Re: 新世界への神話 ( No.16 ) |
- 日時: 2009/10/06 20:46
- 名前: RIDE
- 久々の更新です。
前回で第6話は終わり、今回から第7話をお送りします。
第7話 氷のヴァルキリオン
1 「まったく、お姉ちゃんったら・・・・」
アクエリスを封印してから日も暮れ、辺りはどっぷりと暗くなっていた。
ヒナギクは夜道のなか、ハヤテと翼に付き添われて帰宅していた。ヒナギクにとって、翼の存在は余計だったが、意中の人と二人きりだと緊張して気まずくなると思ったので、助かったりがっかりしたりと複雑であった。
「お、公園だ」
近くにあった負け犬公園に目がとまった翼は、そこを指した。
「ちょうどいい。少しあそこで休んでいこう」 「だめよ、学校帰りに寄り道だなんて」
まじめな性格のヒナギクは当然、それを認めようとはしなかった。
「いいじゃないですか、少しぐらいお話ししても」
そうハヤテにも言われたら、味方のいないヒナギクは反論ができなかった。
「しょうがないわね」
仕方がないので、二人とともにヒナギクも公園の中に入って行った。すぐにベンチを見つけ、ハヤテとヒナギクはそこに腰かける。
「そこで待っててくれ。ジュースを買ってくる」
そう言って、ヒナギクに向けてウインクをした後、自販機を探しに行ってしまった。
ヒナギクは彼のウインクの意味を瞬時に理解していた。二人きりにしてやったということ語りかけたということを。彼女は彼の気遣いに余計なことだと腹を立てたくなる気分になった。
「ええっと・・・・」
ヒナギクは何を話していいかわからず、口ごもってしまう。対するハヤテも、ヒナギクを怒らせてはいけないという、彼女とは違った緊張感を持っていた。
「そ、それにしても風間先生が使者だったなんて驚きましたね」 「そ、そうね。しかも八闘士なんてなんだか偉そうじゃない」
などとその場つなぎの会話をしていると、ふとハヤテはヒナギクのものとは違う、微かな声を耳にする。
「見つけた・・・・」 「え?」
誰か周りにいるのかと、辺りを見渡すハヤテ。
「どうしたの、ハヤテ君?」 「いえ、見つけた、とか何とか聞こえたので・・・・」 「そう?私は何も聞こえなかったけど・・・・」
首をかしげながらヒナギクも目を凝らしたが、やはり姿は見えず、気配すらなかった。
しかし、信じられないことが起こっていた。
「え?これ・・・・」 「雪?」
なんと、大粒の雪が降り出して来たのである。今の季節は春で、そんなことはありえないはずなのに。
「なんだ、これは?」
ジュースを買いに戻ってきた翼も目の前の異常気象に目を見張らせている。
「見つけた・・・・」
そして、3人の目の前に女の子が現れた。神秘そうな雰囲気を漂わすその少女は、ハヤテたちに対して、獲物を見つけた獣のように微笑んだ。
それを見た瞬間、翼は理解した。
「この子、精霊だ」 「え?それじゃ、この雪はあの子が降らせたんですか?」
翼は黙って頷いた。しかし、使者の姿が見当たらない。
この世界を漂っていた妖精が力をつけたものだろうか。そう思っていると、シルフィードが相手の精霊に向けて威嚇するように震えだした。
「ど、どうしたんだ?」
ハヤテは反応に困るが、翼はそれで相手の正体について確信する。
「そうか。あいつが行方不明になったっていう精霊か」
それを肯定したのは、意外にも相手の精霊であった。
「そう。私は氷のヴァルキリオン」
ハヤテとヒナギクはそれまで精霊に対して無口なイメージを抱いており、それを覆されたことで少し驚いた。
対して、翼は冷静さを崩さずにヴァルキリオンに尋ねた。
「それで、どうして俺たちの前に現れたんだ?」
仲間の元に戻ってきた、という風には考えられなかった。ヴァルキリオンから発せられる、こちらに対する敵意がはっきりとわかるからだ。
「シルフィードよ。なぜ人間の味方をする」
ヴァルキリオンはハヤテたちを無視して、シルフィードに話しかけてきた。
「五年前の戦いで、我々は人間の心に巣食う醜さを見てきたではないか。あんな者たちに使われていたのでは、心を癒すことなどできん。我々は、独立するべきなのだ」
それを聞いて、シルフィードも自分の意見を述べる。
「我々は人の心から生まれたことを忘れたのか。人と妖精、精霊は互いに切れない繫がりで結ばれているのだ」 「それを今から変えるのだ。艶麗も霊神宮も私の手で倒す」
ヴァルキリオンは、シルフィードを睨んだ。
「私を止めるために戦うか?」 「もちろんです」
そこでハヤテがシルフィードの横に並んだ。
「僕たちは艶麗を倒して、大切な人たちを取り戻さなければならないんです。邪魔をするつもりなら、あなたを倒します」
ヴァルキリオンは、そんなハヤテを見て愉快そうに笑った。
「こんな貧相な奴を主に選ぶなんて、貴様の眼も腐ったな」
貧相と言われて、ハヤテは軽く傷つく。くじけそうになる彼をヒナギクは励ます。
「大丈夫よ、ハヤテ君!貧相で、借金があって、おまけにメイドのほうが天職だといわれるぐらいな女顔でも、気にすることはないわ!」
フォローになっていない。ハヤテは大きなショックを受けてしまい、傍らで見物していた翼は笑ってしまう。
「な、なんの!それでも僕には、やらなくちゃいけないことがあるんだ!」
闘志を燃やしてハヤテは立ち上がった。
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