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対象スレッド 件名: 第2話
名前: ロッキー・ラックーン
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第2話
日時: 2011/09/30 22:58
名前: ロッキー・ラックーン

こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
約1週間ぶりの更新です。
更新頻度は高くないですが、物語はしっかり終わらせるつもりですのでお付き合い頂けると嬉しいです。
それでは第2話、どーぞ。



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     第2話?【みんなもマスター?ナギナギ体操だぞ!!】



「起きろー!ハヤテ!!朝だぞーー!!!」

「う"〜ん…お嬢様れすかぁ〜…?」


珍しく(いや、初めてか?)元気の良い主人の声で起こされた僕は、未だに夢うつつ。
もうあと5分…そんなワガママも虚しく、小さな手でわしゃわしゃと頭をかき回され、叩き起こされる。


「お嬢様が僕より早起きだなんて、珍しいですね〜」

「そうだ、私は生まれ変わったのだ!!怠惰な生活を改め、お前やマリアに余計な世話をかけない事を決心したのだ!!」

「お…お嬢様…」


ついにこんな日が来るとは…
感動で朝から涙腺が緩む。


「では、一日の始まりはおめざのナギナギ体操からだ!庭に出るぞ、ハヤテ!!」

「え?」


ナギナギ体操?なんじゃそりゃ?


「ほら、早く行くぞ!」

「…はい、お嬢様」


庭に出てみると…


「おはようございます、ハヤテ君」

「マリアさん、おはようございます。マリアさんも…?」

「あらやだ、ハヤテ君ったら。朝の体操といったらナギナギ体操でしょう?」


マリアさん!!?
貴女まで何言ってるんですか?


「ハヤテ、朝のナギナギ体操に遅れるなんて…気が緩んでるのではなくて?」

「アーたん!?」


アーたん(小さいほうです)までこんな朝早くに!?
ていうか、今の今までそんな体操聞いた事も無いぞ…


「ハヤテ君、おはよう!」

「ひ、ヒナギクさん!!」


助かった…この人なら僕の疑問に的確に答えてくれるはず!!


「あの…このナギナギ体操って…?」

「あら、ハヤテ君…昨日あんなに『朝はナギナギ体操じゃないともう仕事しない』って駄々こねてたのに…ヒナヒナ体操の何が気に入らなかったっていうの?」

「げ、ヒナギクさんまで…」


もう僕の味方はいないのか!?ていうか、「ヒナヒナ体操」も気になるぞ…


「ハヤテ、私語は慎め!!ミスしたらクビだぞ…では、ミュージックスタートだ!!」

「なんで体操ミスるだけでクビなんですかーーーーー!?」









・・・

「うわぁぁぁああ!!」

バサッ


そこには、寝巻き姿の借金1億5千万男が一人、布団から起き上がっていた。

…ですよねー、夢オチですよねー。しょーもない夢見ちゃってスミマセン。
では改めてタイトルからどうぞ。





     第2話【触れ合う手と手(朝っぱらから)】



「う"〜ん…晴れた晴れた」

庭に出て深呼吸、ひときわ大きく身体を伸ばす。
昨日の雨から一転、雲ひとつ無い空には顔を出したばかりの朝日が綺麗に輝いている。

さて、今日も一日頑張りますか!!

まずは庭の掃き掃除…
と思ったら、その庭には葉っぱひとつ落ちてない。

ならば廊下の雑巾がけだ…
と思ったら、その廊下にはチリひとつ落ちてない。

しからばトイレ掃除だコノヤロウ…
と思ったら、そのトイレにはフローラルな香りが漂いピカピカに仕上がっている。
もちろんペーパーの端は三角にされている。

ええい、それじゃあ朝食の用意だ…
と思いキッチンに向かうと、近づくにつれて良い香りが鼻をくすぶってくる。
こんな事を僕が起きる前にしてしまう住人はただ一人。


「おはようございます、マリアさん」

「あらハヤテ君、おはようございます」

「今日は一段とお早いですね」

「ええ。ちょっと早く目が覚めちゃったんですが、朝の空気がとっても気持ち良かったので張り切っちゃいました!」


やはり、あれらの仕事は全てマリアさんによるものだった。
「ちょっと早く」って…いったい何時起きですか?


