Re: 新世界への神話 ( No.10 ) |
- 日時: 2009/09/24 18:59
- 名前: RIDE
- 更新します。
第4話ラストです
3
炎は咲夜の頭上で大きくなっていく。敵意むき出しである。
漂う緊張感に、村人たちが固唾を飲む。
それを打破したのはジムだった。彼はヘリコプター形態となり、ダイたちの頭上で滞空する。
ダイとハヤテは彼の中へ乗り込み、近くの岩場まで運転する。
ジムから降りたダイは、懐から拳銃を取り出した。そして眼下にいる艶麗の手下たちに向けて岩場の上から発砲をはじめた。
手下たちは混乱した。ダイは殺さないように撃っているが、それを知らないために当たるのではないかと恐怖を感じてしまう。
「ブレズオン!」
咲夜が叫ぶと、炎の勢いはだんだん小さくなり、蜥蜴に似た二足歩行の動物がそこにいた。
咲夜が上に跨ると、蜥蜴はダイたちのいる岩場めがけて跳び上がった。
岩場の上に着き、蜥蜴から降りた咲夜は、ダイたちと対峙する。
「やっぱりそれも精霊だな?」 「そや。名前は火のブレズオン」
ブレズオンは身体に火を纏いはじめた。それを見て危機感をもったハヤテはシルフィードを開放形態にする。
そして、ダイは納得したように頷いていた。
「なるほど。艶麗とかいう女がおまえらをさらったのは、盗んだ精霊と組み合わせるためだったのか。しかし・・・・」
ダイは大げさにため息をついた。
「計画が狂ったぜ。とりあえず強い奴を何人か倒して、艶麗に揺さぶりをかけるつもりが、こんな三下じゃ話になんねえぜ」
それを聞いて、相手に舐められていることを知った咲夜は怒った。
「なんやて!ようし、ウチとブレズオンの力、見せたるで!」
ブレズオンは口から炎を吐く。間一髪かわしたダイとハヤテだが、上着が少し焦げてしまう。
「そらそら、どんどん行くでぇ!」
ブレズオンは炎を吐きつづけている。その炎の威力が、シルフィードに攻撃させないでいた。
「こっちだ!」
ダイはハヤテを先導しながらぐるぐると逃げ回る。炎は彼らの後を追い、あっという間に二人の周囲を囲んだ。
勝利を確信した咲夜は不適に笑った。
「とどめや!」
ブレズオンが炎を吐こうとした瞬間、咲夜の横から炎が走った。
反射的によけた咲夜は、辺りを見て自分も炎に囲まれている事を確認した。
「バカめ、条件はおまえも同じだ」
ダイはただ逃げ回っているだけではなかった。相手の逃げ道を塞ぐことを見越しての行動だったのだ。
「力をうまく使えないようじゃ、やっぱり三下だな」
ダイはハヤテに首で攻撃を促す。シルフィードはハヤテの意志をうけて力を増していく。
「くっ、ブレズオン!」
高熱の炎に囲まれてる中、打開せんとばかりにブレズオンはシルフィードに特攻を試みる。
「いけっ、シルフィード!」
シルフィードは、疾風のごとくスピードで、ブレズオンに突進した。
大ダメージを受けたブレズオンは光に包まれていき、そして全身が輝きだした。光が消えると、そこにあったのは勾玉であり、それはダイの懐に真っ直ぐに飛んでいった。
驚いたダイは、懐に何があるか思い出し、それを取り出した。
賢明大聖から預かったリダートが、微かに光を発していた。
「やっつけりゃ封印できるってのはこういう事なんだ」
彼の隣にいるハヤテは、咲夜が倒れそうになるのを見て、あわてて彼女の身体を抱える。
「咲夜さん、大丈夫ですか?」 「う・・・・あれ、ここはどこなんや・・・・?」
気がついた咲夜は自分が置かれている状況が全くわからないでいた。
「思っていたが、やっぱりマインドコントロールされていたんだな。そして精霊を倒せば正気に戻るということか」
ダイは咲夜に怪我がないことを確認すると、彼女をハヤテに任せて村へと降りていった。
「倒しちゃいましたね」
村に戻ってきた二人を見ながら、マリアは呆然としていた。
艶麗の手下たちは既に去っている。頭がやられたことで、戦意を失った為である。
「でもなんで、あんな岩場で戦おうとしたのかしら?」
ヒナギクはそこがわからなかった。どうせ戦うのなら移動しなくても良いのではないかと思っていた。
「では実際にここで戦っていたらどうなっていたでしょうか?」
唐突なジムの質問に、ハヤテもヒナギクもマリアも答えに窮した。
「ブレズオンの炎はシルフィードの風によって煽られ、広がった炎はこの村をも包んでしまったかもしれませんね」
3人は言われてはじめてそこに思い当たった。
「じゃああの人は、この村に被害を及ばさないために!?」
ハヤテたちは、改めて村人たちから賞賛されているダイを見る。彼らの中の、ダイに対する評価は変わっていた。
「ありがとう、君たちは恩人だ!」
村人たちの完成に包まれ、得意げになるダイ。しかし・・・・
「それじゃ約束どおり、壁を修理してもらいましょうか」
薬屋の言葉にダイは硬直してしまった。
ダイは壁の修理を再開していた。
「な、情けない・・・・」 「泣くなジム、人の道は険しいんだぜ」
その姿で言われても、説得力はない。
評価を改めたハヤテ、ヒナギク、マリアの三人だったが、やはり情けなさはどうにもならないと思った。
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