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対象スレッド 件名: Re: しあわせの花(ハヤヒナ)【第6話更新】
名前: ロッキー・ラックーン
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Re: しあわせの花(ハヤヒナ)【第6話更新】
日時: 2011/12/01 18:20
名前: ロッキー・ラックーン

こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
書きたい事をダラダラやってたら時間もかかって、かなりのボリュームになってしまいました。
今回が暫定最終回といった感じです。
それではどーぞ!


------------------------


「「「「「ほーれ、チューウ!チューウ!!」」」」」


眼前に広がるは、ついさっき恋人になったヒナの美貌。
目を閉じて、僕からのキスを今か今かと待っている。
いやぁ〜、かんわぃぃいいいなぁぁああ〜〜…


…って、なんでこんな事になってるんだーーーー!?





     第7話【 愛と情熱のカルナバル 】





「そろそろ、帰りましょうか?」

「うん」


公園からの帰り道。
僕たちは手を繋いで(指を絡ませた、いわゆる「恋人繋ぎ」ってヤツです)寄り添って歩いていた。

ああ、僕は本当にヒナギクさんの恋人になったんだ…
夢みたいだな…
僕みたいなほんとしょーもない男がうんぬんかんぬん…


「…テくん?…ハヤテ君!!」

「ヒャイ!?」


急に大きな声で呼びかけられ、驚いてしまった。
そうだ、余韻に浸るんじゃなくて今この時を楽しまないと…


「スミマセン、ボーっとしてました」

「んもう!せっかく一緒に歩いてるのに他の事考えてたの!?」

「…ハハハ、スミマセン」


他の事というか、貴女の事なんですけどね。
…って言ったらまた怒られそうだから謝っておく。


「それで、お話は?」

「あ、そうそう。あの…ね?えーっと…」


僕が話を振ると、ヒナギクさんは赤くなってモジモジし出した。
…そんな素振り見せられると僕も緊張しちゃうじゃないですか。


「私の事…『ヒナ』って、呼んで欲しいなぁ…って」

「…え?」

「だ〜か〜ら〜…『ヒナ』って呼んで欲しいの!!…敬語だって他人行儀だし、もっと軽い感じで接して欲しいの!」

「そ、そうですか…?」


むむむ…
ヒナ…って、メチャクチャ照れくさいんですけど!!

だけどもだ・け・ど!
これならヒナギクさ…ヒナとの距離がグッと近づいた感じだよな…
勇気を出すぞ!!


「ヒナ」

「!!」

「ヒナ…ヒナ「分かったからもう良いわよ!」


なんか呼んだ僕より呼ばれたヒナの方が照れているような…ま、いっか。
じゃあ、今度は僕の番で…


「じゃあ、僕の事は『ハヤテ』と呼んでくださいね?」

「うん、もちろんそのつもりよ?…よろしくね、ハヤテ!」


うおっ!カワイイ!!
恥ずかしがると思ったら、返り討ちに遭ってしまった。


「ヨ、ヨロシクデス」

「なに恥ずかしがってるのよ…?」

「…ヒナが…カワイイから…」

「もう…ありがと、ハヤテ」


うん。改めて言おう、幸せであると!
これからの日々が楽しみで仕方ない。


「あ、そうそう…帰ったらお嬢様たちに紹介させてもらっても良いですか?」

「それはもちろん良いけど…まだ敬語なの?」

「うーん…なんかちょっと馴染まなくて…」


ヒナ…はなんとか呼べるけど、タメ口(というか、生まれは僕の方が早いけど)はなんかまだしっくり来ない。
我ながらおかしなお話だ。


「そーゆーもんなのかしら…?まあ、ハヤテのペースに任せるわ。まさか、死ぬまで敬語使うつもりでも無いでしょ?」

「ゔっ…もちろんですよ!」


多分、ヒナは「死ぬまで一緒だ」と言いたかったのかもしれない。
しかし、それは僕には「死ぬまでの時間なんてのはとても短くて、ヒナと一緒にいられる時間なんて本当にわずかなものだ」と聞こえたような気がした。
この幸せな時間、僕は一瞬たりとも無駄に過ごしてはいけないのだと勝手に思った。

