Re: Hello boy (一話完結、他2本) ( No.1 ) |
- 日時: 2013/06/02 11:15
- 名前: S●NY
周りはみんな敵だった。 誰も守ってはくれなかった。 何を信じればいいのか分からなかった。 ここに居ては殺される。 親は絶対信じられない。 いつか捨てられると分かっていたから。 僕は一人で生きなければと。 言い訳と共に逃げ出したくて仕方がなかった
「可哀想に……」 そう言って彼女は小鳥を一羽手に取った。 彼女の見上げる先には、雛鳥達が親を呼んで鳴いていた。 彼らは知らない。 兄弟の事など、意にも欠けない。 自分の生きる事に必死だから。 「どうします?」 僕は彼女に向かって聞いた。 「助けるしかないじゃない」 彼女は答える。 それを僕は興味深く見つめる。 彼女は助けると言った。彼女はその雛鳥を助けると言った。 彼女はそっと『大切に抱える』と、真剣な目をした。 どうやって、助けるのだろう? 僕は思った。 興味深く彼女を見ている。 「よいしょっ……と」 右足を木の幹に叩きつけ、勢いよく左手を伸ばす。 「ヒナギクさんは高いところが苦手でしょう?」 「そんな事言ってられないじゃない」 彼女は上る。肩を震わして、一生懸命上っていく。 「目を瞑りましょうか?」 「スパッツ履いてるから」 もしもの時は助けろと、彼女は含みを返してきた。 彼女の行動を監視する。 健気な事だと監視する。 「もう大丈夫」 彼女は笑った。 茶色の雛鳥を巣に返して、しかし自分は下りられない。 「ハヤテくん」 僕に助けろと目で指示してきた。 僕は手を広げ、彼女を受け止める準備をする。彼女はいきなり飛び出して―― 顔でしっかりキャッチした。 「コレでもう大丈夫ね」 満面の笑みでそう言った。 頭上では、先ほどの雛が周りと同じように、泣き出した。鳴き出した。 「元気そうでよかった」 彼女は笑う。 うれしそうに笑う。 「周りの兄弟も戻ってきてうれしそう」 「良かったですね」 僕は、ボコボコの笑みでそう答えた。 彼女は守ったのだ。 守ったのだ。
周りはみんな敵だった。 誰も守ってはくれなかった。 何を信じればいいのか分からなかった。 僕は一人で生きなければと。 言い訳と共に逃げ出したくて仕方がなかった。 ここに居ては殺される。
『天使に名を告げてはならない』
―――逃げ出したのに、戻された。
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