Re: 新世界への神話 ( No.2 ) |
- 日時: 2009/08/12 20:44
- 名前: RIDE
- 更新します。
プロローグは前回で終わり、今回から物語が始まります。 長くなると思いますが、ですが、長い目で見てください。
第1話 転校生現る
4月8日、新学期の日。
高校2年生となったハヤテとナギは、白皇学院で自分たちの教室を目指していた。
「クラス分けってどうなってるんでしょうか?お嬢様と違うクラスになってるなんてこと・・・・」 「無いんじゃね?いろんなイミで」
思わずそのいろんなイミとやらを考えてしまうハヤテであった。
「しかし、他にはどんな奴と一緒なのかな」 「そうですね」
などと言っている間に教室の前までついた二人。ハヤテは躊躇することなく扉を開けた。
「あら。ナギにハヤテ君、おはよう」
まず、二人に挨拶したのは、才色兼備の生徒会長、桂ヒナギクである。
「あ、ヒナギクさんも同じクラスなんですね。これから1年間よろしくお願いします」 「もう、大げさよ。そんなにかしこまらなくても」
いつもヒナギクには迷惑をかけていると思っているため、当人にそう思われる程礼儀正しく挨拶するハヤテ。一方のヒナギクは、表面上は普通を装っているが、内心は意中の男の子と同じクラスになったことに動揺しており、周囲の男子生徒から自分たちに対しての羨望や嫉妬の視線に気づいていなかった。
「まあ、よろしくしてやらんでもないがな。ところでヒナギク、私たちの席はどこだ?」 「あ、ナギは私の隣。ハヤテ君は私の後ろの席」
言われた通りに席に着く二人。ところが、なぜかハヤテの隣の席だけが空いていた。クラスの生徒たちはほぼ全員揃っている。
「これは、一体・・・・?」 「まったく。空けとくのなら私がそこに座らせてもらうぞ」 「ダメよナギ。ちゃんと決められた席につきなさい」
まじめな性格のため、勝手に席を移動しようとするナギを注意するヒナギク。もっとも、好きな男の子と一緒にはさせたくないという恋心も若干含まれているみたいだが。
「しかし、この席は一体何なのだ?」 「そこはだな」
突然現れたのは、生徒会役員でもある瀬川泉、花菱美希、朝風理沙の3人であった。
「うわっ!どこからでたのだ?」 「出たって失礼だな。人を神出鬼没みたいに言うな」 「それよりも、そこの席についてだが」
情報収集が得意な美希は、小さなノートを取り出して話し始める。
「今日、この学校に4人の男子生徒が転校してくるの。で、そのうちの一人がこのクラスに入ることなったの」 「その転校生が座る席がここなんだよ」
だから空いているのかとハヤテは納得した。どんな人が来るのだろうか。
「話によると美形なんだって。楽しみだな〜」 「ほほう、泉は面食いなんだな」 「そ、そういうわけじゃないよ〜」
などとじゃれていると、教室の扉が開いた。ハヤテたちは急いで席に着く。
「みんな、おっはよー!」
ヒナギクの姉、雪路とまったく知らない男の二人が入ってきた。
「このクラスの担任の美しき世界史教師、桂雪路よ!で、隣にいるのは副任の風間先生よ」
雪路は、隣にいる男に前に出るように促す。眼鏡をかけ、いかにも知的な感じのする男は、緊張の様子も見せずに挨拶する。
「この度白皇学院に赴任することになりました、風間伝助と申します。担当教科は古典です。よろしくお願いします」
伝助は頭を下げると、一歩下がった。
「続いて、このクラスに転校生が入ります!」 「先生、その転校生は美形なんですか?」 「ええ、美形よ!ちょー美形!さぁ入って!」
生徒の質問に大げさに答えた雪路は、教室の外にいる男子生徒に中に入るように促した。
転校生は、確かに美形だった。男前というような雰囲気だった。
男子生徒は、面倒くさそうに自己紹介を始める。
「今日からこの学校の生徒になります、高杉ダイです。皆さんよろしくお願いします」 「はい、それじゃ高杉君の席は綾崎君の隣ね。みんな、よろしくね!」
ダイは、自分の席まで移動し、座る。なんとなく気まずいハヤテはとりあえず挨拶した。
「よ、よろしく、高杉君」
ダイは、ハヤテに向かって頭を下げただけであった。
付き合いにくい相手に、これから先こんな調子でいくのだろうと思うと、不安が募るハヤテであった。
時は変わって昼休み。
ハヤテ、ナギ、ヒナギク、美希、泉、理沙の六人は、外で昼食をとっていた。普段は人が大勢いることが嫌いなナギも、
「まぁ、たまには大勢で食べるのも悪くないな」
ということで、みんなに混じっている。
「それにしても転校生の高杉君、かっこよかったねぇ〜」 「ああ、噂に違わぬ容姿だったな」 「でも態度は気に食わないわね。それになんか情けないように見えたし」
彼女たちは、転校してきたダイについての話に花を咲かせていた。
「ハヤ太くんは高杉君の隣にいてどう思った?」
ハヤテはこれまでの授業の中でのダイの様子を思い出しながら話した。