…と言ってもすぐに敬語を直すというワケではないのですが。(台無し)

それはさておいて、帰ったらまずは皆さんに報告だ!
どんな言い方にしようかな〜…

アパートまでの帰り道、僕は隣にいるヒナの少し不満そうな顔に気付こうともせずにニヤニヤしていた。
公園で「事」を済ませておけば良かったのだと後悔する事も知らずに…


・・・


「ただいま帰りました〜」

「おかえりなさい、ハヤテ君、ヒナギクさん…ナギがお部屋で待ってますわよ?」


帰って一番最初に迎えてくれたのはマリアさん。
ココで一発目の報告と行こうかと思ったら、先にお嬢様の方に行くようにと目配せが…
待っててください、マリアさん。僕はやりましたよ!!


「ハイ、ではすぐに向かいます。ヒナ」

「うん…」


マリアさんの前で、ヒナと呼んでみた。
二人きりの時より恥ずかしい。マリアさんの反応を見ようと思ったが、恥ずかしかったので振り返らずにスタスタとお嬢様の部屋へ向かった。


「お嬢様、ただいま帰りました」

「うむ、入っていいぞ!」

「ハイ、では…」


部屋に入ると、やはりそこにはアーたんも一緒だった。
軽い既視感を覚える光景。違うのは、僕の横にヒナがいる事くらい。


「ん?ヒナギクもいるのか?」

「ええ。…いいかしら?」

「ああ、別に構わんが…なんだハヤテ、話でもあるのか?」


あれ?お嬢様が呼んだんじゃなかったですか?
それにわざとらしいボケ…また何かあるのかな…?


「お嬢様、アーたん…報告します。僕はこちらの…桂ヒナギクさんと、お付き合いさせて頂く事になりました」

「ナギ、アリス…改めてよろしくね」


特に打ち合わせもせず僕の言葉に合わせてイイ感じにつなげてくれるあたりはさすがヒナ。
さて、この二人はどんな反応をしてくれるのかな…


「「…ぷ」」

「「ぷ?」」

「「プハハハハハハハ!!」」

「「!?」」


大爆笑ですと!?
いったいぜんたいどんな展開なんだ!?


「え?ハヤテがヒナギクと付き合うのか?バカも休み休み言え。ハハハハ!」

「ヒナもそんな冗談に付き合うだなんて!?そんなまさか!!フフフフフ!」

「ハハハ…おーい、マリア!面白い話があるぞ!!」

ガラッ

「ハイハイ、何でしょう?」

「ハヤテが!ヒナギクと!付き合うんだとさ!プハハハハ!!」

「え!?才色兼備のスーパー美少女のヒナギクさんがハヤテ君と?クスッ…それは面白いご冗談ですね…」


なんか訳の分からない展開だけど、コレって僕がバカにされてますよね…
もしかして…ハメられた?何か騙された?
いや、この人たちに限ってそんな事!!


「ちょ、ちょ、ちょ!!待ってください!」

「なんだ?」

「コレは冗談なんかじゃなくて本当に…「「「ハハハハハハ!」」」

「まだそんな事言ってるのか、面白いヤツだな〜ハハハ」


えええ!?全否定!?
ヒナの方を見ても全く訳の分からなそうな顔をしてるし…
どーゆー事だ!?





--それなら…証拠を見せれば良いのよ!!--





「ムム、なにやつ!?」

ガラガラガラッ

「ヒナさんとハヤテ君の仲をバカにするような輩は許さない…ラブマイスター・ウエストよ!」

「私はそのついでだ」


と、押入れの中からズリズリと出てきたのは西沢さんと、千桜さん。
なんかイヤ〜な予感がしてきたぞ…


「ハヤテ君、口で言って信じてくれないならどうやって説得すればいい?そう!行動で示せばいいの!」

「はぁ…」


質問しといて僕の答えは聞かずですか。
「行動」って…もしや…


「だからここで、ハヤテ君とヒナさんが両想いである事を…皆に見せてあげて!!」

「そうだな、証拠を見せられたら私たちも文句は言えんな、アーちゃん」

「ええ、グウの音も出ない証拠を見せられれば仕方ありませんね、マリアさん」

「そうですね、では見せてもらいましょうか?ハヤテ君、ヒナギクさん…」

「「え゙っ…!?」」


うん、分かった。
僕たちハメられてました。


「いや、その、証拠とか言われましても僕たち」

「「「「「ほーれ、チューウ!チューウ!!(手拍子つき)」」」」」(以降ずっとチュウコール)


うおっ、何だこの息の合ったコールは!?
しかも「証拠」がいつの間にか「チュウ」にすり替ってるし…



って、まだヒナとはキスもしてないじゃないかーーーーーーーーーーーーー!!



