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対象スレッド 件名: Colors
名前: タッキー
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Colors
日時: 2017/06/27 23:09
名前: タッキー

12月24日。午後3時頃、広大な三千院家の中にある綾崎宅の二階の一室。この家の長女である綾崎アカリの部屋に、なにやら騒がしく階段を駆け上がる音が響ていた。その足音は確実に、スマホを片手にベットの上で横になっているアカリの部屋へ近づいて、そして次の瞬間、勢いよくアカリの部屋のドアは開かれた。

「アカリちゃーーん!!!カナエちゃんが意地悪するーーー!!!!」

「してません!!!」

部屋に飛び込んできたのは白髪の女の子と、その子の胸下ぐらいの身長の小さな青い髪の女の子だった。アカリは彼女たちに反応したのかユラリと上体を起こしたが、二人の目にその光景はまだ映っておらず、気づかないまま口論、もといじゃれ合いを続けていた。

「だいたい、リナさんはもっと時と場所とを考えるべきです!」

「時が…って言うなら今日はクリスマスイヴだし、場所だったら…ここはカナエちゃんの家なんだから問題ないんじゃない?それとも、カナエちゃんは私にギュってされるの……イヤ?」

「べ、べつに嫌というわけではないですけど……ちょっと回数が多いというか………。恥ずかしいというか………」

最後の方は声量が小さすぎて、すぐ隣にいたリナにも届いていなかった。何と言っていたのか聞き返そうとしたリナだったが、いつもなら真っ先に会話に入ってくるアカリが未だ一言も話していないことに気づいた。リナが彼女のほうを見てみると、アカリはベッドに座ったままうなだれている状態で固まっていた。

「お、お姉ちゃん?どうしたんですか?もしかしてお腹が痛いとか……?」

「………………のに………」

「「へ?」」

遅れてアカリの状態に気づき、声をかけたカナエの耳に入ったの力の台詞の一端のみだった。さすがに心配になった二人が近づいてみると、アカリが横にしたスマホを両手でガッチリと握りしめているのが分かった。さらには、彼女の体がプルプルと震えていることも……

「プロトのために貯めていた石全部使ったのに………」

「「…………」」

アカリの言葉にリナはクエスチョンマークしか出てこなかったが、カナエのほうはこの光景に見覚えがあるようで、どこか呆れたような表情を浮かべていた

「そりゃ、星5だったけれど……出にくいのは分かってたけれども……!!」

次の瞬間アカリは突然立ち上がり、割りと大声で、自室の天井に向かって胸の内をぶつけた





「なんでギル様礼装がこないんだよぉぉおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」







「…………」

「…………」



「なんで礼装が来ないんだよ!!この前もギル様の礼装来なかったし!なにか!?鯖のほうがいるからいいだろって!?いいわけあるか!!だいたいピックアップ礼装のくせに確率低すぎるんだよ!!くるのはダーニックばっかだし!!それも星四だし!!………………」




「…………」

「…………」

その後、リナとカナエは十数分間にわたってブツブツと愚痴を並べきったあげく、消沈していくアカリを黙って見ていた。






「もうダメ……。ぜパるわ………」























     第1話 『 Re; 』


































「ていうか、なんでウチの庭でクリスマスパーティーするのよ?人数多いんだから母屋のほうでやったほうが良かったんじゃないの?」

「まぁ、よいではないか。大きくやりすぎても、掃除とか片付けとか……いろいろ大変なのだ」

「おもに執事とメイドさんたちが…ね」

ヒナギクは隣で美味しそうにチキンを頬張るナギを見て、大きくため息をついた。庭先に目を戻すとそこにはいつもはないはずのテントが建ち、その中では歩や千桜など、多くの友人たちがテーブルを囲って楽しそうに賑わっていた。そしてこの家の家主であるハヤテはというと、女性陣のために彼女たちの隣で忙しそうながらもどこか嬉しそうに、バーべキュー用のコンロでせっせと肉やら野菜やらを調理していた

「相変わらずだな……」

「たしかに、あんまり変わってはいないのかもね………」

見られていることに気づいたのか、ハヤテは一旦手を止めると汗のつたう顔を上げてこちらに手を振ってきた。さも当然のように手を振り返したヒナギクだったが、腕を下ろした後でナギがじっとりとした目で自分のことを見ていることに気づいた

