Re: 新世界への神話 ( No.55 ) |
- 日時: 2010/03/27 19:54
- 名前: RIDE
- 更新します。
第19話 陰鬱の使者たち
1 「なにい!取り返せたのは黄金のリングだけだと!」
帰ってきた達郎たちの報告を聞いたクラウスは激しく怒った。
「それでよくおめおめと帰ってこれたな!いったい何をやっているんだ!」
対して、エイジたちはうんざりした様子で聞いている。
「クラウス、もういい」
頭から湯気を出しかねない執事長を諌めたのは、主であるナギであった。クラウス同様不機嫌であったが、普段のように騒ぎ立てるようなことはなく落ち着いている。
「いずれにせよ、マリアは返してもらわねばならんし、黄金の勾玉も無ければスピリアルウォーズを再開することもできん。おまえたちは必死で取り返すのだぞ。いいな」
屋敷から出ると、エイジは苦情を吐かずにはいられなかった。
「上から物を言うのが当たり前な態度しやがって、頭にくるぜ」 「あの人たちにいちいち怒ってたらきりがないよ」
兄である佳幸は苦笑しながら弟を宥める。
「では、僕はここで」
八闘士たちの中で真っ先に別れを告げたのは伝助だった。彼の手には自分のイーグルリン グと塁のライガリングがあった。
「これから陰鬱の使者たちと戦うって時に、リングが壊れたままじゃ本当に一人だけで大丈夫っすか?」
塁が心配そうに尋ねる。伝助は彼と自分のリングを修復させるために、これから出かけるのだ。
「子供のお使いではありませんし、塁君は早く老師という人の元へと帰らなくてはならないでしょう?一人で十分ですよ」
でも、と佳幸は念を押した。
「気を付けてください。リングの修復を頼めるのは精霊界にある秘境と聞きましたから」 「わかっています。すぐにリングを修復してくれるとは限りませんけど、修復されたリングに期待して待っていてくださいね」
そして塁は危篤状態にある老師の元へ、伝助は精霊界に向かうために皆から離れていった。
「それじゃ、俺たちも帰るか」
達郎の一言に、一同は頷いた。
「俺たちも気をつけなきゃな。いつ陰鬱の使者が襲ってくるかわからないからな」
そう注意を促した優馬は、ヒナギクが三千院家の屋敷の方を向いていることに気付いた。
「桂さんとか言ったな。どうした?」 「え?あ、その・・・・」
呼びかけられたヒナギクはなぜか慌てふためきながら返答した。
「だ、大丈夫かなって・・・・」 「何がだ?」 「ハヤテ君・・・・」
それを聞いた拓実も、ハヤテの心中を思いやった。
「兄があんなことをやってしまったんだ。気に病んでなければいいんだけど」
だが花南だけは、俯かせた顔を紅潮させているヒナギクを見て、年増な笑みを浮かべた。
「・・・・なによ」
花南の視線に気付いたヒナギクは、彼女をジロリと睨む。それだけで同年代からは貫録があるように感じられるが、花南は大して動じず冷やかしを入れてきた。
「あんた、あの執事に惚れてるんでしょ?」 「な!!!」
途端に紅くなっていたヒナギクの顔がさらに真っ赤に染まった。
「な、な、何言っているのよ!!」
狼狽するヒナギク。そこにいつもの凛とした態度はなかった。
「わ、私は白皇の生徒会長なのよ!そんなふしだらなことが許されるわけないじゃない!」
必死な形相で言い訳をする。
「それに、ハヤテ君には、別に好きな人がいるもの」 「えっ、本当!?」
佳幸や達郎は、純粋な好奇心から追及しようとする。
「ハヤテ君には十年もの間思い続けている人がいて、その人に伝えたいことをずっと抱え込んでいたのよ。私なんかが入り込む隙は・・・・」 「で?」
それまでヒナギクのことを茶化そうとしていた花南は、彼女の言い分を聞いている内にだんだんと虫唾が走り、苛立ちを含ませながら口を開く。
「それで、だからあんたはあの執事のことを諦めるってわけ?」
花南の挑発的な態度に、ヒナギクはむかついて食ってかかった。
「じゃあ、他に何しろっていうのよ」
花南は呆れたようで、大げさのように溜息をついた。
「生徒会長とか偉そうなこと言うけど、威勢がいいのは口だけね」 「なんですって!」
ヒナギクは今にも木刀・正宗を叩き込むような勢いで花南に詰め寄る。対する花南も鋭い目つきで睨み返し、両者は激しく火花を散らしていた。
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