まさかファーストキスをこんな皆の見てる前で!?
僕は良いとしても、ヒナが絶対に嫌がるに「イイ…よ?」
ってえええーーーーーーーーーー!?


「いいんですか、ホントに?」ヒソヒソ

「だって、こんなに煽られて、期待させといて出来ないなんて悔しいじゃない…」ヒソヒソ

「でも、ホントに最初なのに…」ヒソヒソ

「大丈夫。みんな、私たちの事を想って…喜んでくれてるわ。むしろドンと来いよ…」ヒソヒソ

「ヒナ…」ヒソヒソ


たしかに、皆さん僕たちの為に集まってきてくれた。
やり方はちょっとえげつないけど…応えたい、この気持ちに。
僕は決心し、スクッと立ち上がる。

パン!パンパンパン!  (チュウコール終わり)
↑タ●リさんの手拍子を締めるアレです

うわ、皆さん息ピッタリ…
まさか僕がコレやると読んでた…?
それはさておき…


「皆さん、今日は僕たちの為にお集まり頂き、ありがとうございます」

「そんな事より早くチュウ見せろー!」←ナギのヤジです

「オホン!今宵、貴女たちは…僕、綾崎ハヤテと…彼女、桂ヒナギクの『はじめて』の瞬間に立ち会います…皆さん、しかと目に焼き付けてください!」

「「「「「オーーーー!」」」」」

「コールお願いします!」

「「「「「チューウ!チューウ!!」」」」」


スゴイ、皆さんノリノリ過ぎる。
さて、ヒナはというと…既にスタンバイOKだーー!(ズコー)

目を閉じて、僕からのキスを今か今かと待っている。
それにしてもカワイイ、カワイすぎる!!

見惚(みと)れてしまってた僕は我に返り、慌てずゆっくりとヒナの頭とあごに手を添える。
もうコールも耳に入らない。
半径数十センチだけど、僕たち二人だけの世界が出来る。

行くよ、ヒナ…


・・・

「「「「「フォーーーー」」」」」(←海外コメディドラマのキスシーンのノリで)


何秒…何十秒唇を重ねていたかは覚えてない。
ただ、初めて味わうヒナの唇の柔らかい感触が、天にも昇る嬉しさを僕の心にもたらしたのだった。


「ヒナギク…」

「ハヤテ…」


目を合わせて互いの名前を呼び合う僕たちは、周りの目も忘れてその気になっているのだった。
お粗末さまでした。


「おーい、二人とも戻ってきて〜!」

「「!!」」


西沢さんの声に、すっかりスイッチの入ってしまっていた僕たちは我に返った。
いかんいかん…完全に魅入ってしまっていた。
ヒナの顔なんてもうまっかっかだ。


「まあ、なんとゆーか…ごちそうさまだ」

「「////」」

「今回は、『普通に祝っても面白みに欠ける』というアーちゃんの意見に、ここにいる全員が同意してこうなったワケだ」

「ぶい!ですわ」


笑顔でVサインを僕たちに送るアーたん。
なるほど、見事な小悪魔っぷりですね。


「いやぁ〜、僕たちマジで初めてだったんですよ〜?」

「なに!?帰ってくるまでに一発かましてきたんじゃないのか?」

「ナギ!そんなはしたない言葉を使って…」

「チュウの話だよ、マリアは耳年増だな…初めてなのは悪かったな。まあ、アレだ。これから二人でこれ以上の思い出を作っていってくれ」

「お嬢様…」


お嬢様の口ぶりからは多少の申し訳無さが伺える。
ホントに帰ってくるまでにしてきたと思ってたんだな…

「これ以上の思い出」…多分、作れる。
いや絶対作って見せましょう!!


