Re: 新世界への神話 ( No.32 ) |
- 日時: 2009/12/29 23:39
- 名前: RIDE
- 更新します。
今回は補足的なストーリーとなります。
三千院ナギの計画
「う〜ん・・・・」
夜、ベッドの中で黄金の勾玉とリング、水晶の勾玉を見ているナギは思案顔でいた。
「どうしたのですか?」
隣で寝ているマリアは気になって訊ねてきたが、ナギは素っ気なく返した。
「私は今考え事をしているんだ。話し掛けないでくれ」 「わかりました。でも、早く寝てくださいね」
マリアは特別相手にせず、そのまま眠りについていった。
「どうするか・・・・」
これから何をすればいいのか、目的と結びつける行動を思い浮かべるナギ。
「・・・・これだ!」
閃いたナギは、それを実行に移せるように頭の中でいろいろと計画を練る。十分に組みあがると、その時を待ち遠しく思いながら眠っていった。
遠足の安息日を経た今日。
ナギが白皇の敷地内にある林を歩いていると、どこからかバラの花びらが空中で舞っていた。
「僕に用があるって聞いてのだけど?」
いつの間にか、ナギの背後には冴木氷室が立っていた。その後ろでは、彼の主である大河内大河が花を散らせている。
「そうだ」 「いつもの執事君はどうしたんだい?」 「ハヤテにはまだ知られたくない。それよりも、頼みがある。もちろん何も用意していないわけではないぞ」
どこからかナギはアタッシュケースを取り出し、中を見せる。札束が隙間無く埋まっていた。
「・・・・話を聞こうか」
執事だというのに、金が好きという俗な考えをもつヒムロにとってそれで十分であった。
まずは一人目の人材を確保したナギであった。
続いてナギが訪れたのは、動画研究部の仮部室であるプレハブであった。
「あ、ナギちゃん。どうしたの?」
扉を開けて中に入ってきたナギを泉がいつもの笑顔で迎えた。
「おまえのとこの変態な執事はいないか?」 「虎鉄君?待ってて、すぐ呼ぶから」
泉は携帯電話を取り出して虎鉄を呼び出した。それから数秒で来るところは、執事の務めということだろう。
「何か用ですか?お嬢」 「用があるのはナギちゃんだよ」
それを聞いた虎鉄は怪訝そうにナギを見下ろした。
「そんな顔をするな。ハヤテに関するアイテムが手に入るのかもしれないのだぞ」
途端に虎鉄の目の色が変わった。
二人目も難なく手中に入れることができたのだった。
学校から帰ってきたナギは、バイト先へと向かった。
バイト先の喫茶店どんぐりでは、既に歩が働いていた。
「早いな、ハムスター」 「ナギちゃんが遅いんじゃないかな。って、ハヤテ君は?」 「疲れているみたいなので、今日は休ませた」
疾風が来ないと知って、歩は少し落胆した。
ナギは支度をし、歩とともに仕事に取り掛かった。少ないとはいえ客は来るのだ。まじめ にやらなくてはいけない。
しかし、真っ先にやってきたのは、この男であった。
「イエー!見つけましたよ、綾崎ハヤテ!・・・・ってイマセーン!?」
ハイテンションで外国人っぽいなまりの日本語とともに店に入ってきたのは、白いスーツを着たパンチパーマの男だ。彼の姿を見てナギと歩は白けてしまう。
「誰あの人?」
歩はひそひそとナギに聞いてみた。
「・・・・誰だっけ?」
ふざけているのか、本当に忘れているのか、関わりたくないのか。どれかはわからないが、ナギはそんな返事をしたのだ。
「ノォ――!この私を忘れたというのデスカ!?」
男の方もわざとだと思わせるような大胆な嘆きぶりである。
「我こそは三千院家の遺産を狙うギルバート!つまりあなた方のライバルなので?ス!」 「はぁ・・・・」
ギルバートの個性の強さに、歩までもがうんざりした顔になる。
