Re: 新世界への神話 ( No.58 ) |
- 日時: 2010/05/01 21:28
- 名前: RIDE
- 更新します。
4 「や、やっぱりグルスイーグ・・・・」
そう。相手の精霊は氷狩のグルスイーグに似ていたのだ。唯一つ、体色が黒いことを除けば。
「黒いグルスイーグ・・・・。それじゃあ・・・・」
そこへ、黒いグルスイーグの後ろからその使者がやってきた。その者はハヤテの予想どおり、陰鬱の使者であった。彼はズカズカと倒れているハヤテに歩み寄り、その体を足蹴にした。
「雷矢様の弟だと聞いていたから、どれだけ骨のある奴かと思ったら、雷矢様とは似ても似つかぬ弱々しい奴だ」
陰鬱の使者はハヤテの身を掴み起こした。
「聞け、綾崎ハヤテ。もうおまえたち兄弟の絆は存在することはない」
男は、冷酷な笑みを浮べて言った。
「だから心置きなく、貴様を討つことができる」
陰鬱の使者がハヤテに手をかけようとしたその時だった。
「正宗!」
手に木刀・正宗を持ったヒナギクが人型形態のヴァルキリオンと共に跳び上がり、二人の間に割って入った。反射的に陰鬱の使者はハヤテを放し、後退して離れた。
「ヒ、ヒナギクさん・・・・」 「ハヤテ君はやらせないわ!」
ヒナギクとヴァルキリオンは陰鬱の使者と黒いグルスイーグに対峙する。
「甘いな」
黒いグルスイーグは今度はヴァルキリオンに向けて凍気を放った。ヴァルキリオンは全身を黒い雪に包まれて、そのまま氷像となってしまった。
「ヒナギクさん・・・・逃げてください・・・・」
戦況を不利と見たハヤテは、ヒナギクに自分を残して逃げるように促すが、彼女はそれをきっぱりと断った。
「イヤよ。ハヤテ君を置いていくことなんてできないわ」 「でも・・・・」 「安心しろ」
二人が言い合っているうちに、陰鬱の使者と黒いグルスイーグは退路を塞いでいた。
「二人仲良くあの世へ行かせてやる。陰鬱の精霊の恐ろしさを肝に銘じながらな!」
黒いグルスイーグがハヤテとヒナギクにとどめを刺そうとした。
その寸前、横から何者かが攻撃し、黒いグルスイーグは飛び退いてかわした。
「な、なんだ・・・・?」 「本物が来たということだ」
そこに現れたのは、真のグルスイーグと氷狩であった。
「あんたの言うとおり、ここに敵がいましたね」
氷狩はそう言って、後ろにいるダイを振り返った。
「俺のカンはよく当たるんだ」 「論理的じゃないですけど、あんただと何故か信用できる気がしてきます。それにしても・・・・」
氷狩は、黒いグルスイーグと陰鬱の使者に向き直った。
「陰鬱の精霊に、このグルスイーグと同じネガティブグルスイーグが存在すると聞いたことがあるが、それがおまえか」
グルスイーグの登場によって、周囲に散っていた黒い雪が白い雪へと変わっていく。それを見た陰鬱の使者は不敵に笑った。
「おもしろい。青銅か陰鬱、どちらが強いグルスイーグか決着をつけたいと願っていたところだ。ここではっきりとさせてやろう!」
二体のグルスイーグが睨みあう。お互い瓜二つな姿形であるが、それぞれ青銅と黒い陰鬱の精霊というはっきりとした違いがあった。
「受けてみろ!ダークフロストの恐怖を!」
ネガティブグルスイーグは黒い雪を生じさせる必殺技を真っ先に放った。黒い霧に包まれたグルスイーグは暗闇に目を奪われ、身に付いた霧による水滴が氷結し、完全に凍りつく時には、ヴァルキリオン同様の黒いグルスイーグの氷像が出来上がっていた。
「このネガティブグルスイーグの必殺技は、暗闇と霧氷二つの恐怖をもたらすのだ。これにかかれば、例え炎でも凍りつくであろう」
勝利を確信する陰鬱の使者。だがそれもすぐに打ち破られる。
グルスイーグの氷像に亀裂が入っていく。それを陰鬱の使者だけでなく、ハヤテとヒナギクも驚きをもって見ていた。
「ネガティブグルスイーグはこの程度の凍気しか放てないのか?」
グルスイーグの身からぽろぽろと氷の破片が零れ落ちる中で、氷狩は何事もなかったかのように言った。
「炎を凍りつかせることはできても、このグルスイーグを凍らせることはできないようだな」
ダークフロストによる凍気は、グルスイーグの全身を覆っている氷のヴェールを侵食しただけで、グルスイーグを凍らせるには至らなかったのだ。
完全に氷が身から落ちたグルスイーグに対し、ネガティブグルスイーグは身構えた。
「今度はこちらの番だ。真のグルスイーグの必殺技を見ろ!」
グルスイーグはフリージングスノウズをネガティブグルスイーグに向けて放った。ネガティブグルスイーグはグルスイーグの後ろへと跳んで回避したが、完全にはかわしきれず左足が凍りついてしまった。
「終わりだな」
膝をつくネガティブグルスイーグを見て、氷狩は言いたてた。
「それではもはや次の攻撃はかわしきれん」 「うう・・・・」
悔しそうに呻く陰鬱の使者。しかしどうすることもできない。
「これで最後だ!」
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