれ小屋の中へと入る。
すぐに外へ戻る二人。エーリッヒはミハエルが持ってきた道具を受け取った。
「伝助の心に応えて、リングは見事に甦らせてみましょう」
そしてそのまま、作業に取り掛かった。
一週間後、精霊界ダスク峡谷。
巨大に切り立った崖の谷間は迷路となっている。複雑に入り組んでいて、足場の険しい道となっていた。
「恐らくここが陰鬱の使者たちのアジトなんだろうな」
まさに天然の要塞と呼ぶのにふさわしいこの峡谷を見上げて、黄金リングを持っているダイは呟いた。
「そうですね。ここら辺一帯は荒れ果てていて、人が全く寄り付かない地となっているようですから、うってつけですね」
彼の他にはジム、ジェット、ドリル、佳幸たち八闘士にハヤテとヒナギクの合わせて十三人が、ダイの後ろに控えていた。
「しかし、伝助は間に合わなかったようだな」
この一週間、伝助は帰ってくることはなかった。彼について何の報せも来ないまま、決戦の日を迎えてしまったのだ。
「仕方ねぇさ。伝さんの身に何か起こったんだ。俺はリング無しで戦う」 「だけど、それじゃあ危険すぎるよ」
勇み出る塁を拓実は何とか思い止ませようとしていた。
「ん・・・・?」
そんな時、ジェットはこちらに近づいてくる人影に気付いた。
「来たようだぞ」
彼が指した方向に全員振り向く。
「あ、あれは・・・・」
徐々に明らかになっていくその姿に、八闘士、とくに塁は顔を綻ばせた。
「伝さん!」
たまらず、塁は駆け出した。
「伝さん、無事だったんスね!もう待ちくたびれたっスよ!!」
だが、伝助は微笑んだかと思ったら、その姿は幻であるかのように消えていった。
「で、伝さん・・・・?」
残されたのは、ライガリングのみであった。
塁はそれを拾い上げた。完璧に修復されていて、まるで初めてこれを手にした時のようであった。
「伝さんは、魂となってこれを届けに来たのか・・・・?」
とりあえず腕に着けてみた。その装着感から断言した。
「間違いない。ライガリングは甦ったんだ!」
塁の戦闘準備は、完全に整ったのである。
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