「相変わらずだな」

「な、なによ!これくらい普通でしょ!?」

今度はナギがため息をつく番だった。

「まったく…いつまで新婚ホヤホヤなんだか……」

「べ、べつにそんなんじゃ………!」

「まったくだよ。毎日毎日、娘達の前でもお構いなしなんだから。パパもママも、もうちょっと節度というものを持ってほしいね」

「ちょっ!!アカリまで……!!」

ナギの言葉に動揺していたせいか、ヒナギクは自分の娘がすぐ隣まで来ているのにも気づいていなかった。いつものように、左側で結ったポニーテールを元気に揺らすアカリは、呆れた声で、しかし少し嬉しそうな顔で、いつものように母親であるヒナギクに無垢な笑顔を向けた

「それじゃ、わたしはお肉をたくさん食べないといけないので!!」

軽い敬礼をしたアカリは逃げるようにテントの方へ足を弾ませたが、何か言う気力も失せていたのでヒナギクはひらひらと手を振って了解の合図だけを送り、そのまま黙って娘の背中を見送った

「相変わらず元気だな」

「元気がありすぎて困ってるくらいよ。少しは妹を見習ってほしいのだけど」

とは言いつつも、その元気の良さも含めてアカリはよくできた娘だとヒナギク自身思っている。きっと調子に乗るので本人には絶対に言わないが、アカリは率直に言って良い子だ。素直で真面目。家事手伝いは進んでしてくれるし、学校の成績も申し分ない。分かり切っていることだが家族間の仲はすこぶる良い。彼女の言動に困らせることもあるが、それら全てを含めて愛おしいと思っている


……私もハヤテとあんまり変わらないわね。



自分を改めて見つめ直して、ヒナギクは微笑と一緒にため息をこぼした

「どうした?」

「べつに。ほら、わたしたちも何か食べましょ」

そう言ってナギを残したままヒナギクは一歩踏み出す。手持ちの食べ物は無いし、腹もすいている。付け加えると娘と同じく肉が欲しい気分だ。気の回るハヤテのことだからちゃんと残ってはいるだろうが、アカリが向かった以上うかうかもしていられない。それに、どうせならみんなと一緒に盛り上がったほうがいいに決まっている


今日はせっかくのクリスマスパーティーなのだから
































同刻。ひたすらに肉と野菜を頬張り、いい年をした女性とは思えないほど口回りを汚していてる西沢歩の耳を、涼やかだがとても騒がしい声が通り抜けた

「おーい!!あゆゆーー!!」

「こ、こら!あゆゆ先生だって一応先生なんだから、ちゃんと先生をつけなきゃだめでしょ!」

「ルナちゃん?一応ってどういうことかな?一応って?」

声の始点には瓜二つの白髪美少女が二人。大きな目にそれを飾る長い睫毛、理想とも言える顔のパーツの整い方まで、まるでコピーを取ったかのように似すぎている。違うところがあるとすれば一人はカチューシャで髪を飾り、もう一人は結った髪でお下げを作っているという髪型の違いの一点のみだ

…自分がこの子たちくらい綺麗だったら、もっと華やかな人生になったのだろうか。

世の中の不平等さは目から侵入すると同時に体中に巡り渡り、脳にありもしないことを想像させる。しかし説明するまでもなく双子である目の前の少女たちは自分の教え子であり、彼女たちにとって自分は先生だ。間違っても大人気ないところは見せられない。そう、一応先生なのだから

「で、何の用なのかな?先生は今お肉を確保するのに忙しいのだけど」

「なんかお肉食べたい系の人多くない?気のせい?」

「あゆゆ先生はもとからよく食べる方だから。この前も体重が……」

「はいストップーー!!お肉あげるから!!ね!?」

このように生徒に振り回されてしまっていては大人気もへったくれもないのだが、これが白皇学院教師、西沢歩の日常なのだ。つまり生徒たちとの仲はすこぶる良いというわけである。

「で、結局何の用だったのかな…?」

「いや、見かけたら声をかけただけだったんだけど…」

「わたしの…お肉……」

二人の皿に積み上げられた焼肉串を見て、がっくりと肩を落とす。べつに普段から食べていないわけではないが、三千院家内で振舞われる肉はスーパーのそれとは違い高級なのだ。この機会にたくさん食べておきたいというのは当たり前だろう
しかしいつまでも貧乏くさいことを言うわけにもいかず、また次の肉を手に入れるために力を振り絞って顔を上げる。バーベキューは戦争なのだ。相手が子供でも油断をすればすぐに寝首をかかれる。大勢が集まる以上、食べられる数には限りがある。それをいかに効率よく、かつ大量に自分のもとにできるかが重要なのだ。落ち込んでいる時間などない。行動を起こすべきなのは今なのだ

