Re: 新世界への神話 ( No.18 )
日時: 2009/10/15 19:47
名前: RIDE

更新します。
第7話ラストです。
やっと、あの人が戦いに加わります。


 3
「艶麗の手下か!?」

 現れた使者の精霊たちがシルフィードとヴァルキリオンに向けて攻撃を始める。動けないヴァルキリオンをかばって、シルフィードは前に出て突風を起こすが、いくつかが掻い潜ってヴァルキリオンに迫っていく。

「正宗っ!」

 そこへ、名匠、正宗が作ったといわれる木刀、正宗を手に、ヒナギクが立ちふさがった。彼女は正宗を上段に構えて、勢いよく精霊の一体に向けて振り下ろした。人間にとっては強烈な一撃なのだろうが、精霊相手では対して効いていないようだ。

「何を考えている」

 苦しげにヴァルキリオンは口を開く。

「そんなもので精霊が倒せるはずがない。引っこんでいろ」

 だがヒナギクは凛として言い返した。

「戦えばあなたを守れるかもしれないじゃない。駄目だからってただ黙ってみているなんて、もう我慢できないわ!」

 ハヤテの戦いに参加したかった。しかし、自分には精霊がいないからただ黙って見るだけしかなかった。しかし、だからといって何もしなければ、本当に何もできないということに、ヒナギクは気がついた。だから、こうして敵に対峙しているのだ。

 愚かな行動に見えるが、ヴァルキリオンは彼女が気に入った。この女なら、と。

「おまえ、名前は」
「桂ヒナギクよ」
「そうか」

 ヴァルキリオンは、重い体を引きずって、ヒナギクの元に跪いた。すると、彼女の目の前に、シルフィリングに似た腕輪が光を発して現れた。

「これは・・・・」
「ヴァルキリング。私の主であることの証だ」
「え?それって・・・・」

 つまり、ヒナギクを自分の主に選んだということである。

「共に戦ってくれるか、桂ヒナギク」

 それに対する答えは決まっている。ヒナギクは微笑んだ。

「ええ。任せて」

 ここに、第二の使者が誕生した。

「それで、この場はどうすればいいの?」

 ヴァルキリングを装着しながらヒナギクは尋ねた。まともに戦ったら、数で押されてしまう。

「考えがある」

 残る力を振り絞って先ほどヒナギクに打ちのめされた精霊たちを氷の力で凍らせて封印した後、ヒナギクに案を打ち明けた。



 ハヤテとシルフィードは突風によって敵を押さえつけているが、敵はじりじりとこちらに近づき始めてきた。

 シルフィードの力が限界に近付けば、一斉攻撃によってやられてしまうだろう。

「ハヤテ君!」

 そんな不安を抱きだした時、突然ヒナギクに呼ばれ、振り向くハヤテ。

「リングをかざして!」

 ヒナギクは腕を上げるような動作をしている。それにならってハヤテはリングがよく見えるように左腕を上げた。

 ヒナギクの腕から光が放たれ、シルフィリングに収束されていく。何が起こったのか驚いてリングを見ると、氷と刻まれた勾玉が挿入されている。

 シルフィリングに勾玉が挿入された瞬間、シルフィードは力が湧き、凍えるような冷たい風を起こした。風を受けた敵の精霊たちはすべて凍結してしまい、封印されていった。

「やったね、ハヤテ君」

 ヒナギクが近寄ってくる。そこでハヤテは、ヒナギクがヴァルキリングを着けていることに気付いた。

「ヒナギクさん、それ・・・・」
「シルフィードにヴァルキリオンの力が備われば勝てるかもしれないって言うから、リング間で勾玉のやりとりをしたの。手を動かせば時間もかかるし妨害も入ると思ったから」

 子供のように成功を喜ぶヒナギク。しかしハヤテの聞きたいことはそこではない。

「これは遊びじゃないんですよ!命を落とすかもしれないほど危険なのに、なんで使者になったんですか!?」

 思わず咎めるような口調になってしまうハヤテ。本気で心配しているからそうなったのだが、逆にヒナギクは口を尖らせた。

「なによ、私がそう簡単にやられると思っているわけ!?」
「そうじゃなくて・・・・」

 ハヤテが次の言葉を言う前に、ヒナギクは真剣な表情で語った。

「あなたが戦っているのを、もう黙って見ていられないわ。一人より、二人って言うじゃない」

 ヒナギクの決意が固いことを知ったハヤテは、それを承諾するしかできなかった。

「わかりました。ですが、あなたが危なくなったら僕が守ります。それは約束しますから、覚えておいてください」

 そこでヒナギクは、ハヤテが本気で心配していることを知り、嬉しくてつい照れてしまう。

「べ、別に助けてもらわなくても、いいんだから!」

 そう普段のように突っぱねてしまうのだった。

「おしゃべりはその辺にしておけ」

 それまで見物していた翼が二人の元に歩いていく。

「大将格が一人、まだ残っている」

 二人が見上げてみると、巨大な影が一つ、自分たちの前に存在していることに気付く。

「まずいですね・・・・」

 自分が飲み込まれそうなほどの巨大さに、力を浪費したシルフィードでは勝てそうに見えない。

「おまえたちは下がっていろ」

 翼が一歩前に出て、巨大な影を睨む。

「ここは俺がやる」
「そういうことだ」

 そこで、翼に呼ばれたダイが姿を現す。

「あいつの相手は、俺たちの担当だ」

 そう。目の前の相手は、ダイのよく知る人物だからだ。