「ヒナギク…ハヤテをよろしくな」

「ナギ…」

「こいつは…鈍感で、デリカシーも無くて、イライラする時もあるだろうけど…本当にお前の事を愛してると私は思う。それに、これまでたくさん辛い目にもあって来た…お前の力で、ハヤテを幸せにしてやってくれ!」

「ええ、もちろんよ!」


お嬢様…本当に僕の事を想ってくれているんだな…
辛い目にはたくさんあいましたけど、お嬢様に拾ってもらってからは十分幸せでしたよ。


「ハヤテ君」

「西沢さん…」

「ヒナさんはね、普段は強く見えるけど、ハヤテ君の事になるとホントに全然ダメな…ただの女の子なの。ハヤテ君がそばにいないと、不安で、寂しくて仕方ないの。だから…たくさん、たくさん愛してあげてね。ハヤテ君の『ヒナさんが好きだ』っていう気持ちを伝えて伝えて、伝えまくってあげてね!」

「はい、それなら…『ヒナが好きだ』という気持ちなら、誰にも負けません」


西沢さんも、本気でヒナを想っている。
こんなにたくさんの人に想われてる僕らの恋は、きっともう二人だけのものでは無いのかもしれない。
皆さん、僕たちはきっと幸せになります。
「しあわせの花」の名を持つヒナと一緒だ。幸せになれないわけが無い!


「よ〜し、しんみりムードもココまでだぞ!…マリア!」

「はいは〜い、お待たせしました♪」


なんか見覚えのあるやり取りだと思ったら…今回は既にグラスに注いである状態でお盆を持ってきたマリアさん。
やっぱり宴会ですね。


「ちょっ…ナギ!ダメよ、お酒なんて飲んじゃ…「ハイハイ、乾杯の音頭は…失恋ハムスター、頼んだゾ!」

「ええ〜っ、ナギちゃんがそれを言うかな〜…まあ、いっか。んでは、ラブマイスター・ウエストから、乾杯前の一言を!」

「「「「ヒュー!!」」」」(←ノってないのはハヤヒナで)


(絶妙な間)


「…ハヤテ君、まだ諦めてないからねっ♪」(←超本気な目線をハヤテに)

「「「「「「・・・」」」」」」


(凍結した間)


