Re: 新世界への神話 ( No.43 )
日時: 2010/02/11 19:49
名前: RIDE

更新します。


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「今度は僕たちの番です!」

 ムーブランの剣が炎に包まれる。

「炎龍斬り!」

 その剣を、コーロボンブ目掛けて大きく振り下ろす。しかし、塁にはムーブランの必殺技はお見通しであった。

 コーロボンブは電気を拳に帯電させ、その手でムーブランの剣を白刃取りしてそのまま押し返した。

「くっ、それなら!」

 再び炎龍斬りを放つムーブラン。今度は剣にのせた炎を、炎龍を模した大きな炎弾に変えて飛ばす。しかしこれも、コーロボンブの電気の溜まった手によってはじかれてしまう。

「な・・・・」
「いくらやっても効かねえよ」

 愕然とする佳幸に対し、余裕を見せる塁。

「炎龍斬りは五年前によく見ていたからな。分析できねぇわけじゃねえ」

 相手はともに八闘士。お互いのことは熟知している。それは当然、相手の精霊の必殺技に
関してもだ。

「けど、打つ手のねえおまえと違って、俺にはサンダーボルトナックルがある。おまえの知らない必殺技が」

 そんな自分に対して、決め手のなくなった佳幸は戦意を喪失するかと思われたが、彼の目からはなおもかわらず強い意思がこめられていた。

「そうか。やっぱり徹底的にやらなきゃいけねえみたいだな」

 コーロボンブ拳を構えて、戦闘態勢を取る。

「おまえの負けだということをしっかりと教えてやるから、覚悟しろ!」

 再び殴りかかるコーロボンブ。そのパンチを、ムーブランは剣の刀身で受け、そのまま払い除ける。

「僕は負けない!」

 通用しないとわかりきってはいるが、それでも炎龍斬りを放つムーブラン。コーロボンブは今までと同じように電力を用いて防御した後、ムーブランの無防備な脇腹へと手を伸ばした。

「スパーキングブリッツ!」

 その手から電撃が放たれ、ムーブランを襲った。

 この必殺技はムーブランの炎龍斬りと同様に、五年前から使用している。そのためこれも正面から放てばムーブランはかわしてしまうが、必殺技を放った直後にできる隙を利用すれば、防御されることも回避されることもない。

「これでわかったろ。おまえの負けが」

 だが、佳幸からは諦めるような姿勢はまったく感じられない。微かに苛立ちをこめながら塁は問いた。

「何でだ。何で戦いを止めない」

 すると佳幸は皮肉っぽく言った。

「勝てない戦いじゃないですから」

 そしてムーブランは炎龍斬りで攻撃する。まるでバカの一つ覚えのような行動に、塁は呆れてしまう。

「おまえが見たその勝機は幻だ。目を覚まさせてやる」

 コーロボンブはまたそれを受け止め、懐にスパーキングブリッツを放った。

 しばらくそれが繰り返されていた。その中で、自分のリングに異変が起き始めていること
に塁は気付かずにいた。

 一方、何度も必殺技を破られているムーブランと佳幸は、誰もが降伏すべきと思う状況の中、いまだに攻撃を続けている。

 またムーブランは炎龍斬りを繰り出す。いい加減うんざりしてきた塁は、これで終わらせようと思った。

 コーロボンブが炎龍斬りを防ぎ、ムーブランにとどめとなるスパーキングブリッツを浴びせようとしたその時だった。

 ひび割れのような乾いた音が塁の耳に響いた。左腕から聞こえたその音に、もしやと思い塁は自分のリングを見る。

「これは・・・・!」

 塁のライガリングには、無数のヒビが入っていた。知らぬ間にリングが傷ついていたことに、塁は驚愕する。

「おまえ、これを狙って・・・・!」

 まさかと思い、塁は佳幸の方を見やる。

 佳幸はまた、不敵に笑った。