Re: 新世界への神話 ( No.38 ) |
- 日時: 2010/01/19 21:35
- 名前: RIDE
- 今回の話は
こんな展開でいいのかと不安ですが それでも更新します。
4 今度はウェンドランが攻勢に出た。タイガネルを殴打するその力は、エイジの思いを受けて通常よりも強くなっていた。
一方、タイガネルはウェンドランのラッシュをガードしていた。それしか行動がとれないように見えるが、虎鉄は何かを伺っているような目をしている。攻撃を続けさせながら、エイジは警戒しはじめていた。
「今だ!」
どんな連携攻撃でも、一発一発に必ず間隔が空く。虎鉄はわざとラッシュをとらせて、そのタイミングを測っていたのだ。
隙を突いてウェンドランの両腕を払い除け、牽制の一撃を与える。一瞬攻撃を止めたウェンドランに、間髪入れずに必殺技を放った。
「スチールファング!」
両の拳でウェンドランを挟み撃ちにする。強烈な一撃にウェンドランは膝をついてしまった。
「終わりだな」
虎鉄は勝ち誇った笑みを浮かべた。
「この勝利を、我が愛する綾崎に捧げよう!」 「ちょ、何言ってるんですか!」
十万人の前でとんでもないことを言われたハヤテは動揺してしまう。
「ふっ、照れるなよ」
虎鉄はハヤテに構わず語りだした。
「鉄道オタクというだけで女どもが寄り付かないこの俺に、咲き誇るように舞い降りたのが綾崎だった。アイツは俺の心を癒してくれた。俺はアイツを愛している。だから同姓婚の認められている国で結婚を・・・・」
そこまで虎鉄が言いかけたとき、突然エイジが笑い出した。
「何がおかしい」
虎鉄は不満そうにエイジを睨む。
「おかしいさ。あんたは自分の愛を真っ直ぐに貫くようなことを言っているけど、その思いは女から、報われないっていう事実から逃げるために自分自身を納得させるもんだ。真摯なもんじゃない」
エイジは毅然として虎鉄を見据えた。
「そんな逃げるような、まやかしの愛しか抱けない奴に、俺は負けない!」
エイジの意気を受けて、ウェンドランが立ち上がった。
「まやかしだと・・・・」
虎鉄はエイジの言葉に腹を立て、ワナワナと震えだす。
「許さん!」
タイガネルが攻撃を仕掛けてくる。ウェンドランはそれをかわしながら距離をとっていた。近づかなければ、あの必殺技は出せないからだ。
「離れていればスチールファングは来ないと思っているな?甘いぞ!」
タイガネルはスチールファングを放つ。すると、タイガネルの腕から衝撃波が発生し、ウェンドランを挟み込もうとする。
ウェンドランはこれを回避するが、タイガネルは再びスチールファングの構えを取る。一見すると、タイガネルが有利のように思えた。
だがここまでの流れは全て、エイジが思い描いたとおりであった。タイガネルがスチールファングを放とうとしているのを見て、エイジは笑みを浮かべた。
「ここだ!」
スチールファングが離れた相手にも有効だということは予想できた。それでもあえて距離をとったのは、相手の鋼鉄の牙、すなわちタイガネルの両腕を砕くためである。
「シールドブーメラン!」
ウェンドランは背負っている盾を取り出し、タイガネルに向けて投げつけた。
衝撃波を起こす前に、タイガネルの腕はウェンドランの盾を挟み込んでしまう。さらにその盾の縁から隠し爪が出現し、タイガネルの両腕をがっちりと捕らえた。
両腕を開放することができないタイガネルに対して、ウェンドランは右手に矢を、左手に銃を持つ。
「ミーティアロー!」
まず右手の矢を投げつけ、タイガネルの左腕をつぶす。
「ファイブラスター!」
続いて左腕の銃から炎の弾丸を撃ち出す。これによってタイガネルの鋼鉄の牙は完全に砕かれ、相手の腕を固定していた盾はウェンドランのもとへ戻ってきた。
「し、信じられん・・・・こんな・・・・信じられん!」
虎鉄は、自分が追い込まれている状況が何かの間違いではないかと疑いたくなる。ここでも彼は目の前の事実を受け止められずにいた。
「言ったろ、逃げるような奴には負けないって」
ウェンドランは剣を構え、タイガネルに向かって駆け出していく。
「ブレードスラッシュ!」
両腕が使えないタイガネルは無防備で切り裂かれ、通常形態へと戻ってしまった。
[タイガネル戦闘不能、ウェンドランの勝利!二回戦進出決定!]
