Re: 新世界への神話 ( No.21 )
日時: 2009/10/27 21:25
名前: RIDE

更新します。
今回から第9話です。


  第9話 兄弟の再会

 1
「では、桂さんが新たに精霊の使者となったわけですね」
「ああ」

 ダイと翼は帰宅後、大地とシュウに公園での戦いのことを話していた。翼の怪我はこの世
界にはない治療技術によって、驚くべきスピードで回復していた。

「てことは、戦力が増えたってことだな。良かったぜ、楽ができて」
「良かあねぇ」

 ダイはヒナギクが使者になったことに不機嫌であった。

「あいつはなまじ武道に長けているから、無茶とも取れる行動が多い。冷や冷やものだぜ」
「確かに。余裕のないときはそうなるかもしれん」

 三人は頷くが、同時にこうも思っていた。

「しかし、何をするかわからないおまえが言っても説得力はないぞ」
「そうですよ。桂さんはまだ、冷静に判断できますし」
「おまえら・・・・!」

 それらを口にした翼やシュウに対して、ダイはムキになった。

「俺のことはどうでもいいだろ!それより艶麗のことだろ!」
「そうだな」

 再び気を引き締める一同。

「戦いはこれからなんだ。警戒しろよ」



 翌日

「だからってこれは露骨すぎだろ・・・・」

 翼、大地、シュウの三人は周囲を睨みながら、ダイの横に並んで登校してきた。端から見れば不審者そのもので、ダイは呆れるしかなかった。

 この昼休みも、全方位に注意が行くように三人は背中合わせで昼食を摂っていた。その様子を、ため息をつきながら見ているダイ。

「甘いですよ、ダイ様」

 人差し指を突き立てて豪語するシュウ。

「相手はところかまわず出現する、神出鬼没の使者なんですよ。この昼食時を狙って攻めて来るかもしれません」

 だからと言ってこれはオーバーだと思うダイ。そんな彼の気持ちに気付かずシュウは続ける。

「そうなって慌てたら遅いんですよ。敵は見逃してくれません。ああいうふうにはなりたくないでしょう?」

 シュウが指した方向。そこにはハヤテともう一人。

「待て!綾崎!」

 虎鉄が叫びながらハヤテを追いかけている。

「いい加減にしてください!しつこいですよ!」

 ハヤテが困った顔で止めるように頼んでも、虎鉄は聞き入れない。

「そんなこと言わないでくれ!せっかくおまえのための弁当まで用意したんだぞ!」

 ストーカーの物言いで、虎鉄は迫っていた。

「よくもまぁ、あそこまで熱心なことだ」
「ああいうオタクや変態は結構めげないからな」

 翼と大地が嫌味っぽく笑う中、ダイが立ち上がった。

「どうした?」
「黙らせてくる」

 つまるところ、たまったストレスを発散させる為の八つ当たりだろう。翼はやれやれと肩をすくめた。

 ダイがスタスタと虎鉄に歩み寄り、拳を振ろうとしたその時だった。

 突然、雷が虎鉄に落ちてきた。

「―――――!?」

 虎鉄は声にならない叫び声をあげ、黒焦げになって倒れた。

 天気は雲ひとつない晴天である。落雷なんて起こるはずがない。

「ダイ?」

 訝るように声を掛けた翼に対し、ダイは首を横に振って否定する。

 とりあえず虎鉄の近くまで集まるダイたち。ハヤテと、追いかけっこを笑顔で眺めていた泉も駆け寄る。

「虎鉄君、大丈夫かなぁ・・・・」

 泉が心配そうに覗き込んだ。

「死んではないと思いますよ」
「う・・・・うぅ・・・・」

 ゾンビのように這い上がる虎鉄。

「あ、綾崎ィ・・・・ゴフッ!」

 ハヤテは足で虎鉄の頭を思い切り踏みつける。

「しばらく黙っといて下さい」

 悪意とも取れる満面の笑みを見せるハヤテであった。

「おい、あれ!」

 大地が指した方向に全員目を向ける。

 ここから結構離れていると思われるところに、鳳と巨人の影がそびえ立っていた。

「一体なんだろ?」

 すぐに消えたその影に泉は首を傾げるが、他の者たちは全員気付いていた。

 あれは、精霊であると。