Re: 新世界への神話 ( No.53 ) |
- 日時: 2010/03/18 21:39
- 名前: RIDE
- 更新します。
4 闘技場から離れようと、ネガティブライオーガを従えた陰鬱の精霊の使者たちは、それぞれ分かれて練馬の街を走っていた。
「む・・・・?」
そのうちの一緒に走っていた二人は、異変に気付いて足を止めた。
「雪に、桜の花・・・・?」
辺り一面に、雪と桜の花が舞い降っていた。それは有り得ないことであった。雪に関しては季節はずれであるし、もう散ってしまったはずの桜が花ごと降っているのはおかしいことである。
そして、彼らはいつの間にか、自分たちの前を立ち塞いでいるものたちが現れていることに気付いた。
「グルスイーグ、フラリーファ」
それらの精霊の後ろには、使者である氷狩と花南がいた。
「おまえら、黄金のリングと勾玉を持っているか?」
それを聞いた陰鬱の精霊の使者たちは、意味ありげに笑ってはぐらかそうとする。
「腕ずくしかないな」
仕方ないとばかりに、グルスイーグとフラリーファは人型形態となって構えた。
「氷狩、足を引っ張らないでよね」 「誰に向かって言ってんだ?」
ネガティブライオーガも戦闘態勢をとるが、その前に雪と花がさらに大量となって振り出してきた。
「こ、これは・・・・」 「まだわからないの?」
花南が呆れた風に口を開いた。
「これが何の意味なのかわからない時点で、あんたたちは負けてるのよ」
そして、フラリーファは必殺技を放った。
「ブロッサムボム!」
フラリーファがブローを打つと同時に、周囲の桜の花が一斉にネガティブライオーガに襲い掛かり、爆発しだした。その威力は、ネガティブライオーガらだけでなく、陰鬱の精霊の使者も爆風を受けて気を失いかける。
そこへ、グルスイーグも間髪入れずに必殺技を繰り出す。
「フリージングスノウズ!」
今度は凍気を受け、ブロッサムボムを喰らって弱っていたネガティブライオーガは凍結してしまい、光となって封印された。
後には、完全に気絶した陰鬱の精霊の使者たちが倒れていた。花南と氷狩は、彼らの体を探るようにして触る。
「・・・・ないわ。あんたの方は?」
花南に尋ねられると、氷狩も首を横に振った。マリアについてはもちろんのことだが、この陰鬱の精霊の使者たちは黄金の勾玉とリングも持っていなかった。
「それにしても、大変なことになったわね」 「ああ。黄金の勾玉とリングをめぐって、俺たち青銅の使者と陰鬱の使者との戦いが始まったんだ」
これはその前触れであると感じる二人であった。
「ほう。俺たちについて来れるとは・・・・」 「青銅の使者にしては、中々やるな」
別のところでも、エイジと拓実が陰鬱の精霊の使者二人を捕まえていた。
「黄金のリングと勾玉を返してもらおうか」
拓実がそう言うのと同時に、アイアールとウェンドランは人型形態に変わっていく。
しかし、陰鬱の精霊の使者たちは嘲笑っていた。
「残念だったな。俺たちは何も持ってないぜ」
そのことを表すかのように二人は手をひらひらと振った。本当のことを言っていると感じたエイジたちは、彼らを無視して突き進もうとした。
「おおっと!」
その前を、人型形態のネガティブライオーガが立ち塞がった。
「俺たちを前にして、無事ですむと思って・・・・」
だが陰鬱の精霊の使者たちが言い終わる前に、ウェンドランとアイアールはネガティブライオーガの背後に回っていた。
「なにっ!?」
陰鬱の精霊の使者たちは驚愕した。ウェンドランは彼らが見切れないほどの速さで移動し ていたのだ。
「さっきのおまえらのセリフじゃないけど、こう簡単に後ろを取れるようじゃ、陰鬱の精霊と使者もたいしたことないな」
余裕あるエイジの一言に、陰鬱の精霊の使者たちは唇をかみ締める。
「くっ!」 「遅い!」
ネガティブライオーガは離れようとしたが、アイアールとウェンドランはそう易々と逃がさなかった。
「これでわかったでしょう。さっさと僕たちを通してくれ」
だが、陰鬱の精霊の使者たちは道を空ける気配を見せない。
「どうしてもやるというのなら、来い!」 「くそっ!これ以上舐められてたまるか!」
捨て鉢な思いでネガティブライオーガを突撃させるが、アイアールとウェンドランの方が速かった。
アイアールはウェンドランから矢を渡され、それを弓に番えた。
「ミーティアロー乱れ撃ち!」
アイアールが放つと同時に矢は数十本にも増え、次々とネガティブライオーガに突き刺さる。一発一発がウェンドランが直接放つよりも、アイアールのゴールデンアローよりも威力は大きく、ネガティブライオーガは封印されてしまった。
「あ・・・・」
たじろぐ陰鬱の使者たち。すかさずウェンドランとアイアールが彼らを拘束する。
「おまえたちの目的はなんだ?」
身動きがとれない二人に、拓実が尋ねた。エイジも詰め寄って聞き出してくる。
「おい!おまえらは一体なんなんだよ!」
すると、陰鬱の使者たちは笑いながら答えた。
「俺たちは影さ。雷矢様に忠実な」
彼らは笑みを崩すことなく続けた。
「これだけは教えといてやる。雷矢様は青銅の使者でありながら、その強大な力で俺たち陰鬱の使者さえも支配なされた。その力は、黄金の勾玉とリングを手にすることで、天と地をも掴むだろう」 「雷矢様は黄金の勾玉とリングを持って、この世界の支配者となられるのだ」
そこで陰鬱の使者たちは歯を強く食いしばったかと思うと、急にガクッと頭を下げた。
「お、おい、どうした・・・・」
彼らの頭を起こしたエイジと拓実は、目を開いて絶句した。
陰鬱の使者たちの口の端から血が流れている。舌を噛み切って自決したのだ。
「敗者は死。それが陰鬱の使者たちの掟ということか」
やるせない気分となった拓実だが、エイジはもっと辛く感じているだろうと思い、彼を気遣った。
「大丈夫かい、エイジ?」 「心配しなくてもいいっスよ。それより拓実さん、奴らの言ってたことが本当な ら・・・・」
拓実も同意見だという風に頷いた。
雷矢は、復讐のためだけでなく世界征服でもやらかすつもりなのだろうか。二人は雷矢の憎しみの大きさを改めて認識していた。
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