「あの…あゆゆ先生?」

「なにかなルナちゃん!!BBQは戦いなのよ!!だから先生は早くお肉を確保しなきゃいけないの!!」

「いや…これ」

差し出されたものを見て歩は思わず息を呑む。カチューシャの女の子が自分に渡そうとしているのは先ほど自分があげたはずの焼肉たち。人は失って初めてそれの大切さに気づくというが、今がまさにその状況なのだろう。山型に積まれているそれは自分が持っているときよりも一段と輝いて見えた。これをくれる彼女は女神なのだろうか。いや、女神なんですね分かります

「いいの?」

「いや、わたしこんなに食べないですし…。ていうよりもうお腹いっぱいなんです」

「ありがとうございます!!」

大人気ないところを見せないと思ったのはきっと遠い昔のことだったのだろう。直角に近い角度で歩は頭を下げる。だがすぐに態勢を直すと人の集まるテントのほうに向き直った

「じゃ、わたしはもっと食べないと満足できないので!!」

「あ、はい…。頑張ってください…」

砂煙をあげる勢いでテント方向へ突っ込んでいく歩に呆気にとられていたルナだったが、すぐに隣からの妹の声に意識を呼び戻される

「相変わらずあゆゆは元気だねー」

「そうだね……」

歩から貰った肉で口をもぐもぐさせているリナとの会話に、ルナはどこか違和感を覚える。しばらく頭の中を旋転していたそのしこりはやがてシャボン玉のように弾けて一つの答えを彼女に誘起させた

「だからあゆゆ先生は先生なんだから、ちゃんと先生をつけなさーい!!」





























「はい。熱いから気を付けてな」

「あ、ありがとうございます……」

粗熱を残すねぎま串に息を吹きかけ、必死に温度を下げようとする様がとても愛らしい。幼女に食べ物を渡しているだけなのに、頭の中で様々なシチュエーションが生まれてきてしまう。これはもう両親に頼んで一日だけでもいいからこの子を貸してもらうしかない。いや、決してやましい気持ちはないのだ。これはそう、仕事のためだ。ノベル作家としての本分を全うするために必要なことなのだ

「千桜お姉ちゃん?カナエちゃんが可愛いのは分かり過ぎるんだけど、いやらしい手つきで幼女を連れ去ろうとするのはよくないと思うよ。うん」

「だ、だれが誘拐犯だぁーーーっ!!」

「いや、そこまでは言ってないんだけどね…」

驚きのあまり、意図せずに大きな声を出してしまう。相変わらず綾崎家のセコムは優秀で、次女に甘々な姉と両親、長女に過保護な両親。そして当然、妻をしつこいほどにガードしている夫という徹底ぶりだ。呆れるのを通り越して尊敬してしまう。
しかしそんな呑気な思考もそれまでだった。

「お姉ちゃん。千桜さんが誘拐なんてするはずないですか!」

純粋な優しさが千桜の胸に突き刺さる

「いやいや、意外とこういう人って適当な理由つけて幼女さらっていくタイプだからね。気を付けたほうがいいよ。マジで」

的を射ているだけ、アカリの言葉のダメージが大きい

「だから千桜さんはそんな人じゃないんですって!」

「いや、千桜お姉ちゃんは犯罪者予備軍だね。間違いなく」

優しさが痛い。酷評が辛い。
このままではベクトル違いの圧力で精神が押し潰されてしまいそうだ。しかし当然、大の大人が、二人係とは言え子どもにメンタルをボコボコにされて沈黙したままではいられない。いまだ言葉の鉄球が飛び交う中で体制を立て直し、千桜は焼き串をつかみ取る。炭火焼き独特の香りが立ち、焼きたてでまだ泡立つ肉汁が滴り落ちる。これなら勝てる。BBQ戦争で最も破壊力の高い兵器を手に入れた千桜は確信した。これで勝つると
なるべく自然に。そして冷静に。クールな外面を崩さずに、しかし心ではほくそ笑みながら千桜は綾崎姉妹に串肉を差し出した

「ほら、肉焼けてるぞ」

「いや、私はもうお肉はいいかなって」

「すいません。私もお腹いっぱいなので」

拒否られた。つらい、死のう
しかし落ち込む千春を蚊帳の外に放り出し、アカリ達はいつのまにか合流していたルナたちとの談義に花を咲かせている。やはり世代が近いほうが共通の話題が多いのもあって会話が良く弾むらしい。それに、ほぼ全員が白皇に通っているというのが一番大きいのだろう。