「しかし、ここに綾崎ハヤテがいないとは・・・・。こうなったら、このチビを脅して・・・・」 「待て」
ナギがギルバートの方へと歩み寄る。何かあるのかと余裕ある笑みを浮かべるナギに警戒したギルバートは、思いがけない言葉をかけられることになる。
「今すぐというわけではないが、ハヤテを倒すチャンスをくれてやろう」 「ホワット!?」
信じられないという目でナギを見るギルバートは震えだした。敵の方からこんなチャンスをくれてもらったことに、屈辱を感じているのかと思いきや。
「ありがとうございマース!!」
土下座でもしかねない勢いで感謝の意を表すギルバート。プライドのない奴である。
「ちょっとナギちゃん、大丈夫なの?」
要領を得ない歩であったが、なにかハヤテたちに不利な展開になりそうなので、不安そうに訊ねてみた。
「大丈夫だ。数が欲しかったところだしな」 「ほえ?」
もう訳がわからない歩。ナギはそんな彼女を放っておいた。
これで三人が引き込んだことになる。
どんぐりのマスターの事情のため、バイトは早く切りあがった。
ナギはSPが運転する車に乗っていた。行く先は、レンタルショップタチバナ。
車が店の前で止まると、ナギは降りて店の中へと入っていった。
「あらナギお嬢様。いらっしゃいませ」 「何しに来たんだ」
メイドの貴嶋サキはにこやかに挨拶し、逆にワタルは仏頂面で出迎えた。
「おまえたちに用があるわけではない。ただ人を待っているだけだ」 「はぁ?」
訳がわからないワタル。そんな中、自動ドアが開き一人の客が入る。
「こんにちは、ワタル君」 「あ、シスター。いらっしゃい」
眼鏡をかけた修道女、ソニア・シャフルナーズがカウンターに借りていたDVDを返却する。
「面白かったですよ、これ」
そのままワタルと談笑しようとしたソニアに、ナギが話し掛けてきた。
「シスター、ちょっといいか?」 「なんですか、三千院さん?」 「大金を手に入れたくないか?」
ワタルとサキには見えなかったが、金が大好きな聖職者の目の色が変わった。
「もちろんですとも」 「決まりだな。シスターには後で別にワタルの動画をやろう。動画研究部が撮影したレアなものだ」 「おい!なんだよそれは!」
ワタルは怒鳴った。何も言わなかったが、サキも不機嫌な表情である。
ともかくこれで四人目が揃った。しかしここでナギは困り顔となった。実は必要な人数は 五人なのだが、最後のあと一人が決まりかねない。
どうしたらいいのかと悩んでいたら、またもや来客が。
「ワタル君、遊びにきたよ。って・・・・」
眼鏡をかけた少年は、ナギを見て顔を紅くした。
「ナ、ナギさん・・・・」 「む、おまえは確か、一樹といったな・・・・」
ナギはすぐにいつもの仏頂面に戻ったが、西沢一樹はナギが思案顔だったのを見逃さなか った。彼はナギの前までずいっと詰め寄った。
「何か悩み事でもあるの?」 「い、いや。おまえには関係な・・・・」 「僕でよければ力になるよ!」
強引だが、真剣な一樹の表情を見て、やってくれるかもとナギは思った。
「で、では頼みがあるのだが・・・・」
こうして、五人目が決定した。
「ふむふむ、そうか。ではよろしく」
携帯電話の通話を切るナギ。
彼女はある建設事業に依頼をしていた。ある建物を設立して欲しいからである。
金持ちが持ちかけてきた仕事であるため、事業者は首を横には振らなかった。
「どんなに急ピッチでも、完成はゴールデンウィーク明けか・・・・」
しかし、そんなに遅くはないとナギは思った。
「さて、あとは企画内容だな」
ナギは紙とペンを取り出して何かを書き始めた。
ゴールデンウィーク明け、彼女の計画が実行される。
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