「カンパーイ!!」

「「「「「「カンパーイ」」」」」」


・・・


「それにしても流石だなハムスター、完全に空気が凍ったぞ」

「フフフ、甘いよナギちゃん。私が本気を出せば、あそこでカラダごとハヤテ君に差し出す事さえ…」

「あーそーか、すごいな」

「ぐぬぬ、なんかすごくバカにされてるような…」


・・・


「ハヤテ君、良く頑張りましたね」

「マリアさん、ありがとうございます」

「告白は自分から行ったんですか?」

「ハイ、でもちょっとアクシデントがあって…結局はヒナに助けられました」

「まあまあ、呼び方まで変わって…本当に幸せそうですね〜」

「いやぁ〜、ハハハ…」

「ハヤテ君も取られちゃったし、私も新しい恋を探して、幸せ作らないといけませんね〜」

「えっ?それってどーゆー…」

「フフッ、こっちの話です。さ、もっと飲みましょう♪カンパーイ!」

「か、カンパーイ」


・・・


「ちょっと、ハル子までこんなもの飲んで!生徒会役員としての自覚が…」

「オイオイ、ヒナ。これは酒なんかじゃなくてジュース(笑)だ。決して生徒会の一員としての自覚が無いわけではない」

「なによ、(笑)って!?」

「ほら、マリアさんなんてもうグラス空けてるぞ。ここら辺の違いが発育に差が出てくるんじゃないか?」チラッ

「んなっ…このくらい…私だってこのくらい空けられるわよー!!」グイグイッ

「おっ、イイ飲みっぷり!…マリアさん、追加お願いしまーす!」

「はいはーい、お任せください!」

「プハッ…どーお、ハル子?これでも私の発育が悪いって言えるかしら?」

「まあまあ、そのお話はコレ(追加分)を飲んでからにしようじゃないか」ドンッ

「いくらでもかかって来なさい!」

↑のやり取りを×10回くらい


1時間後・・・


「プラ●トの歌姫やお江戸のアイドルがなんぼのもんじゃーい!私の歌を聴けーーー!!」

「「「やんや、やんや!」」」


なぜか白皇生徒会長リサイタルが開催される始末に。
それにしてもヒナ、かなりギリギリな発言を…


「ヒナギクさん、だいぶアレしてらしてるのに、綺麗な歌声ですね…」

「そ、そーですね…」


プ●ントの歌姫もとい、一人カラオケがご趣味のマリアさんにはヒナの歌はどう聴こえてるのだろうか?
そんな非常にどうでも良い事を考えてると…


「ちょっと、マリアさん!!」

「え゙っ…ヒナギクさん、なんでしょうか?」

「いつまで私のハヤテをたぶらかしてるんですか!?ハヤテを誘惑してるのは…コレですかっ!」ムニッ

「ひゃんっ!!」


まさかヒナ、そこまでキているとは…
あの姉あって、この妹ありという事なのか〜!?
ってそうじゃなくて止めないと!


「ちょっ!ヒナ…「こんなけしからん胸を使って!許しませんよ!!」ムニムニッ

「や、やめてくださいヒナギクさん…ぁん…」

「い〜いですね〜、マリアさんは。こ〜んな素敵なモノをお持ちで…ハヤテ!!」

「は、ハイっ!」


うおっ、次のターゲットは僕か。
一体どんな言いがかりを…


「私の胸じゃ物足りないって言うの!?自分から告白してきたくせに!!」

「ゲッ…」

「どーなのよ!?答えなさいよ!」


物足りないもヘチマも、まだ見た事だって無いじゃないですかー!(←ウソ OVA参照 というか思いっきり触った事もありましたね)
むむむ…しかしココで彼氏ならば、ヒナのプライドを尊重しつつ場を収める妙案を思いつくはずだ!

…ひらめいた!


「ボソボソ…」

「ひゃい、よろこんで…」ドサッ

「「ヒナ(ギクさん)!」」


軽い爆発音を聞こえさせるようなセリフと共に倒れてしまった。
やっぱり少々刺激的だったかな…?


「ハヤテ君、ヒナギクさんになんて言ったんですか?」

「ゔっ…禁則事項です…」

「ふ〜ん、私には言えないような事なんですね〜」ニヤニヤ

「ははは…」


そりゃあ言えるわけありませんよ。
「ヒナの胸の事、良く知らないから今度二人っきりの時に確かめさせてね」だなんて…
目が覚めたら記憶が無い的なノリで頼むぞ、作者!(←知りません)

おっとと、寝てしまったヒナを放置したままだった。
僕は彼女の部屋に運ぼうと、抱きかかえる。


「おっ、ハヤテ!もう『お持ち帰り』か〜!!お盛んなこって!」

「まあまあ、ナギちゃん!そんな無粋な事を言うでないよ。ココは爽やかに見送って、一人身同士、語らおうじゃあないの!」

「違いますよ〜!ベッドまで運んであげるだけですって…では、ちょっと失礼します」


もう部屋にいる全員が出来上がってるようだ。
基本的に発言がお下品な事になっている。
とりあえず、ヒナを運ぶべく部屋から退散する。


「ハヤテ君、勢いに身を任せるのは決して悪い事ばかりじゃないからね〜…」


西沢さん、部屋の外からでも聞こえる音量で…

さて、ヒナの部屋に到着し、ベッドに寝かせて布団をかけてあげた。
うん、寝顔も本当に愛らしい。
…よく考えたら、コレも「二人っきり」といえばそうだ。

いかん!煩悩が頭を支配してきたぞ…
いかんいかん!寝てる相手になんやかんやなんて、鬼畜の所業じゃないか…
いかんいかんいかん!でもキスくらいなら…

ってバカ野郎!
自分で自分の頭をボカンと殴り、部屋を後にした。


「いくじなし…」ボソッ


扉を閉める音に混じったヒナのつぶやきが僕の耳に届く事はなかった。


・・・


お嬢様の部屋に戻る前に、頭を冷やすべく中庭に来て夜風に当たっていた。
鮮やかな満月が照らし、今日という日を祝福してくれているかのようだ。
月明かりの落ちる縁側で、考えるのはやはり彼女の事だ。
考えても考えても尽きる事は無い。