「今日の朝の仕事は全部私がやりますので、ハヤテ君は朝食まで自由にしてて下さい。そうだ、朝の散歩でもしてきたらどうですか?きっと気持ちが良いですよ」

「え、そんな…」

「今日は私がやりたいんです。美味しい朝食作っておきますので、しっかりお腹を空かしてきて下さい!」

「スミマ…いえ、ありがとうございます、マリアさん。では、お言葉に甘えまして行ってきます!!」

「は〜い、お気をつけて!」


早速、昨日の教訓を活かす事が出来たと思う。
「ありがとう」だと、会話を笑顔で締められるんだと気付いた。

外へ出ようと扉を開けると、庭には鮮やかな桃色の髪が揺れていた。


「おはようございます、ヒナギクさん」

「あらハヤテ君、おはよう!い〜い天気ね!!」


朝の太陽に負けんばかりの眩しい笑顔。皆様ご存知、桂ヒナギクさん。
落ち着いた色のジャージと鮮やかな髪とのコントラストがとても新鮮だ。
ちなみに僕はというと…もちろんいつもの執事服。


「これからいつものランニングですか?ご精が出ますね!」

「うん。ハヤテ君はどうしたの?いつもならお掃除してる位の時間だけど…」


そう。僕たちが早朝に庭で会うのはほぼ日課となっている。
今日に限って僕の事情がいつもと違うという訳なのだ。


「ええ。今日は何もかもマリアさんがやって下さって、お時間を頂きまして…ちょっと散歩にでもと思いまして」

「そうなんだ…すごいわね、マリアさん」

「ええ、とても…」


世間話も早々に、ヒナギクさんの出発を見送ってから自分も出ようと思い、準備運動をしている姿を見守っていた。
が、なかなか彼女は出発をしようとしない。
特に訳も無いだろうと思いつつも見守り続けていたら…


「ねえ、ハヤテ君…」

「はい?」

「散歩なら、私も…一緒に行っても良いかしら?」


予想外の頼みごと。
僕としては何の問題も無い、嬉しいだけのものだが…
ヒナギクさんの日課の邪魔にならないだろうか?


「もちろんですが…僕に気を遣って言って下さっているなら、全然大丈夫ですよ。ヒナギクさんのランニングの方が大事ですから…」

「つまりはOKなのね?ありがと!!…じゃあ、行きましょっ!」


眩しい笑顔で華麗にスルー。
と同時にその白い右手が僕の左手を掴み、足早にムラサキノヤカタを後にする。


「ちょっ、ヒナギクさん」

「こんな気持ちの良い朝だもの。1秒たりとも無駄にしたくはないわ」

「そうじゃなくて!あの…手が…」


そう、僕たちの手は繋がれた状態になっている。
僕は照れてしまい、「手がどうなっているのか」を言えずにいた。
僕の言葉に彼女はハッと気付き、歩を止めて手を離す。


「あ!ゴメンね…嫌だった?」

「そそそそんな!嫌だっただなんて!!ぜぜ全然!!」


またテンパッた。が、今度は「穴があったら入りたい」よりも思うことがあった。

そうだ。むしろ手を繋いでる事にヒナギクさんが気付いて、嫌な思いをされるのが怖かった。
高い所で怖がっていた時に手を差し伸べた事はあったが、正直なところ自信は無かった。
彼女が怖がっている時になって、初めて僕に手を出す資格が出るのだという認識があったのだ。
この後の彼女の言葉が怖い。


「クスッ…このやり取り、昨日と同じ…」

「!!」


お互い目を合わせ、しばらくの間。
自分の昨日のあまりにも恥ずかしい回答を思い出して赤面する。


「……スミマセン」

「え〜。昨日のハヤテ君、とっても可愛かったのに〜…フフッ…」


ともあれ良かった。嫌悪されている訳ではなさそうだ。
と分かると、昨日からやたらとヒナギクさんのペースに乗せられて少しばかり悔しい。
ちょっと大胆な行動で慌てさせてやりたい。


「じゃ、じゃあヒナギクさん!改めて…」


と、自分の左手を差し出す。
きっと、赤面しながら手を弾くに違いな「うん、ありがとっ!」

って、えーーーーーー!?


