Re: 新世界への神話 ( No.19 ) |
- 日時: 2009/10/23 21:28
- 名前: RIDE
- 更新します。
今回から第8話となります。
第8話 ジェット出陣
1 目の前の一つの影は、少しずつ輪郭を浮かび上がらせた。
「え・・・・?」 「あれは・・・・」
だんだんと見えてきたそれに、ハヤテとヒナギクは目を丸くする。
「ロボット・・・・?」
そう。マンガに出てくるような戦闘ロボットだ。ダイたちの世界にはそういうものがあると聞いていたが、実際目の前に存在しているものを見ると、やはり呆然としてしまう。
「やはり、おまえだったんだな。甦りやがって」
鋭い目つきで睨みながら、ダイは口を開く。
[フフフ。久しぶりだな、ダイ・タカスギ]
相手のロボットからも、スピーカーを通した声が聞こえてきた。
「あの、一体・・・・?」
二人の関係が並々ならぬものに思えて、ハヤテは恐る恐る訊ねてみる。
「あの男は、俺の仲間を裏切ったんだ」
ダイは怒りを抑えるように拳を握り締める。
「そしてあの男は俺たちの敵側について、そいつに代わって世界征服を目論んだ。だが裏切ったことへの報いか結局は切り捨てられて、孤立したアイツは俺の仲間にやられて、最後は異空間に呑み込まれたはずなんだがな・・・・」
そこでダイは呆れたようにため息をついた。
「艶麗とかいう女に助けられてもらった後も、その女の手下として働いているところから見て、世界征服はあきらめていないみたいだな。いや、艶麗を利用して三界を我が物にするつもりなんだろ?ジンジャー・コールド」
すると、ジンジャー・コールドは意味ありげに笑った。
[どうかな・・・・?はっきりしているのは、私は艶麗様のために働くという事]
ロボットがゆっくり構えを取った。
[つまり、おまえを倒すということだ、ダイ・タカスギ。このまま素直に私の手にやられるか、それとも戦うか?]
それを聞き、今度はダイが馬鹿馬鹿しいとばかりに笑った。
「わざわざ俺が出るまでも無いさ。おまえ相手に」 [なに?] 「それに、聞いてなかったのか?こいつがやるって」
ダイは一歩前にいる翼を指した。
「ふっ、そういうことだ」
不適に笑う翼は、ダイがハヤテとヒナギクをこれから起こるであろう戦いに巻き込まれないように避難させているのを横目で確認する。
[何だ、貴様は?]
ジンジャーの問いに対しても翼は笑みを崩さない。そんな彼の身体から光が発し始めた。
眩い閃光の後、翼は巨大なロボットへと変わっていた。
「え・・・・?」 「なにあれ・・・・?」
遥か後方に下がったハヤテとヒナギクはそれを見て何がなんだかわからなくなった。
「ブルー・ジェット、マシンロボモード」
二人は、そう言ったダイの方へ振り返った。
「あれがジェットの戦闘形態だ。俺たちの世界じゃあれで戦ってきたんだ」 「でも、相手の方が大きいわよ。勝てるのかしら?」
相手のロボットの全高はジェットの二倍以上に見え、まるで大人と子供のような光景にヒ ナギクは不安になるが、ダイはそんなことは気にしていない。
「でかけりゃ強いってもんじゃねえだろ。それに、ジェットの実力は俺たちの世界じゃ最強クラスなんだぜ」
ダイの視線はジェットに釘付けのままである。
「仮にジンジャーのあのメカがあれからパワーアップしていたとしても、ジェットの実力はそれに引けを取らない、むしろ勝っていると俺は見た」
ダイの、ジェットの勝利を確信している気持ちに触れ、ハヤテとヒナギクはそれ以上何も言えない。
「まあ、黙ってみていようぜ」
ジェットとジンジャーのメカ、ケイオスとの間に緊張感が漂う。
ケイオスは構えを取るが、ジェットは何の動きも見せない。
[何だ貴様、闘う気があるのか?]
しかしジェットは先ほどから笑みを浮かべたままだ。まるでどうぞ攻撃して下さい、と言っているようだ。
そう受け取ったのか、ジンジャーはケイオスの胸部に設置された砲を撃つ。ノーモーションからのビーム、ジェットの今の体勢からではかわすことは難しい。
しかし、ビームに貫かれると思われたジェットの姿は、ビームに触れる直前に突如消失した。
[何っ!?]
急いでジェットの姿を捜すと、相手は背後に回っていた。
ジンジャーはどういうことなのかと焦ったが、すぐに落ち着きを取り戻す。
優秀だと自負しているジンジャーの頭脳は、ジェットは瞬間移動と錯覚してしまいそうな超高速移動が可能だということを理解したのだ。
しかし、理解することとそれを実際に捕らえることは別である。今度は、本来前方に向けて展開する背部のキャノン砲を後方に向けたまま放つが、この砲撃も空を通っただけで、ジェットはケイオスの懐にまで移動していた。
[くっ、すばしっこい!]
あまりのスピードにジンジャーは悪態をつく。だがチャンスであった。こう距離がつまっていては、せっかくの高速移動も活かせない。
ケイオスは高周波ナックルを装備した拳を突きつけようとする。対するジェットは腰の鞘から剣を抜く構えを取る。
「天空真剣、燕返し!」
ジェットの振るった剣がケイオスの拳と衝突し、はじき返した。ジェットはそのまま後退し、一定の距離を保つ。
[なるほど]
一通り闘ってみて、ジンジャーは再び余裕を取り戻していた。
[その素早い動きに、先程の剣技。防御時に真価を発揮するみたいだが、それだけでは勝てないぞ]
自分の機体が傷つけられることは無いと判断したため、またいくら自分よりも速く動けても、長期戦になればこちらもエネルギーの問題などはあるが、向こうもいずれは必ず疲労してしまい、攻撃を受けやすくなると予測し、勝機はあると睨んだためだ。
しかしジェットはそれに堪えた様子は無かった。
「確かに、このままだと埒があかないな」
ジェットは再び剣を抜く構えを取り、超高速移動でケイオスの至近距離まで接近する。またも突き出されるケイオスの拳を燕返しで払いのけ、振った剣をそのまま上段に構える。
「天空真剣、鋼割り!」
そのまま剣を振り下ろす。相手の装甲の硬さに、一刀両断とまではいかなかったが、大きな傷を残すことはできた。
ジンジャーは自分が設計した高性能を誇る機体が傷つけられたこと、そしてスピードはもちろん、攻撃、防御の剣技など予想以上のジェットの戦闘力に驚愕していた。
|
|