「綺麗な月ね…」

「!!?」

「あらあら、お化けにでも遭遇したような顔をして…」

「あ、アーたん!?」


ビックリした。
ココにいるのは僕だけのはずだったからか?それもある。
でももっと驚いたのは、僕に声をかけた人物の姿に対してだ。


「ええ、そうですわ。…なぜか元に戻ったようで」

「そうなんだ…あの、その…」


アーたんが元の大きさに戻っていたのだった。
そういえば宴会中に発言が無かったと思ったら…

その姿を見た瞬間、色んな…本当に色んな事が頭を駆け巡り、何から話せば良いか分からなかった。


「ヒナとの事…おめでとう」

「アーたん…」


僕から言い出しにくい雰囲気が伝わったのか、一番伝えなければいけない事を彼女から振ってくれた。


「うん、ありがとう。…でも、その…」

「これは予言なのですが…」

「?」

「そんなに遠くない未来に…貴方が原因で、ヒナは辛い目に遭うかもしれません」

「えっ!?」


いきなり何を…?
唐突な発言に面食らって、脳みそが整理出来ない。
ヒナが辛い目に?僕が原因?


「それってどーゆー…」

「その時には、ハヤテ。貴方がヒナの側についていてあげるのです。何があっても決して諦めず、ヒナを守るのです」

「そんな事を言われても…」


全く意味が分からないし、そんな時に厚かましくも側にいてあげるなんて…僕に出来るのか?


「ヒナは絶対に貴方を信じ続けます。貴方もヒナを信じて…そうすれば必ず乗り越えられます」

「何がなんだか良く分からないけど、ヒナを離さなければ良いの?」

「ええ、何があっても」


ヒナが僕を信じてくれるのならば、僕はヒナを信じるだけだ。口で言うだけなら簡単だ。
多分、アーたんが言おうとしているのは、とびっきりヤバイ状況の事なのだろう。
その時、僕がヒナに何が出来るか?僕の想いが試される訳か…。


「こんな予言、当たらなければ良いに越した事は無いのですが…絶対ですわよ?」

「うん、頑張るよ」

「私も…貴方たちの幸せを望んでいるうちの一人です。だから必ず二人で幸せになってくださいね」

「ありがとう、アーたん…」


初恋の相手から次の恋の相手との事を応援されている。
こんな珍しい現象も、ヒナの人柄の良さを考えれば納得が出来る。


「さて、これからの事は明日考えるとして…私は先に休みますわ」

「うん、おやすみアーたん」

「おやすみなさい、ハヤテ」


僕の奇妙な初恋はこれで幕を閉じた。
ありがとう、アーたん。


・・・


「ただいま帰りました!」

「遅いぞハヤテ…まさか!?」

「ちっ、違いますよ〜!!縁側で夜風に当たっていたんです!!」

「あれ〜、何が違うんだ〜?私は『まさか』としか言ってないぞ?」

「なるほど、熱く火照ったカラダを冷ましていたワケだね?」

「西沢さんまで〜…」

「まあまあ、二人ともそのへんにしておけ…さて綾崎君、本人もいなくなった事だし、存分にヒナについて語ってもらおうか。コレまで私の出番が無かった分までな」

「千桜さん…」


そういえば初登場だったかと、変な事を考えているうちに僕のグラスには液体がなみなみと注がれているのに気付く。
えーい、今夜は燃え尽きるまでやってやるぜ!!

