Re: 新世界への神話 ( No.56 )
日時: 2010/03/30 21:19
名前: RIDE

短いですが、更新します。



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「ケンカはやめなよ!」

 一触即発な二人の間に、仲裁として佳幸が割って入った。仕方なく二人は眼をつけるのを止め、お互いそっぽを向いた。

「あいつ自身が悩んでいることに悩んでどうするんだ?」

 優馬の言葉に全員首を傾げてしまう。彼は再び、今度は噛み砕いて言った。

「つまり、あいつの悩みを共有するならともかく、あいつが苦悩する姿に心配してもしょうがないんじゃないのか?」

 これもいまいちわかりにくく、達郎やエイジにはさっぱりだったが、ヒナギクには理解できていた。

「ハヤテ君と一緒に同じ悩みを抱えて、一緒に考えなきゃいけないってことね」

 人の悩んでいる姿を見るのではなく、人の悩みに触れ、それを理解し、それに対して自分はどうしたらいいのか、例え答えは出なくても考えることが心配することではないのかと優馬は言いたいのだ。

「優馬さんの言うとおりですね」

 佳幸は強く頷く。

「これから戦うあの雷矢という男の人に対して、綾崎さんを後押しすることぐらいしかできないかもしれませんけど、それでも苦しみを分かち合うことであの人の助けにはなると思います」
「そうね・・・・」

 ヒナギクは優馬に向かって頭を下げた。

「ありがとうございます土井さん。私が何をすべきなのかはっきりしました」
「別に、どうということはない」

 照れたように顔を背けた優馬は、そのまま逃げるように去って行った。

「行っちゃった」

 佳幸たち八闘士は苦笑した。その理由がわからず、ヒナギクは恐る恐る聞いてみた。

「私、何か悪いことした?」

 すると、拓実が苦笑したまま答えてくれた。

「いいや。ただ、優馬さんは苦手というか・・・・」
「苦手?」

 しかし拓実はこれ以上は話してくれなかった。

「じゃ、僕もこれで」

 そして、彼は帰途へついてしまった。

「さあ、帰ろう」

 佳幸、達郎、エイジの三人も三千院家の敷地を後にしようとした。

「待て」

 そんな三人を氷狩が呼びとめた。

「せっかく会ったんだ。バスケの2ON2でもしないか?」

 それを聞いた途端、エイジたちは踵を返してきた。

「いいですね氷狩さん!やりましょう!」
「久しぶりに四人でやるのもいいね」
「ああ、行こうぜ!」

 バスケが趣味の四人は氷狩を先頭にして駆け出していった。

「まったく、あの男どもは・・・・」

 呆れかえった花南は、ついヒナギクと顔を合わせてしまった。二人はすぐ、頬を膨らませて顔を背け、そのまま別々に帰っていった。