「そういえば、アカリちゃん生徒会長になったんだっけ?」

千桜はふとヒナギクが話していたことを思い出す。母娘そろって白皇学院の生徒会長をやっているなんて、血は争えないとはこのことを言うのだろう。

「そうなんですよ!一年生で生徒会長なんて、すごいですよねー!!」

話に真っ先に食い付いてきたのはカナエだった。明らかに顔が輝いていて、瞳に映る姉への愛慕は爛々と燃え盛り、収まるところを知りそうにない。
ふいに、自分に妹がいたらこんな風だったのだろうかと考えてみる。いや、ここまで慕ってくれる家族がいること自体とても珍しいことだとは千桜自身分かってはいたが、それでもそう思做さずにはいられないほど、彼女を見ていると自分も妹が欲しかったと、そんなことを考えさせられる。

「攫っちゃダメだよ?」

「誰が誘拐犯だぁーーーー!!!」









































騒がしかった時間は既に終わり、今はもう灯りの無くなった自分の家の庭からは不思議なくらいに音が聞こえてこない。かすかな風だけがハヤテの頬を撫ぜ、どこかセンチな気持ちにさせられる

「なにたそがれてるのよ?」

いつか聞いた気がする台詞が、ハヤテの鼓膜にするりと入ってくる。振り返る間もなくヒナギクが横に来て、ハヤテと同じようにベランダの柵にもたれかかる。と、しようとして彼女はすぐに柵から距離をとった。ここは2階。大したことはないとは言え、やはり苦手なものは苦手らしい。ヒナギクに合わせてハヤテも柵から離れた

「で、何考えてたの?」

「いや、少し不思議だなぁって」

「ふ〜ん。何が?」

余計なことは聞かず、シンプルに先を促される。もう長い付き合いだ。何も言わなくても全てが分かるわけではないが、どういう時にどうして欲しいかぐらいはお互いに理解しあっている

「結局、変わったことなんてなかったってことが」

勿論、みんな成長したし、仕事や新しいことも始めている。自分たちのように結婚している者だっている。しかしこうして集まってみれば、まるで高校時代に戻ったかのように、あの頃と同じような話で、あの頃と同じような盛り上がり方をする。ずっと続くと、永遠だと思っていたものは終わってしまったはずなのに、蓋を開けてみればそんなことはありませんでした、と

「だから、それがなんだか不思議で」

色々な非日常があった旧時も、何の変哲もないただの日常だった今までも、まるで別物のように感じていたはずのものは実質同じだと今頃になって気づく。

「そうね〜」

きっと、ヒナギクが一番変わっていない。相変わらずの負けず嫌いで、相変わらずのしっかり者で、相変わらず人に優しい。彼女だけは何も変わっていないんじゃないかと思えるほど、移り変わりが見られない。もちろん胸の方も

「何か失礼なこと考えてるでしょ」

「い、いや!ヒナはそのままでも十分魅力的だから!!」

「そう?ありがと」

なんとか誤魔化せただろうか。いや、ギリギリアウトな気がする。あと一歩でも取誤れば、すぐさまお説教の雨でうたれることになっただろう

「でも……」

しかし、ヒナギクの言葉でハヤテの不安は消散する

「ハヤテは変わった気がする」

湧き出した感情は驚きだっただろうか、喜びだったろうか、それとも悲しみだっただろうか。その答えに辿り着かないまま、彼女の次の言葉に耳を傾ける。ヒナギクがそう言った理由がなんだかとても重要なもので、今の自分を形作っている何かのようにも思えた

「なんだと思う?」

「………」

ただでは解答を出してくれないヒナギクに、ハヤテは少しだけ捻り声を漏らす。正直に言ってしまえば自分が変わったことなどないと思っている。強いて挙げるならお金があることくらいだろうが、きっとそれは答案として正しくない。もっと内面的な、それこそ心境の変化のようだとは予想がついているのだが、ハヤテはどうしても思い当る節がない。
気づくまでは時間がかかる、いや、言わなければきっと分からないと踏んだヒナギクは軽くため息を溢し、相変わらずそういう所だけは変わっていない、と前置きをしてから頭を悩ませるハヤテに答えを打ち明けた

