Re: 新世界への神話 ( No.33 ) |
- 日時: 2009/12/30 22:57
- 名前: RIDE
- 更新します。
第13話 黄金の勾玉と矢
1 ゴールデンウィークが過ぎ、若葉が息吹く季節となった。
「二度目とはいえ、呆然とせずにはいられないな」 「ああ」
佳幸とエイジは三千院家の屋敷の門の前でぼんやりと見上げていた。
「二人とも、早く行こうぜ」
達郎は遠慮無しに門の中へと入っていた。
「・・・・達兄はすぐ順応するなあ」 「ありのままを受け止める性格だからね」
そう言いながら二人も後に続いた。途中SPに行く手を阻まれるが、ナギから送りつけられた手紙を見せると、すんなりと道を空けてくれた。
「こんな手紙を送りつけて、あのお嬢さんは何を考えてんだ?」
手紙を見ながらエイジはつぶやく。内容は、ただ屋敷に来いと書かれているだけであった。
「じきにわかるさ」
三人は屋敷の前まで歩き、そのまま中へと入っていった。マリアが一礼して彼らを出迎えた。
「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」
エイジはまず、マリアに質問してみた。
「メイドさん、お嬢さんは何の用で俺たちを呼んだんだ?」 「さぁ・・・・。このところ、誰にも内緒で何かしているみたいなんですが・・・・」
悩ましげに首を傾げるマリア。表情からは主に対する不安と心配が見て取れる。
「とにかくお部屋に案内いたします。他の方たちもお待ちなられておられますよ」
他の方たちと聞いて、三人は顔を見合わせた。まさかという思いがよぎる。
「こちらです」
マリアの後に続いた三人は、しばらくしてある部屋の前まで着いた。ドアを開けたマリアに促され、中へと入っていく。
「やあ、三人とも」 「遅いじゃない、何やってたのよ」
伝助と花南が挨拶してきた。二人の近くではヒナギクが優雅に紅茶を飲み、ハヤテがそのカップに淹れたての紅茶を注いでいた。
しかし部屋の中にいるのは四人だけではなかった。荒っぽい風貌と真面目そうな印象をもつ二十歳頃の若者二人と、伝助と同年代の、色男と呼ばれてもおかしくない者が仏頂面で用意された椅子に腰掛けていた。
「塁さん、拓実さん、優馬さん」
佳幸が呼びかけると、三人は表情を和らげた。
「よぉ、やっときたか」
荒っぽい男、稲村塁は親しそうに手を上げた。
「やっぱりおまえらのところにも手紙がきたか」
土井優馬は色男っぽい外見同様、手紙を示す動作もキザッぽかった。
「しかし、顔知らずの俺たちのところにまでよく送れたもんだ」 「三千院家の力なら、簡単のことでしょうけどね」
金田拓実は冷静な様子で頷いていた。
「この調子だと、彼のところにも届いてそうだけど・・・・」
彼というのが、八闘士の最後の一人だというのは簡単に推測できた。
「それでも来ない。相変わらずというか、たいした奴というか」 「ま、気まぐれな性格じゃないから何か事情があるんだろうけどな」
などと喋っていると、彼らをここに招き寄せた少女が部屋に入ってきた。ナギは部屋に設置された簡易のお立ち台に登って、集まった十人を見下ろす。
「若干人数が揃っていないようだが、まあいいだろう」
ナギは尊大に見せるよう小さな身体で胸を張り、大きく息を吸う。
「私は疑問に思っていたのだ。八闘士と呼ばれる者たちはどれほどの強さなのかと。そして、それを知るための手段として私は面白いことを考えついた」
もったいぶらせながらも、ナギは重々しく告げた。
「精霊と精霊同士の闘いを、ショーとして行う!」
それを聞いた一同の反応は緩慢なものであった。ただ一人、優馬は鋭い視線をナギにぶつけてきた。
「つまり、あんたたちは俺たちを戦わせて、それを見世物にするわけだな」 「そうだ。おまえたちはハヤテやヒナギク、それに私が選んだ五人の使者と共に強さを競い合ってもらう」
頷くナギに、訝しげに塁と拓実は口を開く。
「精霊は人には見えねぇ非科学的なもんだ。一般の人たちには馴染めねぇと思うけど?」 「第一、僕たちがあなたの言うとおり素直に戦うと思いますか?」
だがナギは自身満々に答えた。
「人型になれば見えることができるのだろう。バーチャルなゲームとでも言えば納得してもらえるさ。それに、おまえたちが戦わなければならないほどの物がこちらにはあるのだ」
ナギの後ろで閉ざされていたカーテンが開き、その向こうに五つの青銅の勾玉とリングが置かれていた。ナギが選んだという使者のもであろう。しかし何より佳幸たちの目を引いたのは、それらよりも高い位置にある、眩しい光を放っているものであった。
「黄金リングに翼闘士の勾玉!?」
十二体しか存在しないはずの黄金精霊がこの場にいることにほとんどの者が驚きの声を上げる中、伝助はナギに抗議しようとした。
「三千院さん、あなたこの前手に入れたこれを景品にするつもりなんですか?」 「伝さん、ここにこんなものがあるって知ってたんすか?」
事情を知らないものたちに伝助は高尾山での出来事を話した。
「フン、飽き飽きしてきたぜ」
不機嫌を露わにしてエイジは立ち上がった。
「そんな戦い、俺はごめんだ。あんたのようなワガママなお嬢様の気まぐれに付き合うつもりはねぇよ」 「なんだって?」
侮蔑された言葉にナギが眦を上げた時だった。
「待て!」
突如、部屋の隅からエイジと同じ年頃と思われる、眼鏡をかけた少年が姿を現した。
「何だ、おまえは?」 「僕は西沢一樹。ナギさんに選ばれた使者だ。そこの君、なんてことを言うんだ!」
一樹は、怒りのままにエイジに突っかかってくる。
「一樹とかいったな。でしゃばりだぜおまえ、あんな女に選ばれたからって」 「あんな女って言うことはないだろ!」
ちらりと一樹の表情を見るエイジ。その真剣さが、彼に納得をもたらした。
「なるほどな。おまえがマジに怒る理由はわかった。けど、端から見りゃあの女に媚びてシッポ振っているようにしか見えないぜ」
エイジはさらに挑発的な言葉を並べて、一樹の憤りを煽っていく。
「あの女の奴隷になっているようじゃ、おまえの思いは報われることはねえな」 「うるさい!黙って聞いていればいい気になって!今すぐ叩きなおす!」
一樹とエイジは互いに身構えた。
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