Re: Hello boy (一話完結、他2本) ( No.3 )
日時: 2013/06/02 11:16
名前: S●NY


たとえば『いつまでも少年のような瞳』なんて言い方、よく聞くけれど。
そんなことはないと、私は常々思っている。
帝おじい様の周りにいる方たちはよく言っていた。
彼に向かって。三千院家党首に向かって。
いつまでも少年のような瞳だと。
それは社交辞令だろうか、それとも彼を本当に盲信しているのか。
だけど、私は分かっている。
そんなものは、どちらにせよ、過去に縋る老害か、はたまた青春というコトバに縛られた、愚物なのだろう。
私は知っている。
私は見ている。
私は本当の少年の瞳を分かっている。
ふいにマリアさん、と彼が厨房に立つ私に呼びかける声がした。
振り返れば、彼は困った顔でぼろぼろの服を着て、だけど私の頼んだお使いの食材の入ったビニールは傷一つない。
また何か不幸なことに巻き込まれでもしたのだろうか。
今回も彼はひどい怪我を負っている。
そして何より。
自分の不甲斐なさを悔しがるような目をしている。
もっと、要領よくできたらと。
もっと、こんな目にあわないようにできたらと。
情けなく笑った向こう側にそんな顔を隠していて。
その瞳は、何かとても大切な光が確かにあって。
しょうがないなと、思いながら私はにっこり微笑んで言ったのだ―――

私は知っている。
私は見ている。
私は綾崎ハヤテ君の瞳を分かっている。
本当の少年っていうのは。
ハヤテ君は。

―――『Hello boy』

もっと大人に。はやく大人になりたいと思っている。