「ハヤテがね、私のことちゃんと見てくれるようになったってところよ」

「………え?」

これはもしかして土下座コースだろうか。再び不安が脳を占め始める

「ぼ、僕はいつだってヒナをちゃんと見てるよ!」

「知ってるわよ」

苦し紛れに出てきた言葉をあっさりと肯定され、少し拍子抜ける

「ハヤテがわたしを好きだってことくらい、ちゃんと分かってるわよ」

なら何故と聞き返そうとして、しかしそれはヒナギクの恥ずかしそうな表情に押し返された

「ハヤテくん…」

そう呼ばれたのはいつぶりだっただろうか。その言葉に感覚の全てが吸い込まれる。
自分はきっともうすぐ大切な言葉を聞くことになるのだろう。そう直感したハヤテは聞いてもいないのに返しの言葉を考え始める。彼女にとっての、一番大切な人にとっての一番大切な言葉になるような一言を

「ハヤテくん。わたしね…、あなたのことが好きなのよ」

いつか聞いたはずの告白。今までに聞いたことのない告白。不思議な感覚だった。ハヤテはそれを覚えているのに、ハヤテ自身はそれを知らない
ほんの少しだけ逡巡する。口を開くまでの瞬間が異様に長く感じる。夜冬の冷たい空気が肺に届くと同時に、身体が温めた息が闇夜に白を色付ける

「僕は、ヒナギクさんに返しきれないほどの恩があります」

自分も君が好きだと囁けることができたなら、どんなに気が楽だっただろうか。愛していると抱きしめることができたなら、どんなに胸のつかえが払拭されただろうか
しかし、そうはできなかった。そうできないだけの理由があり、それでなくてもここで愛を謡うのは正しくないと、ヒナギクに対する言葉としてふさわしくないとハヤテ自身が思った

「アナタが僕を幸せにしてくれたから、僕にはアナタを幸せにする義務があります。だから、僕はこの人生をそのために使います。アナタが自由だと言ってくれたから、僕はアナタのものになります」

好きだ。好きだ。愛している。その言葉を言えないのがもどかしい。
心の底から好きなのに、世界の誰よりも愛しているのに、ハヤテにはそれを言える資格がない。救われただけの幸せを、無条件で注いでくれた愛を、その全部を返済するまでは自分は彼女に追いつくことができない
どれほどの年月がかかるのだろう。きっと一つの命じゃ足りず、人生の全てを使っても届かない。だから…

「だから、ずっとアナタの傍にいます」

そっと彼女の手を取る。為すがままに持ち上げられた掌に抵抗の素振りはない

「これまでも、これからもヒナギクさんだけを見ています」

「うん……」

もしかしたら、気づけなかったかもしれない。もしかしたら、知らなかったのかもしれない。もしかしたら、これとは違うもっといいエンディングがあったのかもしれない。
しかし、これでいいのだ。胸の内にしこりを残し、まだ正しく想いを伝えられないままだとしても、これが正しいのだ

「流石に寒いわね。そろそろ中に入りましょ」

ヒナギクと共に一階のリビングへ足を進める。ハヤテの出した答えは愛には到底至っていないのに、ヒナギクはどこか満足した面持ちをしている
そう、これでいいのだ。これが正しいのだ


この話は、正しい彼女のための物語なのだから










































時を数刻さかのぼり、片付けの間際に千桜がふいに湧いた疑問を口にした。

「そういえば、岳さんたちはどうしたんだ?今日来ていないみたいだけど」

「お父さんたちなら、お兄ちゃんを迎えに行ってるよ」

白髪の少女の言葉から、千桜は自分の記憶の奥を覗き込む。そういえば、この少女の親、岳とレナの第一子は男の子だった。たしか名前は「シン」といったはずだ。赤ん坊の頃しか見たことがないので、成長した今の姿は想像もつかないが、きっと彼らの息子なのだからどうせイケメソなのだろう

「てか、そのお兄さんは今までどこにいたんだ?」

「ん?それなら勿論に……」

「新潟の専門学校に通ってたんですけど、今年度からこっちに引っ越すことになったんです」

突然、姉のほうが妹の言葉に被せる形で答えたが、千桜にはあまり気にならなかった。きっとカナエのように彼女たちも兄のことが好きなのだろう。まったくどこのラノベ展開だよと思いながら、おそらくこの少女たちに慕われているだろうその兄のことが気になった

