Re: 新世界への神話 ( No.40 ) |
- 日時: 2010/01/27 21:23
- 名前: RIDE
- 更新します。
2 第二試合も終わり、本来ならそのまま第三試合へと進むところだが、自動的にEとインプットされた十六人目の使者が来ていないため、ナギたち主催者側は協議を交わし、その審判を下した。
[第三試合の使者が未到着のため、本来ならばその使者の不戦敗になるところですが、今しばらく待ち、第四試合を繰り上げて行います]
アナウンスを聞いて、第四試合で戦う佳幸と塁は苦笑しあった。
「やっぱり来ないようですね」 「ま、それはそれで安心するけどな。アイツまでこんなことにつき合わされなくてよ」
他の八闘士たちも同様の表情をしていた。そして第三試合で戦うはずだったヒムロは安心していた。
「助かったよ。もうしばらく戦いの雰囲気を肌で感じてないと、勝てそうにないからね。対戦相手に感謝しなきゃ」 「なら悪いな。あんたの希望にお応えできなくて」
そう言って、佳幸や達郎と同年代の少年が精霊を従えて現れた。
「氷狩(ひかり)!」
塁たちはその姿に驚く。彼こそは氷のグルスイーグの使者であり、八闘士の最後の一人である桐生氷狩であった。
「久しぶり、みんな」 「氷狩、あれほどダンマリを決め込んでいたのに、今になってどうして?」
達郎の質問に、氷狩は落ち着いた態度で答えた。
「おまえたちが何を思って戦うのか、それが知りたくなってな」 「ふん。遅れてきたくせにクールぶるんじゃないわよ」
性格的なところで、花南は氷狩が気に入らなかった。その氷狩は彼女を一目見てから、トーナメント表に視線を移した。花南は第八試合に組み込まれており、対戦相手は達郎であった。
「おまえこそ、達郎に遅れをとることはないよな?」 「心配いらないわよ。私がやられるわけがないから」 「そんな余裕でいられるのも今のうちだぞタカビー女。打ち負かしてやるんだからな」
花南と達郎は火花を散らし合う。醜いように見えるが、自分の知っているままの二人に、氷狩は安心して戦いの場へと歩いていった。
「桂さん、よく見ておくんですね」
そんな彼の姿を目で追っていたヒナギクに、伝助が囁きかけた。
「あなたの戦いもそれなりに良いものでした。しかし、まだ使者としては未熟な部分があり ます」
エイジと同じようなことを言われたヒナギクは、こみあがってくる不愉快な気分を再び押 さえ込む。
「氷狩君の戦いを見れば、氷の精霊の使者がどうあるべきか、大体わかるでしょう」 「氷の精霊の使者の、あるべき姿・・・・」
なんとなく興味を引いたヒナギクは、この戦いをよく見ることにした。
[第三試合の使者がただいま到着しましたので、試合内容を予定通り行います]
氷狩と対峙するヒムロ。彼の精霊は、ブライアルである。
「戦いに遅れてきた臆病者、と観客は思っているに違いないけど、僕の目にはそう見えないね」
背景に花びらを散らせながら、ヒムロはバラの花を取り出して、香りを嗅ぐ仕草をしてみせる。
「お手柔らかに、お願いするよ」
その背景の花吹雪はもちろん、ヒムロの主であるタイガの演出である。今タイガは手を休めているため、花びらは散っていない。
「タイガ坊ちゃん、花」 「あ、ごめんヒムロ」
注意されたタイガは再びわっせわっせと花を撒き散らし始めた。主が執事の世話をするその光景は、なんだかシュールなように感じられるが、そんなことに無関心の氷狩はヒムロに質問してみた。
「ひとつ聞きたい。あんたは何のために戦うんだ?その目的を聞きたい」
ヒムロはバラの花をかざすなど、気取った構えを取りながら答えた。
「僕は金が好きなんだ。この戦いで優勝すれば、大金を貰う約束を三千院家のお嬢様と約束したんだ」 「俗なことだな」 「黄金の勾玉やリングなんて僕には関係ない。金さえ手に入ればそれでいいのさ」
それ以上、氷狩が聞きたいことはなかった。
「そういう目的で戦うのなら、俺はあんたを倒さなくちゃな」 「僕は純粋だから、はっきりと言おう」
ヒムロの目の色が真剣なものへと変わる。
「悪いけど、勝たせてもらうよ」
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