Re: 新世界への神話 ( No.47 )
日時: 2010/02/20 21:19
名前: RIDE

更新します。
今回から第17話です。


 第17話 ユニアースの角

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 スピリアルウォーズ一回戦も半分が終わり、折り返しに差し掛かろうとしていた。

「ようやく僕の番か」

 ガイアースを引き連れて、一樹が上がっていく。やっとナギの前で活躍できると思うと、心が弾んでくる。

 彼に対するは優馬と、一角獣に似た彼の精霊、土のユニアースだ。ユニアースは、槍となった一角獣の角を手にした人型形態となっていた。

「まったく、死傷者が出たかもしれなかったというのに、あのお嬢さんはまだこんなことを続けるつもりなのか」

 呆れている優馬とは別に、一樹は戦う気満々であった。

「ナギさんは強い人を求めているんだ。だから僕は、勝ち続けることでナギさんにふさわしい男だということを証明してみせる!」

 一樹のそんな態度を見て、優馬はさらにため息をついた。

「西沢一樹とか言ったよな。あのお嬢さんに惚れているところ悪いが、そんなことでしか自分を証明できないんじゃ、残念だけど実は結べないと思うぜ」

 それを聞いた一樹は、不快を露にした。

「そっちこそ、大人のくせに今さら戦いに怖じ気づくなんて、みっともないですよ」

 言われた優馬は、自嘲気味に笑った。

「そうだな。もう今さらなんだもんな。なら戦うしかない。だが、俺らしく戦わせてもらうぜ」

 医者である優馬は、医療現場に携わっている。そんな自分が精霊の使者として人の心も癒
していけるのだろうか試す意味で、また、対戦相手が心に暗いものを負っているのなら、それを取り払ってしまおうという思いでここに来たことを思い出した彼は意を決した。

[第五試合、開始!]

 合図とともに人型形態のガイアースは、ユニアース目掛けて駆け出した。対するユニアースは身構える様子もなく、ただ槍を地に突き立てた。

「んっ?」

 足で踏む先が異様な反応を示しだしたため、ガイアースは止まってしまった。

 それは、ユニアースの角の槍によるものであった。突き立てられた地点を中心に、槍はユ
ニアースを囲むように、地に古代文字で描かれた陣を敷くのであった。

「これでもう、ユニアースには一歩も近づくことはできない」
「なんだって?」

 優馬の言葉に一樹は怒りを煽られていく。

「このアースフィールドは中に入ろうとする精霊を敵と見なしたら、そいつを拒み、徹底的に排除しようとする。それでも入ろうとする覚悟があるなら、入って来い」
「なにを!排除しようとするのなら、やってみてくださいよ!」

 こけおどしだと思い。軽く見た一樹はガイアースにアースフィールドを無視して突き進ませようとした。

 だが、ガイアースの足がアースフィールドの中へと踏み入れた瞬間、陣の範囲内の地がせり上がって、生き物のようにガイアースを攻撃した。不意打ちを食らったガイアースは陣の外へと飛ばされてしまった。

「そんな。地面が攻撃してくるなんて・・・・」

 予想外の抵抗に驚く一樹。優馬はそんな彼に宣告した。

「俺の勝ちだな。今の手を抜いた一撃をかわせないようでは、この勝負は決まったようなものだ」

 さらに優馬は無慈悲とも取れることを言い放った。

「相手の望みをホイホイとかなえるだけの奴がそいつの心を射止められるものか。あのお嬢さんのことは、諦めるんだな」

 今の言葉や手加減されているという事実は、一樹を激昂させるのに十分であった。

「言いたいことばっか言って・・・・」

 屈辱に震える一樹の心がガイアースにも伝わり、力となっていく。

「僕をなめないでください!」

 再び突撃するガイアース。パワーがあがった今なら、アースフィールドを突き破れると思った。

 しかし、この陣は予想以上に強固であった。アースフィールドの中に入ったガイアースは、足場を揺らされてしまったために体がふらついてしまい、そこへ土の一撃を受けてしまったので、またもや陣の外へ跳ね除けられてしまった。

「ま、まだだ!まだ僕は!」

 一樹はめげなかったが、いろいろな角度からガイアースにアースフィールドの突破を試みさせた結果、身構えていても、また最初の一撃をかわすことができても、立て続けに次の攻撃が襲い掛かり、ガイアースはユニアースに近づくことさえできなかった。

 そして、四度目の突入も、地を舐める結果となった。

「うっ・・・・、くっ」

 それでもガイアースは立ち上がった。往生際が悪いとか何とか言われようが、一樹はここで引くつもりはなかった。手抜きでここまでやられては、ナギの前で格好がつかない。なんとか、せめて一矢でも報いなければ。

 だが、アースフィールドは強大であった。前後左右入り込む隙がなく、まさしく鉄壁の陣であった。

「だけど、一つだけ空いているところがある・・・・」

 ガイアースは、上空に向かって跳び上がった。

「真上からなら、地面での攻撃は届かないはず!」

 一樹の読みどおり、陣の上にいるガイアースに攻撃はしてこない。落下するガイアース
は、ユニアースに地砕爆慎拳の狙いを定めた。

 しかし、優馬は動じなかった。

「この俺が唯一の手薄な場所をがら空きのままにしておくと思ったか?生憎だが、ちゃんと備えはしてあるんでね」

 ユニアースは膝を屈ませ、力を足へと溜める。

「ギャロップキック!」

 必殺技を繰り出そうとするガイアースに、カウンターで上段回し蹴りを決めるユニアース。かえって必殺技を喰らってしまったガイアースは、その場に倒れ込んでしまった。