Re: 新世界への神話 ( No.64 ) |
- 日時: 2010/06/07 19:19
- 名前: RIDE
- 更新します。
3 「遅いですよ、ミハエル」
褐色の肌に銀髪をもつこの男性は、自分より遅れてミハエルを咎めた。
「ごめんよ、エーリッヒ」
ミハエルと交わすやり取りをみて、この男がエーリッヒだと察した。
「あなたがエーリッヒ・・・・」
そこでエーリッヒは、伝助の存在に気付いた。
「そうですが、私に何か用でしょうか?」 「あなたを尋ねる使者の目的はひとつに限られます。ですが、野草摘みを終わらせなければそれができないとミハエル君から聞いたので、お手伝いにきたのです」
エーリッヒは伝助をしばらく見ていた。
「人手が増えて、嬉しいですよ」
そう言って、エーリッヒは作業に取り掛かった。伝助とミハエルもそれにならった。
汗を流しながら野草を摘む三人。手を動かしながらミハエルは伝助に喋った。
「ねえ、なんでリングの修復が必要なの?」 「陰鬱の精霊の使者との戦いが控えているのです。だから、一刻も早く修復させてもらいたい。どうしてもリングが必要ですから」
伝助も、手を休めることなく答えた。
「その陰鬱の使者は、どうするの?」 「戦うからには、倒すしかないでしょう」
それを聞いたエーリッヒは厳しい視線を伝助に送った。が、それに気付かない伝助が続けた言葉に、それは和らいだ。
「霊神宮へと送って、使者としての心を取り戻して欲しいですからね」
ミハエルはきょとんとしながら聞いた。
「相手を殺して終わりにする、でもいいんじゃない?」 「確実な方法はそれですが、それじゃあ使者になった意味がないじゃないですか。心を救う使者となった意味が」
それを聞いたエーリッヒは、微かに口の端を吊り上げた。
三人は着々と作業を進め、摘み上げた野草は山となっていた。
「今日はここまでです」
エーリッヒが仕事の終了を告げた。
「あなたのおかげで早く済みました。ありがとうございます」 「いえ、そんな」
礼を言うエーリッヒに会釈を返す伝助。
その時、突然強風が吹いた。
「ああっ!」
伝助は声を上げた。せっかく摘んだ野草が風に乗って次々と吹かれてしまう。
だが、エーリッヒがそちらに視線を向けただけで、野草はそれ自体が意思を持っているかのごとくもとのところへと収まっていった。
「な、なんだ・・・・?」
何が起こったのかわからず、伝助は困惑してしまう。
「超能力だよ」
そんな彼にミハエルが説明した。
「エーリッヒはサイコキネシスを使う精霊の使者でもあって、エーリッヒ自身もエスパーな んだ。だから、念力やテレポーテーションの類が容易く使えるんだ。僕も超能力者だけど、使者の力量同様まだまだエーリッヒには遠く及ばないのが現実さ」
そう言っている間にまた突風が吹いた。エーリッヒとミハエルは念力で野草を抑えるが、その後から続いた風は防ぎきれず、一部の野草が持って行かれる。
「ワイステイン!」
それを見た伝助が自分の精霊であるワイステインを呼び出す。ワイステインは突風よりも強い風を起こして、持って行かれそうになった野草を取り戻した。
「すごいね、その精霊」
ワイステインはもちろん、その力を自在に扱える伝助の使者としての力量に、ミハエルは感心した。
「どうも」
それに対して、伝助は余裕に返したのだった。
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