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対象スレッド 件名: Re: 憧憬は遠く近く 〜 不思議の姫のアリス
名前: どうふん
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Re: 憧憬は遠く近く 〜 不思議の姫のアリス
日時: 2015/07/24 23:43
名前: どうふん

ハヤテのヒナギクさんの仲はもう一息だったような気もします。
アリスは自分がどこまで意識しているかは定かでありませんが(実のところ作者にもわかっていない)、強力な助っ人です。

しかしお互い相手に魅かれている自分を自覚しながら、相手の気持ちには全然気づいていない、その状況にはまだ変化がありません。




【第8話: 閉ざされた心に響くもの 】


ヒナギクとアリスの心理戦は勝負がついた。ヒナギクの勝利だった。
悔しがるアリスを前に、満足感で一杯のヒナギクだが、この時初めてハヤテの姿が見えないことに気付いた。
「あれ、ハヤテ君は?」
「そう言えば・・・。さっきから居ないようですわね。お手洗いかしら」
これほど明敏な二人が、今の状況に全く気付いていなかった。


どしんどしんと近づいてくる足音がした。


「あら、戻ってきたようですわよ」
「いや、違うみたいよ」
ドアを荒々しく開けたのはナギだった。
「お前ら、私を差し置いて何を楽しそうにしているのだ・・・あれ、ハヤテはどうした?」
「ちょっと外に出たみたいね。すぐ戻ってくると思うけど」
「で、昨日も今日も三人で家族ごっこしていたのか」
「『ごっこ』じゃありませんわよ」
「あのな・・・、前から気になっていたんだが、アパートの執事のハヤテがアリスの父親代わりというのはまだ許せるが、ヒナギクと夫婦とはどういうことだ」
「私には事情がありますからね。ハヤテとヒナでなければだめなのです」
ぐぬぬ・・・、とナギは憤怒を押さえきれない。
「一体お前は何者だ。未来からやってきたハヤテとヒナギクの子供か。そ・・・そんなことはありえないが」
「ちょ、ちょっと・・・、ナギ」
「ええ、確かにそんなことはありませんわよ。遺伝子学上ありえません。むしろ外見だけならあなたの子供の方が可能性は高いと思いますけど」
「た、確かに髪の色は一緒だが、お前みたいに我儘で図々しくて生意気な子供が私にできるわけあるかあ!」
「いや、今のままでは多分そうなると思いますわ」
「確かに」
ナギの後ろにマリアと千桜が立っていた。


ナギたちはまだやいのやいのと言い争っていたが、結局全員でババ抜きに戻してゲームを続けることになった。


しかし、1ゲームが終わってもハヤテは帰ってこない。
気になったヒナギクは席を立った。

(マリアさんがゲームに加わったから、家事を交代したのかしら・・・)
ヒナギクはムラサキノヤカタを一回りした。
しかし、屋敷のどこにもハヤテはいない。靴は玄関にあるから買い物でもない。
(あとは、ハヤテ君の部屋・・・?)
しかし、ハヤテが一人で部屋に戻る理由が、ヒナギクには思いつかない。
まして、その原因が自分にあるということなど想像もしていなかった。


************************************************************************::::


ハヤテはベッドに寝転んでいた。頭の中には先ほどのヒナギクのセリフが何度となくフラッシュバックしている。
『ハヤテ君。顔が(私に)近すぎるわよ。離れて!』
(僕は馬鹿だ・・・。一体何を勘違いしているんだよ・・・)


ハヤテとヒナギクは、親としてアリスを可愛がっている。
だが、二人はそれぞれがアリスの親となってはいても、二人が夫婦というわけではない。
それを忘れて、調子に乗ってヒナギクに馴れ馴れしい態度を取った挙句、叱咤された。
つい先日、愛歌に指摘されたばかりなのに。

いや、それ以前に、ハヤテは十年もの間思い続けた女の子がいる。その子と再会し別れたばかりではないか。
ヒナギクはそのいきさつを知り、応援してくれた。
それに応えることもできず、当のヒナギクにそんな態度を取っている自分は軽蔑されて当たり前じゃないか。

自分の馬鹿さ加減が情けなかった。恥ずかしかった。
(ヒナギクさん、怒っているだろうな・・・。あ、あれ・・・、あれ・・・?)
涙が溢れていた。
(おかしいじゃないか、何で涙が?何で泣いているんだ、僕は?)



ノックの音がした。
「ハヤテ君、いるの?入るわよ」
ヒナギクの声だった。

「あ、あの・・・、ちょっと・・・」
半身起こしたハヤテはヒナギクを止めようとしたのだが、効果的な言葉を思いつく前に、ヒナギクは顔を覗かせていた。

「どうしたのよ、ハヤテ君。一人で部屋に戻って・・・寝てたの?」
「す、すいません。急に眠気に襲われて・・・、つい」
「もう。だったら一言言いなさいよ。心配するじゃない」
「済みません、ヒナギクさん。いつもいつも困らせてばかりで・・・」
腹立たし気なヒナギクを見て、ハヤテはその原因を全く別なものと捉えていた。
だから謝った理由も全く的外れだった。

「何言ってるの?・・・ハヤテ君、泣いてるの?」
「す、済みません。そんなことないです。ええ・・・、ちょっとうとうとしてたら変な夢を・・・」
「変な夢・・・?本当に?」
「・・・ (嘘じゃないさ。ヒナギクさんと家族になった夢を目を開けて見ていたんだから)」
「ねえ、ハヤテ君。ちょっとおかしいわよ。何があったの?また何か厄介ごとに巻き込まれてるの?私で良ければ相談に乗るわよ」

ヒナギクは本当に心配そうな顔で覗き込んでいる。いつもなら怒ったように問い質してくるのに。それが余計にハヤテを苛立たせた。
「済みません、一人にしてもらえませんか。ちょっと一人で考えたいことがあるんです」
その声は自分でもわかるくらいに素っ気なく響いた。

後悔した。また怒られると思った。
しかし、ヒナギクの顔は怒っていない。悲しそうだった。その瞳に涙が溢れているように見えた。
「ごめんなさい・・・」消え入るような声と共にヒナギクは姿を消した。


一人残されたハヤテの胸に、いつかとよく似た感情が湧き上がってきた。
間違えようがない。
『ハヤテなんか、いなくなっちゃえばいいんだ!』もう十年も前、ロイヤルガーデンでアテネとひどい別れをした時味わった、文字通り胸が張り裂けそうな気持ち。
今感じているのもそれだった。

(僕は・・・、僕は、どうしちゃったんだ)
さしもの鈍感執事も、今度こそはっきりと意識せざるを得ない。

(僕は・・・、ヒナギクさんが好きみたいだ・・・)


2/20 遅ればせながらご指摘の表記ミス(アテナ ⇒ アテネ)、修正しました。ありがとうございました。