「そうですね・・・・授業中ずっとうとうとしていたので確かに情けなく見られるかもしれません。ですが、頭はとても良いですよ。わからないところを聞いてみたら、わかりやすく丁寧に教えてくれました」 「まあ、そうでなくては白皇に入ることはできないがな」 「そうね・・・・あら、高杉君じゃない?」
ヒナギクの指した茂みの奥に、ダイと見知らぬ男子学生が談笑しながら昼食をとっていた。興味が沸いた6人はそちらのほうへ足を進める。
4人はこんな会話をしていた。
「ここはいいところですね」 「ホント。オイラ勉強は苦手だけど、やっぱり学校はいいよな」
まじめそうな顔立ちの男子生徒に、体格のしっかりした生徒が同調する。
「そういえばおまえ、女子生徒に手を出さなかっただろうな?」
ダイが思い出したように向かいの生徒を睨んだ。その彼もまた美形で、この中では1番かもしれない。
彼が何か言う前に、まじめな少年が告げ口する。
「それはもう大変だったんですよ。自己紹介でいきなりナンパしようとしたんですから」
ダイはため息をついて呆れてしまった。
「シュウが同じクラスで助かったぜ」 「おいおい、俺は・・・・ん?」
美形の男子生徒がハヤテたちに気づいたようだ。ダイたちもハヤテたちを見つける。 「おまえら・・・・」 「ダイ様、お知り合いですか?」 「同じクラスの人たちだ」
それを聞くとまじめな男子生徒はハヤテたちの前まで近づいて頭を下げる。
「はじめまして。私はダイ様とともに転校してきた三井シュウと申します。ダイ様と仲良くしてくれることをお願い申し上げます」
大げさに見えるシュウの挨拶に、ハヤテたちは呆気にとられるしかなかった。
「オイラの名前は真中大地。よろしく・・・・」
大地が言い終わる前に美形の少年がナギたち女性陣の前に躍り出た。
「はじめまして、俺の名前は青居翼。いやしかしここに転校してよかった。こうして美しいお嬢さんたちに出会えたのだから。もしよろしければ・・・・」
そこまでいった翼は、ダイに足蹴にされた。
「っ痛ぁ〜、何するんだよ」 「それはこっちのセリフだ!初対面の相手に何やってんだ!引いてるだろ!」
そして二人はハヤテたちそっちのけでケンカを始めてしまった。
「あの、あなたたちは一体・・・・?」
話ができそうなシュウと大地に何者なのか尋ねてみた。
「私たちとダイ様は、簡単に言うと主従関係なんです」 「えっ、じゃああなたたちも執事なんですか?」 「まあ似たようなもんだな。オイラたちはダイ従者なんだ」 「なるほど」
聞き終わった後、ハヤテたちは翼と言い争っているダイを見た。その姿からでは、主という風には見えない。
「ほらっ、謝れ」
ダイは翼を女性陣の前まで引き連れて、無理やり頭を下げさせる。
「・・・・申し訳ない」
翼は渋々謝った。さすがに女性陣も戸惑い、何か言おうとするが、その前に大地の腹の虫が豪快に鳴った。
「腹減った〜」
しばらく皆呆気にとられていたが、やがておかしさをこらえ切れなくなり、笑ってしまう。ダイだけは、
「お前はそれだけしか言えないのか」
と言っていた。笑い終わった後ヒナギクは問いかける。
「ねぇ、高杉君たちは部活動とかやらないの?」 「俺は無理だ。両親がいなくて、4人だけで生活しているから俺が家のことをやらなきゃいけないんだ」 「私もダイ様のお手伝いがありますからね」 「シュウ、俺に合わせなくていいんだぞ。入りたい部活の一つぐらいあるだろ」 「いいえ。ダイ様をサポートすることこそ、私の務めなのですから」
ダイは溜息をついた。シュウのいいところは勤勉なのだが、真面目すぎるのがダイを悩ませている。一方、翼と大地は部活動へのやる気満々である。
「オイラは空手部!柔道部と迷ったけど、やっぱこれだな」 「俺は剣道部だ。馴染み深いからな」 「青居君、剣道部に入るの?」 「そのつもりだが」 「よかったですね、ヒナギクさん。新入部員ですよ」
ハヤテに言われるまでもなく、ヒナギクは喜んでいた。剣道部は人気がなく、部員が少ないのである。
「桂さんは剣道部の部員なのか?だったら翼が女子に手を出そうとしたとき・・・・」 「まかせて。荒っぽくても止めるわ」 「殺すつもりで頼むな」 「そう。でないと女子は俺の美貌に殺され・・・・」 「いい加減にしろ!!」
ダイはキレだして、翼の首を思いきり締め上げる。
「ちょ・・・・冗談に決まってるだろ・・・・」 「黙れ!もう我慢ならん!俺がこの場で殺す!」
などと周りを気にせず組み合う二人。そろそろ午後の授業が始まるころである。
「ちょっと二人とも、そろそろ授業・・・・」
生徒会長としてヒナギクが忠告しようとするが、シュウがそれを止める。
「ああなると止めることはできません。授業には間に合うはずですから放っておきましょう」
憐れむシュウとおもしろがっている大地はそのまま去って行った。ハヤテたちも、放置することにためらいはあったが、言うとおりにした。
変な人たちというのが、6人の感想であった。こんな人たちと一緒でこれからの一年大丈夫かなと、不安な思いも抱いていた。
|
|