改めて繋がれた、僕とヒナギクさんの手。
今さら「冗談のつもりでした」と言う事も出来ず、散歩は再開される。
先程とは違い、触れる手に感覚が集中してしまう。

手に集中していたせいか、さっきは感じる事の無かった違和感を覚えた。
この違和感の原因が何なのか追求すべく、失礼ながら掌を少しさする様に動かし、触覚をさらに刺激する。


「あっ…」


思わず声が出てしまった。
ヒナギクさんの掌は想像とは違い、少し硬かったのだ。
というのも、指の付け根にマメが出来ていたからだ。

きっと竹刀を振り続けて出来てしまったものだろう。
以前、生徒会の会議で疲れたと言っていた日の深夜に素振りをしてたのを見た事がある。


「やっぱり…私の手…女のくせにマメだらけで硬いよね?…ホントに嫌じゃない?」


前の質問の時とは明らかに違った空気。
きっと僕が違和感を覚えたのを察知されたのだろう。(「あっ」とか言っておいてこんな言い方もどうかと思うが)
毎日毎日真面目に剣道に取り組む彼女を想像すると、「違和感」と感じた自分がとても恥ずかしい。
なんであんな声が出てしまったんだ…

しかしながら、どうやら彼女も僕と同じく自分の手に自信が持てていなかったようだ。
僕は勇気を出して、その白く温かい手を両手で優しく握る。


「この掌は、ヒナギクさんのたゆまぬ努力の結晶で…僕は素敵だと思います」

「ハヤテ君…」

「…って、僕がそんな偉そうな事を言えたタチじゃありませんね」

「ううん、ありがと…嬉しいわ…」


綺麗だった。
さっきまでの笑顔が天に昇る朝日だとしたら、今度のは雨上がりの空だ。
雨の余韻を美しく魅せる太陽が輝いて、虹を映し出すかのごとくだ。

この人の笑顔には不思議な安心感を覚えてしまう。
こんな不幸の権化のような僕でも幸せになって良いんだと訴えかけてくれるかのような不思議な笑顔。
そんな笑顔を朝からひとり占めだなんて、今日はツイてるな〜とか思っていたら、もうアパートの近くまで帰ってきてしまっていた。
昨日に引き続き、満たされる時間と言うものは長くは続かないものだ。


「今日は…ハヤテ君に朝から時間がある日なんて初めてだったから、ワガママ言っちゃって…付き合ってくれてありがとう」

「いえいえ、ワガママだなんてそんな。僕なんかで良ければいつだって…」

「……ホントに〜?」


ヒナギクさんの瞳は「また無責任な事を言って…」と言っていた。
こーゆー所を直さないといけないんだろうな〜。


「スミマセン…」

「気にしないで。ちょっとイジワルしただけ…さ、マリアさんの美味しい朝ごはんが待ってるわよ!」

「そうですね…あ、ヒナギクさん」


朝食前に着替えに向かう彼女を呼び止める。
また僕は言うべき事を言ってなかった。


「ん?何かしら?」

「今朝は僕も楽しかったです。…ありがとうございました」

「ハヤテ君が楽しいって思ってくれたなら、こんなに嬉しい事は無いわ…じゃ、着替えてくるわね!」

「ハイ、ではのちほど…」


昨日の教訓を活かせた所を見せる事ができたと思う。
上機嫌な足取り(たぶん)で自室に向かうヒナギクさんを見送る。

良い朝だったな〜。マリアさんありがとうございます。
今日も良い事ありそうだ。(←もう起きている)
さて、今日こそはお嬢様とアーたんを起こして久々にみんな一緒に朝食だ!!(ちなみに現在13連敗中)

彼女につられ、僕も上機嫌な足取りでねぼすけなご主人様とお姫様を起こしに向かったのだった。


つづく


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前回せっかく使ったので、ナギナギ体操ネタを挟んでみました。
「ヒナヒナ体操」…なんともヒナらしいネーミングになったから言わせてみました。
何の曲に合わせて踊るんでしょうね?笑

本編ですが、ハヤテ・ヒナギクにお互い「手」に対してコンプレックスを持たせて、手繋ぎイベントをより甘くしたつもりです。
何に対しても妥協ゼロのヒナの手は、かなりたくましくなってるんじゃないかと勝手に想像してます。

これでもまだハヤテも「好きな人」は、ヒナではありません。ので、ヒナに惚れてしまうイベントまではラッキーな展開が続きます。
ハヤテが羨ましいですね。


ご感想・ご指摘お待ちしております。
それでは、お付き合い頂きありがとうございました。