途端に歓声が湧き上がる。一般人には通常形態、解放形態の精霊は見えないのだが、バーチャルゲームショウだと思い込んでいるので、負ければ消えるものだと解釈しているのだ。
そんな歓声を浴びるエイジは、ゆっくりと虎鉄のほうへ歩み寄ろうとするが、先に虎鉄が足を踏み出していた。
「岩本エイジ、と言ったな」
険しい顔を向ける虎鉄。ケンカでもする気なのかと観客たちは不安にざわめき出すが。
「礼を言うぞ」
突然、エイジに感謝を述べる。
「確かにおまえの言うとおり、俺は綾崎にしつこく付きまとっておいて、実のところアイツから逃げていた。女から目をそむけて、アイツにアタックしていればいずれはと信じていたが、それは相手のことを考えずに突っ走る、ただのワガママに過ぎなかったんだ」
堅気である虎鉄は、それまで恋愛には縁がなかった。だから周りが見えずに一直線だったのだろう。
「ありがとう、岩本エイジ」
虎鉄は、これを機にストーカーから足を洗った。
エイジは照れくさそうな表情で虎鉄に言った。
「あんたのいいところはその真っ直ぐさなんだ。その真剣さを理解できる女を、あんたなら出会えるさ」
虎鉄は、強く頷いた。
「いいぞー!エイジーッ!」 「虎鉄くーん!あなたもよく見ると格好いいわー!」 「私、ファンになるわー!」
丸く収まった事態に、観客たちは二人に歓声を送るのであった。
「やるな、あいつ」
ダイ、翼、大地、シュウの四人はナギやマリアと同じ位置から戦いを眺めていた。
「けどチビ女よ、岩本の弟にこのまま勝ち続けられたら腹の虫が収まらないんじゃねえのか?」
何かと気の食わないエイジの勝利に、ナギは機嫌を損ねているかと思ったら、実際はそうでもなかった。
「それよりも、まだ来ていない八闘士の最後の一人を大至急呼ばなければならん。急げ!」
一方、ハヤテやヒナギクはエイジの戦いに魅せられていた。
「すごい・・・・」
対して、佳幸たち八闘士は落ち着いていた。
「それほど不思議でもないさ。あの虎鉄とかいう人はエイジの言うとおり自分をごまかすような思いを持っていた。けれどそれは、エイジの思いに比べたら弱かっただけさ」
前に突き進もうとするエイジの思いの大きさを、彼らはよく知っていた。
そして佳幸はエイジの成長をしみじみと感じていた。戦いを見てではない。その後の、虎鉄の心を解きほぐしたことを見てそう思ったのだ。
エイジは、精霊の使者として成長している、と。
「このままいくとエイジが優勝するかもしれないな」 「悪いけど、そうはさせないよ」
ヒムロはバラを取り出し、不敵に笑った。
「優勝を手にするのは、この僕なのだから」
ソニア、ギルバート、一樹も同じ狙いだと言わんばかりの表情をしていた。
そして、ハヤテやヒナギク、八闘士たちもエイジの戦いに闘志を燃やしている。
黄金のリングと勾玉をかけたスピリアルウォーズは、ヒートアップしていた。
|
|