Re: 新世界への神話 ( No.14 ) |
- 日時: 2009/09/28 18:16
- 名前: RIDE
- 更新します
第6話をお送りします
第6話 水のアクエリス
1 白皇学院の昼休み。ほとんどの者が昼食を摂っている。
もちろん、この男たちも。
「艶麗に盗まれた精霊は、あと五体か」 「四体だ。一体行方不明だって言ってたからな」
ダイたち4人は、盗まれた精霊を指折りして数えていた。
「いいじゃない、ねぇ〜」 「駄目よ、お姉ちゃん!」
どこからか二人がもめている声が聞こえてきた。
桂雪路とヒナギク姉妹である。
「ヒナ〜、お金貸してよ〜」 「駄目ったら駄目!そうやってお姉ちゃんは借金ばかり作っていくんだから」
そこへハヤテがやってくる。
「また給料無くなったんですか?桂先生」 「うるさいわね。私に恵んでくれないのならどっか行ってよ」 「お姉ちゃん!いい加減にして!」
さらに別の乱入者が。
「綾崎ぃ、そこにいたのかぁ」
執事らしい男が現れ、ハヤテは鬱陶しい表情になる。
「げっ、虎鉄さん・・・・」 「そんな顔するな、愛しい人よ。せっかくの出番なんだからな」 「僕は一生会いたくなかったですよ、変態・・・・」
ぎゃあぎゃあと騒がしくなり、ついにこらえ切れなくなった。
「うるせぇー!!」
大声とともにダイがヅカヅカと歩いてきた。
「いい加減にしやがれ!少しは周りのことも考えろ!」
彼の声のほうが明らかに騒音だと思った一同だが、ここはあえて突っ込まないようにした。しかし、これ以上ヒナギクに怒られたくない雪路は、そっと逃げ出していた。
「あ、待ちなさいお姉ちゃん!」
ヒナギクが気付いた時には、雪路はもう遠くへ行っていた。
「もう・・・・」
残されたヒナギクは口を尖らせた。
「で、綾崎、こいつ誰?」
ダイはハヤテに付きまとおうとしている男を指す。
「この人は、瀬川家の執事で、虎鉄さんという人です」
虎鉄はダイに目もくれず、尚もハヤテの周りでうろちょろしている。
「これから二人で仲良く話でもしようじゃないか」
虎鉄はハヤテの肩を抱こうとするが、その手はハヤテに振り払われた。
「いい加減に・・・・」 「へ?」 「ぐふっ!」
虎鉄の顔面に、ハヤテの拳がクリーンヒットした。
「あ、愛は痛いものだ・・・・」
そう言って、虎鉄は気絶した。
「本当に変態だな」 「ええ。しかも鉄道オタクときています」 「どうしようもないな。でも瀬川家のって、瀬川泉の?」 「ええ。瀬川さんの執事で、双子のお兄さんでもあります」 「そうか・・・・」
ああでも、心の中は妹が心配なのかもと思っていると、今度は別の方向で生徒のざわめきが聞こえるような気がしてきた。
「なんだろう。桂先生が暴れているとか?」
ありえそうな話である。
「とにかく、何が起こっているのなら行ってみましょう。本当にお姉ちゃんが暴れているのなら止めさせないと」
そうしてダイ、翼、大地、シュウ、ハヤテとヒナギクがたどり着いたのは、大きな池だった。その池は信じられないことに、大きく渦を巻いていた。そして、水が大量にあふれ出て、ダイたち以外の生徒を流し込んでいった。しかも、池の水はすぐにまた貯まっていく。
「これは・・・・」 「精霊の仕業だな」
ダイたちが気付くと同時に、池の水が天に向かって噴出し、水柱が立った。
その上には、瀬川泉が立っていた。
「瀬川さん!」 「やっほ〜。ハヤ太君、ヒナちゃん、元気だった?」 「泉!あなた生徒会役員でしょ。それなのに生徒を傷つけるなんて、生徒会長として許さないわよ!」
ヒナギクの怒りを、泉は一笑に付す。
「これでもそんなことが言えるのかな?」
ヒナギクに圧縮された水の弾丸が撃たれる。腹部に命中し、彼女は腹を抱えてうずくまる。
「ヒナギクさん!」
ハヤテはヒナギクの元へ駆け寄り、彼女を支えると、泉を睨んだ。
「何やってるんですか、瀬川さん!ヒナギクさんはあなたの友達じゃないですか!」
ハヤテは怒った。普段の泉がにこやかな笑顔で、他人を攻撃するような事はしない子だけに、この怒りは大きかった。
しかし、次のハヤテの発言は泉の逆鱗に触れる。
「それに、瀬川さんはいじめるよりもいじめられるのが好きなはずです!」 「・・・・!!そのことを言ったこと、後悔してあげるよ。いいんちょさんのちからをみせてやるのだ〜!」
どうやら、洗脳された事で性格が攻撃的になったみたいである。
今度はハヤテに水の弾丸が襲い掛かる。だが、一気に人型形態になったシルフィードがハヤテの前に現れ、風の防御壁で弾丸を防ぐ。シルフィードは突風を起こし、泉に向けて反撃 するが、彼女も同様に水の防御壁で突風を受け付けない。
「直接攻撃するしかないってことか。でも女の子に暴力をふるうなんて・・・・」 「攻撃する相手を間違えるな」 「え?」
ハヤテたちは一瞬意味がわからなかったが、ダイは続ける。
「戦うなら瀬川じゃなくて、あいつの精霊と戦えってことだ」 「でも、その精霊の姿が見えないんですけど」 「じゃあ聞くけど、なんで瀬川は水柱の上に立っているんだ?」
言われてみると、確かにおかしい。人が水の上に立つことなんて常識的に考えて不可能である。
「おれの考えが正しければ、相手の精霊は池の水と同化している。だから瀬川は水の上で立っていられるはずだ」 「むむっ・・・・」
図星をさされると顔に出やすいいところは洗脳前と変わっていないようだ。
「高杉君の言う通りだよ。この池の水には精霊が同化しているんだ。名前は水のアクエリス」 「なるほど。水の精霊だから自在に池の水を操れるというわけか」 「でもどうする?水と同化しているということは、こちらの攻撃は全く通じないということだぞ」
沈黙するハヤテたちに追い打ちをかけるかのように、アクエリスは巨大な津波を起こす。この大きさでは、回避することは無理である。
だが、津波がハヤテたちをとらえる寸前、大量の水が彼らの手前で渦を巻いて池に戻っていく。
何が起こったのか、何者の仕業なのかあたりを見渡す。
「まったく、校内で騒がれると迷惑なんですよね」
そう言って現れた男は。
「風間先生?」
ハヤテたちのクラスの副任でもある、古典教師の風間伝助が、大鷲のような精霊を従えている。
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