この夜、僕は皆にヒナの好きなところを108個知らしめたのだった。




翌朝・・・


「おはよう、ハヤテ!う〜ん…今日も気持ちの良い朝ね!」

「おはよう、ヒナ!」


いつもの風景。いつもの朝の挨拶。
これまでと違う僕らの関係。
太陽の光がさんさんと降り注ぎ、僕らの新たな生活を祝福してくれているようだ。


「今日も一日、頑張りましょうね!」

「ハイ!」

「そういえば昨日…私何か変な事言ってなかった?歌ってた後からの記憶が無いの…」

「え゙っ…大丈夫です!何も言ってなかったです!!」

「何よ、『え゙っ』って!?ホントの事を言いなさいよ!」

「まあまあ…そうだ、こんな良い朝は無駄にしちゃいけませんよ!今はランニングの方が大事です!」

「んもう!…今度二人っきりの時、楽しみにしてるからね」ボソッ

「////」


しっかり記憶があるじゃないですか…。
でも、覚えててくれたという事は…ウェヒヒ…


「もう!朝からだらしない顔しないの!!…じゃ、行って来るわね〜!」

「はーい、お気をつけて!」


その愛らしい背中を見送る。
毎日やっている玄関掃除がやけに新鮮な感じがしたのは、きっと気のせいではなかった。

「しあわせの花」…まだ僕はそれを手に入れただけ。
手に入れたその花を、どれだけ大きく美しく咲かせる事が出来るか…
僕たち二人の日々は、まだ始まったばかりだ。


------------------------


ちなみに・・・


「アレ…アーたん戻ってる!?」

「え?どういう事ですか?」

「昨日の夜は大きくなってたんだよ」

「そうですか…どおりで記憶が無いかと…」

「一体なんで戻ったんだろうね?」

「う〜ん、なぜか知らないのですが満月の夜の記憶が全然ありませんわ。…ひょっとしたら何か関係があるのかも」


翌月の満月の夜、そこには大きな胸を揺らして走り回るアーたんの姿が…
って、どこのサ●ヤ人ですか。


いったんおわり


------------------------


【あとがき】

とりあえず、「ハヤテの片想い」のパートは今回で終了です。
でも!まだまだこの設定でやりたい話はあるので終わりません。
次回以降は時系列を戻して、ヒナ(か別の人)目線の話をやろうかなと思ってます。
要所要所のヒナの思ってる事を明らかにするつもりです。


さて、今回も長ったらしいので解説もやたらとボリューミーな感じに…

・タイトル
ヒナのキャラソンからです。「宴」→「祭り」→「カーニバル」といった連想です。(「カルナバル」はカーニバルのラテン語読みだそうです)
まあチュウもしてるし、「愛」も「情熱」もありますよね?笑

・呼び方
呼び方まで変わると本当に二次創作っぽさが出てきますね。
ちなみにチュウの後の「ヒナギク…」というセリフはハヤテが本気でスイッチ入っちゃってるからです。

・茶番再び
裏設定として、歩がナギの漫画を読みに来てました。
住民+歩でお祝いの準備をしています。
登場キャラが多くなると、セリフで判別できるようにするのが大変でした。
ちなみにハヤテの千桜さんへの呼び方は「春風さん」だったと思いましたが、一度間違っちゃったんでそのまま「千桜さん」で通してます。特に影響無い関係の二人なので。

・宴会再び
ジュース(笑)です。未成年の飲酒はダメですよ〜。笑

・マリアさん
特にこれまで話に絡ませませんでしたが、まあハヤテが好きだったとゆーことです。
一話くらいマリアさんの話をやろうかななんて思ってます。

・ヒナ酔い
ヒナもお祝いされて最高にハイ!ってやつになってしまってるだけです。笑
雪路のしょうもなさと、伊藤静さんのお触り癖(があると言われてます)を合わせた感じに…
ちなみに…
プラ●トの歌姫→マリアさん
お江戸のアイドル→歩
にかかった中の人ネタでした。

・アーたん(大)
この人との関係をきっぱりさせないとハヤテの恋は始まらないと思ったんで無理矢理登場してもらいました。
「アテネ」の時は「アリス」の記憶はあるけど、「アリス」になると「アテネ」の記憶が消える設定です。
「予言」うんぬんはフラグ立てっぱなしで終わる可能性もあります。「予言が外れた」という形で…
とにかくアテネがハヤヒナを応援してくれるというシーンを書きたかったんです。
サイ●人みたいな設定はこれからもちょくちょく出せるようにしたかったからです。


かなーりごちゃごちゃとした感じになってしまいました。
「ここの部分どーなのよ?」とかあればご遠慮なくどーぞ。
ご感想・ご質問などお待ちしております。
ありがとうございました。