Re: 新世界への神話 ( No.11 )
日時: 2009/09/25 18:26
名前: RIDE

更新します。
第5話、スタートです。


  第5話 土のガイアース

 1
 火のブレズオンの封印後、ハヤテたちは自分たちの世界に帰った。

 ナギや他のさらわれた女の子たちのことは気になっていたが、ブレズオンを封印したなら、向こうからさらった子を盗んだ精霊の使者として遣わせるはずだというダイの言葉を信じることにしたのだ。

 そして翌日。

「花菱さん、瀬川さん、朝風さん、鷺ノ宮さん、そしてナギちゃんは、しばらく欠席ということになったわ」

 雪路がどうしたのかしらと言わんばかりに出欠を取っている。

 美希や泉、理沙、歩、伊澄たちの両親には、三千院家の力でなんとか黙ってもらっている。それでも、ハヤテとヒナギクの寂しさは晴れるわけはなく、暗い表情を見られないように俯いている。

 そして一日は進んでいき、風間伝助の古典の授業が終わり、昼休み。

 ダイは昼食を摂ろうと、場所を移動しようとする。

「あ、ちょっと・・・・」

 そんな彼を、ハヤテとヒナギクが呼び止めた。

「何だ?」
「一緒に食べませんか?いろいろと話もしたいですし・・・・」

 ダイは別に気にした様子もなかった。

「いいぜ」

 ジェット、ドリル、ジムこと翼、大地、シュウも加わり、外で食事をはじめる。ダイたち四人はおにぎりを食べている。いや、おにぎりしか食べていない。

「おにぎりだけ・・・・ですか」

 彼らの弁当箱には、おにぎりしか入っていなかった。それも、いびつな形である。

「今日は大地が弁当の当番だからな。こいつは料理ができないんだ」
「オイラは作るよりも、食べる方が好きだからな〜」
「まあ、食えない物ではないからいいが」

 大地は屈託無く笑い、翼は苦笑しながら食べていた。

「あの・・・・タカスギさん」
「さんはやめてくれ。この世界では同級生なんだから。シユウたちに対しても、学校とかでは本名で呼ぶな」
「じゃあ、高杉君・・・・」

 ハヤテたちは何か質問しようと思っているのだが、何を聞いたらいいのかわからない。

 人生の辛酸を嘗め尽くしてはいるが、平凡に生きてきたつもりの自分が、ある日髪やそれ
に近い者に会って、その動揺が一日で治まるはずがない。全て夢とも思いたいが、目の前にダイたちがいることが、現実だという事を証明している。

「本当は何歳なんですか?」

 そんなどうでもいいことを聞いてみてしまった。

「19だ。翼たちは人間の歳で言うなら20代後半」

 面倒くさいふうにダイは答えた。

 若干なんか気になることがあったがそれを口に出せず、再び静寂が包まろうとしている中、ヒナギクが最も興味深い質問をした。

「あなたたちの、機械文明が発達した世界って、どんなところなの?」

 ダイはしばらく考えた。言うべきかどうか迷ったが、別に言ってはならないことでもないことに気付いたので、話しはじめた。

「基本的に人々の生活レベルはこの世界と変わらない。だがそれは俺の故郷、育った星での場合だ」

 ダイはさらに話を続ける。

「故郷では遺伝子技術と宇宙開発が発達していた。特に後者に熱を入れていて、宇宙に人口の居住施設、コロニーを建設したりした。最近では遠い銀河の星々とも交流を持つようになり、最も発達した星では、まるで魔法みたいな技術がたくさんあった」

 宇宙だの銀河だのを聞いて、つくづく夢のような話だと実感させられる。

「平和だったんですね」

 よくはわからないが、話を聞くと良いことばかりの世界に思えた。

 だが、ダイはそれを首を振って否定した。

「そうでもないぜ。100年前の政派のうらみや兄弟げんか、住んでる所の違いで戦争が起こって、それを発端に世界全体を消そうとした奴まで現れたんだ。しかもそいつは、俺の故郷の星で影から争い煽っていた一つの家系なんだから、たまったもんじゃない」

 ちょうどそこでチャイムが鳴った。

「五限目が始まるな。話はここまでだ」

 ダイは立ち上がった。ハヤテたちを見ると、まだ聞きたい事があるのがわかる。

「まだなんか聞きたかったら、学校が終わった後三千院家の屋敷で話すぞ。あそこのメイドも、おまえたちと同じ気持ちだろうし」

 そういうことにして、それぞれの教室に戻っていった。



 そして放課後。

「じゃあヒナギクさん、部活頑張ってください」
「ありがとう。それじゃ、ナギの家で会いましょう」

 ヒナギクは部活が終わってから、翼、大地と共にナギの屋敷に向かうことにした。

「それじゃ、行きましょうか」
「ああ」

 教室の前では、シュウがダイを待っていた。

「ダイ様、おつとめご苦労様です」
「おつとめって、大げさだよおまえ」

 シュウを改めて一歩引いた所から見ると、やはりパシリのようだなと思いつつ、ハヤテは要件があることを伝える。

「ちょっと寄りたいところがあるんですけど」
「寄りたいとこ?」

 そこは、レンタルショップタチバナという看板が掲げられた、レンタルビデオ屋であった。

 店の中に入ると、カウンターにはナギや咲夜と同じくらいの年頃の少年が座っていた。

「よう、借金執事」
「こんにちは、ワタル君。これ、返却する物です」

 そう言って、この店の経営者であり、ナギの許婚でもある橘ワタルに数本のDVDを提出した。

 その間、ダイとシュウはアニメやマンガのDVDコーナーを意外なものを見る目で物色していた。

 夢中になっていたため、シュウは店員と思われる眼鏡を掛けたメイド服の女性と接触してしまう。

「キャッ!」

 メイドはよろけてしまい、持っていたDVDがいくつかこぼれ落ちてしまった。

「あ、すみません」

 シュウは彼女と一緒に落ちているDVDを拾う。

「ありがとうございます」

 橘家のメイド、貴嶋サキは一礼して再び仕事に取り掛かろうとしたが、自分のスカートに足がつまづいて、見事に転んだ。

 同じ使える側の立場として、こんなドジな女性に同情してしまった。

 そしてダイは、カウンターにDVDをいくつか置いた。

「これ借りるぜ。こいつの名義で」
「えっ、これを・・・・」

 指されたハヤテは、ダイの脅迫の視線を受けてながら借りるための料金を払う。なぜDVDなんて借りるのかと疑問に思いながら。