「お兄さんって、どんな人なんだ?」

「え〜と……、一言でいうならカッコいい人です」

予想を当てた自分に少しだけ嫌悪感を覚える

「実は、わたしたちも一緒に過ごした時間は短いんですけど、小さい頃に遊んでくれた時は優しくて、頼りになって……」

書いているジャンルとは違うが小説のネタにはなるので、千桜はできるだけ聞き漏らしがないようにしっかりと耳を寄せる。妹のほうも混じって話は長くなったのだが、自分が聞いたことなので途中で止めることもできず、やはりラノベ展開みたいだな、と薄ら思いながら千桜は結局話の全てを聞いたのだった





























































































はいどうも、タッキーです。おひさしぶりです
まぁね、いろいろあったんですよ。車の免許取ったりとか骨折ったりとか就職決まったりとか。

そんなわけで今回から新作「Colors」始まります。前のヤツみたいに目も当てられない駄文を忘れ去られるくらい稀な頻度で更新していきます。
ちなみにお初の方にむけてですが、これには前作「兄と娘と恋人と」とかいう駄作があるのです。取り敢えずべつに読まなくてもお話が分かるように頑張ります

原作も終わっちゃったし、なんだかんだ暇だし(暇ではない)だらだらと書いていきます。どうぞよろしくお願いします。
最後にオリキャラのプロフィールをば












綾崎 愛湊(かなえ)

年齢  6才

誕生日 6月13日

血液型 O型

身長  96.3p

体重  19.9s

家族構成 父(ハヤテ),母(ヒナギク),姉(アカリ)

好き   お姉ちゃん(す、好きだなんて言ってないですよ!?)、両親

嫌い、苦手 苺,辛い食べ物,お手伝い(できないわけじゃないです!苦手なだけです!)


綾崎家の次女。小さい頃から(今も小さいけども)ハヤテについて回ってるので幼いながらに敬語で話してます。
性格はほぼヒナギクといった感じでもちろん負けず嫌い。運動とか勉強とかは大変良くできる子なんですが、家事全般が壊滅的。今はお手伝いで済んでるけど、大人になっても治らない設定で、そのうちきっと台所とかを破壊しだします。
姉たちによく絡まれよく怒りますが、それが特にいやではなく恥ずかしいから怒っています。
あとはまぁ、自分が(ビジュアル的にも)気にっているキャラなので多分よくでてきます











竜堂(りんどう) 潤愛(るな)

年齢  12才

誕生日 2月24日

血液型 A型

身長 156.2p

体重 43.2s

家族構成 父,母,兄,妹

好き、得意 コーヒー(飲むのも淹れるのも)

嫌い、苦手 機械とかは少し分からない


そのうち出てくる岳さんとルナさんの娘。妹のリナとは双子で1時間お姉ちゃん。岳さんとルナさんに関してはどうしても気になるのなら「兄と娘と恋人と」のどこかにプロフィールがあります(適当
妹にいつもついていってる、というか妹がはしゃぎ過ぎないように見ているといった感じ。基本的にはなんでも人並み以上くらいにこなしますが、この小説の中では普通な感じの女の子です。
両親が「喫茶どんぐり」をやっている(これも前作からの設定)影響でコーヒーには無駄に詳しい。お店のお手伝いとかもよくしてくれるいい子です。











竜堂 麗愛(りな)

年齢 12才

誕生日 2月24日

血液型 A型

身長 158.2p

体重 44.1s

家族構成 父,母,兄,姉

好き、得意 お姉ちゃん、カナエちゃん!カナエちゃん!!(大事なので二回

嫌い、苦手 水



ルナちゃんの双子の妹。双子とはいえ一応末っ子なのでお姉ちゃん願望があり、よくカナエちゃんに絡む
いつもはアホの子っぽい感じですが、運動とか勉強とかは大得意で、それらをするときはスイッチが入って人が変わったようにカッコいい女の子になります。それが原因で学校では女の子からモテてます。
お姉ちゃん願望はましましですが、それと同じくらいにお姉ちゃんっ子。やれば自分だけでなんとかできるのに、なにかにつけてルナと一緒にしようとします。
ちなみに水が苦手というのは、飲む以外の全てで水が嫌いという設定です。雨とかプールとか、お風呂は姉たちと一緒にしぶしぶ入ります。もちろん泳げません




さて、今回のプロフィールは異常ですお兄ちゃんのほうは一応、このお話の重要人物なので次回紹介します。女の子たちの名前の漢字がキラキラすぎるのはまぁ、いろいろ考えてたら…ね。

それではまた次回もよろしくお願いします