Re: 新世界への神話 ( No.48 ) |
- 日時: 2010/02/21 21:15
- 名前: RIDE
- 更新します。
2 「ほら兄貴、タオル替えるぞ」 「ありがと。・・・・ああ、気持ちいいな」
簡易ベンチに仰向けで横たわっている佳幸の顔からタオルを取ったエイジは、新しい濡れたタオルを敷いた。
第五試合が行われている頃、とある控え室では。
佳幸が冷たさに心を安らかせていると、ノック音がしてきた。
「入っていいか・」
ドアの向こうから塁の声が聞こえてきた。エイジは許可を出す。
「どうぞ」
ドアが開かれ、塁が入ってきた。彼はまだ疲労がとれずに寝ている佳幸のもとへ近づき、声をかけた。
「大丈夫か、佳幸?」 「塁さんこそ。もう歩き回って平気なんですか?」 「ああ。もう平気だ」
命を落としかけたとは思えないほど、塁は元気だった。
「もっとも、おまえのおかげだけどな。理子たちから聞いたぜ。おまえは命の恩人だ、ありがとう」 「大げさですよ塁さん。僕たち仲間じゃないですか」
佳幸と塁はともに笑いあった。その塁が帰り支度をしているのに気付き、エイジは尋ねた。
「もう帰るんスか?」 「ああ。みんなには悪いけど、老師のことが気になるからな。生きているうちに顔合わせできればいいんだけど・・・・」 「大丈夫ッスよ!塁さんがこうやって九死に一生を得たんだから、その老師っていう人もきっと盛り返してくれるッス」
エイジからの励ましを受けた塁は、不安が少し晴れる。
「そうだん。うん、きっとそうだ」 「そうそう。ん、あれ高杉さんじゃね?」
開けっ放しにしているドアの隙間から、エイジは何かを探しているようなダイの姿を見つける。
「何なんだ?おーい、高杉さーん!」
エイジの呼びかけに気付いたダイは、控え室の中へと入ってきた。
「おまえら、こんなところで休んでいたのか」 「ええ、まあ。どうしたんスか高杉さん?何か探し物しているみたいでしたけど」 「そんなところだ。一応おまえらにも伝えておくか」
そこでダイは険しい顔つきとなって語りだした。
「実はこの大会が始まった時から、異様な気配を感じていたんだ」 「え?」
思いがけない話の内容に、エイジだけでなく佳幸や塁も耳を傾ける。
「どこかで俺たちのことを監視しているような・・・・」 「え、それって・・・・」
佳幸がまさかと思って聞き出す前に、ダイが口にした。
「そうだ。招かれざる十七人目の精霊の使者が、この闘技場に来ている」
その言葉に、エイジや佳幸、塁の三人は驚愕した。
「ほ、本当なんですか!?」 「ああ。こちらに対する敵意をはっきりと感じる。翼たちにも今探らせている」 「そうか・・・・」
すると塁は、どうしようもないことにむしゃくしゃして頭を掻いた。
「くそー、優馬さんとユニアースがいればすぐに見つかるんだろうけど、今は試合中だしなぁ・・・・」
ダイは、それがどういうことなのかわからなかった。
「何でそいつらが十七人目の使者をいち早く見つけられるんだ?」
それについては、佳幸が説明した。
「ユニアースの角にはいろいろな力があるんです。モチーフとなっているユニコーンと同じように治癒の能力はもちろん、攻撃、防御能力にも秀でています。しかし何よりも、自分に敵対するものを瞬時に探り当てる優れた索敵能力を持っているんです」
話を聞いたダイは、納得したように頷く。確かにその力があれば、真っ先に十七人目の使者にたどり着けるだろう。
「それを知っていれば、もっと早くに行動できたのにな」 「でも、あんたが動くほどのものなんスか?その十七人目の使者は?」
エイジが根本的な質問をした。
「まさか、あの艶麗とかいう女なのか?」 「いや、あいつやその手下とかじゃない。違う感じがする」
だが、ダイの表情はより一層深刻さを増した。
「俺の予感が正しければ、そいつは艶麗よりも厄介だ。奴は、この闘技場にいる全員を無差別に殺すかもしれねぇからな」
それを聞いた佳幸たちは、そんなバカなと思った。その者が同じ精霊の使者である自分たちを狙うのではあれば何かと理由を考えることができるが、何の関係もない一般人にまで手をかけるなんて、一体何のためかわからないからである。
その時、闘技場から異様な歓声が聞こえてきた。何か起こったらしい。
「まさか、現れやがったのか!?」
ダイは急いで闘技場へと向かう。
「俺たちも行くぞ!」 「はい!兄貴はここにいて!」
塁とエイジもその後を追った。
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