Re: 新世界への神話 ( No.17 ) |
- 日時: 2009/10/13 21:31
- 名前: RIDE
- 更新します。
2 「では、その思いを見せてもらおう」
ヴァルキリオンは刀身が氷の剣を出現させて、それを手に取った。それに合わせて、シルフィードも解放形態に姿を変える。
辺りは緊張感に包まれた。
それを破ったのは、ヴァルキリオンであった。氷の剣でそのままシルフィードに斬りかかった。シルフィードはそれをかわし、強風でヴァルキリオンを上空に持ち上げる。そのまま殴りかかろうとするシルフィードだが、寸前にヴァルキリオンは小さなつららみたいなものを投げつけた。シルフィードは攻撃をあきらめ、それをかわして地面に着地する。後に続いてヴァルキリオンも地に足をつけた。
「やるな。だが、これで全力だと思うなよ」
不敵に笑うヴァルキリオンの姿が光に包まれ、人型へと変わった。
人型のヴァルキリオンは、ガイアースと同じく外見は大人の女性で、鎧を身に纏った、神話に出てくるような戦乙女のような風貌であった。
ヴァルキリオンはシルフィードに向けて手をかざす。危機を察したシルフィードはとっさに跳び上がり、それまで立っていた地面は瞬時に凍った。
シルフィードめがけてヴァルキリオンも先ほど以上のスピードで飛び上がる。一気に懐にまで潜り込まれたシルフィードは、防御の構えも取れないままヴァルキリオンの太刀を受けてしまい、そのまま落下してしまう。さらに追い討ちとばかりに、解放形態時のものよりも大きな錐の形の結晶をシルフィードに投射する。それは、立ち上がろうとしたシルフィードの右腕を貫いた。
「くっ・・・・」
自分の精霊が負けているのは、自分のせいである。ハヤテは力不足を痛感していた。
「ハヤテ君・・・・」
一方のヒナギクも、今までずっとハヤテの戦いをそばで見ていたのに、何もできない自分に対して悔しい思いでいっぱいである。
「誰かを守るという思いが強いとは限らない。何のために、誰を守るのか。それをはっきりさせなくてはいけない」
ヴァルキリオンの言葉を聞いて、ハヤテは以前にも同じようなことを言われたことを思い出した。
ナギの祖父、三千院帝に自分の人生は無意味だと言われたことを。
「それでも僕は、ナギお嬢様の執事!必ず、お嬢様を取り返さなければならないんだ!」
そのハヤテの意気込みを受けて、シルフィードも人型形態へと変わった。
人型へと変わったシルフィードは一気に押し返す。強烈な一撃をヴァルキリオンに喰らわせ、そのまま格闘で圧倒していく。受け太刀になるしかなかったヴァルキリオンだが、隙を見て氷の剣を突き刺そうとする。切っ先がシルフィードの肩をとらえ、深手とはいかないがそれなりのダメージを与える。
そのままシルフィードの格闘とヴァルキリオンの剣技がぶつかり合う。一進一退の攻防が続き、互いの力は互角のように思われた。
だが、ハヤテの思いの力を身に宿しているシルフィードは戦闘能力を増大させていき、だんだんと一方的にヴァルキリオンを殴り続けていく。
そしてついに決着がつく時が来た。シルフィードはヴァルキリオンを蹴り付けながら後退し、一定の距離をとる。そこから疾風の如くスピードによる突進をヴァルキリオンに向けて放つ。対するヴァルキリオンも、氷の剣を構えて一閃する。
すれ違う二人。少しの間その場で立ったままであったが、ヴァルキリオンは苦しそうに膝をつき、振り返ったシルフィードには身体に一本の傷が走っていた。
「相討ちと言いたいところだが、一撃の差にこれほど差があるのではな・・・・」
シルフィードは浅い傷のようでまだ立っていられるが、ヴァルキリオンは今の一撃で戦闘不能になったらしい。いまなら、封印することもたやすいのだが。
「戦う前から思っていたが、おまえは何か別の目的で戦っているのでは?」
そう言うシルフィードに、ヴァルキリオンは自嘲っぽく笑う。
「ああ言っていたが、結局私も精霊だ。戦うには私の使者が必要だ。しかしただの人ではだめだ。その選択基準として、シルフィードの使者を量ることにしたのだ」
ヴァルキリオンは立ち上がろうとしたが、深い傷を負った影響で起き上がることも困難のようだ。
「艶麗は、倒さなければならない・・・・」 「でしたら、今封印するのはやめておいたほうがいいですね」
ハヤテは翼に同意を求める。ダイがいないこの中で決定権を持つ翼は、首を縦に振った。
「一応、ダイにもここへ来てもらうか」
了承はしたのだが、まだヴァルキリオンに対する不信感がぬぐえない翼は、ダイにここへ 来るように連絡をかけた。
そして、それが終わり携帯電話を閉じたときだった。急に周囲の風景が変わり始めた。
その変化は、ナギたちがさらわれた時のものと同様である。
「空間に引きずり込まれたのか!?」
見ると、翼の姿も大人のものに変わっている。
そして、精霊を従えた使者が何人か、ハヤテやシルフィードの前に現れた。
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