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対象スレッド 件名: NOTICE(ヒナ誕生日記念)
名前: ロッキー・ラックーン
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NOTICE(ヒナ誕生日記念)
日時: 2013/03/05 01:34
名前: ロッキー・ラックーン

こんにちは、ロッキー・ラックーンです。
今回はヒナ誕記念のお話です。
2日も遅れてしまいましたが、なんとか形に出来たので投稿しました。
ヒナ、おめでとう〜!

原作10巻の誕生日の夜の続きを妄想した作品になっています。
それではどーぞ!





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「だ、ダメよ!!知ってるでしょ!?私が高い所苦手な事!!」

「僕がしっかりつかんでいますから。目を開けて見てください」



少し力を込めて私の手を握る彼の手の温もりにうながされ、おそるおそる…だけど確実に私は目を開く。
眼前に広がるは、私の母校、私の住む街、それを空から見守る月と星。
決して広い世界ではないけれど、私の「今」を表すには十二分な景色だった。



「…すごい」

「この風景は初めて会ったとき、ヒナギクさんが僕に見せてくれたものなんですよ」



ハヤテ君との出会い。もちろん、今でも鮮明に覚えている。
あんまり格好良くはなかったけど…。



「理由はあったかもしれないし、なかったかもしれません。人から見るとずいぶん不幸に見えるかもしれませんし、心に深い傷があるのかもしれません」



遠い目をして語る彼は、きっと自分の両親の事を思っているのだと思う。いや、そう思いたい。



「でも…今いる場所(ここ)は、それほど悪くはないでしょ?」

「……」



今、ようやくわかった。
私…この人の事がスキなんだ。

でも、スキになると…いなくなってしまう気がする。
そんな想いが、どこか怖くて…



「私…バカだな…」

「へ?」

「この景色と同じ。側にあったのに…怖くて見られなかったなんて…」



多分、無意識のうちに意識しないでいた。なんか矛盾してるけど、きっとそうだった。
私はハヤテ君がスキ。
こんな簡単な事に今まで目を向けられなかったのは、いなくなってしまうのが怖かったから。



「今も…怖いですか?」

「……怖いわ。でも…」



大好きだった両親が消えてしまった心の傷はまだある。
それでも、握られた手の温かさが私に勇気を与えてくれたような気がした。
以前ナギが(なかば無理矢理)貸してくれたマンガで、「勇気とは怖さを知ることだ」と言っていたのをなんとなく思い出した。



「悪くない気分よ」



月明かりがふんわりと照らす彼の顔は、勇気とは別の胸の熱さを私に覚えさせた。





     【 NOTICE 】





「もう日付けが変わってしまいましたね…遅くなってしまって本当にスミマセンでした」

「いいの。気にしないで…」



学校からの帰り道。私の家までの道のりを、ハヤテ君が付き添ってくれていた。
ナギから貰った腕時計は、0時15分頃を指し示している。
そこから逆算すると、私はあのテラスで30分近く景色を眺めていたようだ。
あんなに高い所だというのに、自分で自分が信じられないくらい心地の良い時間だった。



「ハヤテ君」

「はい?」

「ハヤテ君にとって、『今いる場所』っていうのは…どんな所なのかしら?」

「僕にとってですか…」



なんとなく、テラスでの言葉を思い出して出た言葉。
私の質問に、遥か上空にある月に相談するかのように上を向くハヤテ君。
入念に言葉を選びながら、少しずつそれを口にしていく。



「僕にとっては、今いる場所が僕の全てなんです」

「全て?」

「ハイ。両親にとって僕は借金のカタで済む存在ですし、兄にとっては言う事を聞けないダメな弟でした。…家族以外で初めて出来た大切な人を傷つけてしまった事もあります」

「……」



大切な人という言葉が少し気になったけど、私はうなづいて話の続きを促す。



「だから、兄には見捨てられ、両親には売り飛ばされて、大切な人とは二度と会えなくなってしまいました。人は僕の事を不幸と言いますが、僕にとってはそれが当たり前…大切な人を大切に扱わなかった事への報いだと思っていました」

「そんな…」



思わず声が出てしまった。
人は成功の何倍もの失敗を繰り返してやっと成長するものなのに、そんなのはあまりにも酷すぎる。



「でも…」

「?」

「お嬢様に出会って、僕の人生は変わりました。家族や友達…守りたいと思うものがたくさん出来ました。…もちろん、ヒナギクさんもその中の一人です」

「……」



私の目を見て笑いかけるハヤテ君。
はからずも、その笑顔にときめいて思わず顔を背けてしまう。



「だから、与えられた『今』が僕の全て。今を精一杯大切にして生きていかないといけないんです。こんな僕だからこそ…」

「そう、なんだ…」

「なんだか、熱く語ってしまいましたね。スミマセン…」

「ううん。ハヤテ君の事、少しだけ分かった気がするわ」



照れ隠しに頭を掻くハヤテ君の顔はとても幸せそうで、彼の「今いる場所」がどれだけ充実したものであるかが見て取れた。



「ありがとう、ハヤテ君」

「ありがとう…ですか?」

「うん…ありがとう」



誕生日を祝ってくれた事、人をスキになる勇気をくれた事、今ここにいてくれる事…ハヤテ君の顔を見ていたら、言わずにはいられなかった。



「では…どういたしまして、ヒナギクさん」

「……」



また、胸が熱くなってる。ハヤテ君の笑顔から、目を離す事が出来ない。
きっと、これが恋…。



「ハヤテ君…」

「はい?」





告白…しちゃおうかな…





と考えた瞬間、私の脳裏に一人の少女の顔が映った。
いつも自信無さげに振舞いながらも、彼への気持ちは紛れも無く本物で…。
今ならばもう分かる。私もおんなじだったんだって。



「……」

「…ヒナギクさん?」

「あ…ごめんね。なんでもないの。さ、早く行きましょう?」

「あ、ハイ。そうですね、急ぎましょう」



これで良かった。今日のところは。
まずは、彼女に話そう。「私もハヤテ君がスキ」だって。
それが、私の「今いる場所」ですべき事なんだと思った。









「家まで送ってくれてありがとう、ハヤテ君」

「いえいえ…。ではおやすみなさい、ヒナギクさん!」

「おやすみなさい。気をつけて帰ってね!」

「ハイ。では…」



ウチの玄関先で、ハヤテ君の姿が見えなくなるまで手を振る。
大好きな彼の笑顔が明日も見られるといいな…。

ふと、ポケットからプレゼントのクッキーを取り出して、ひとつ食べた。



「美味しい…」



料理上手な彼の作ったものだから、まずいはずも無い。
それよりなにより、私の事を想って作ってくれたのかと思うと、お腹以上に心が満たされた。

お父さん、お母さん。
私ね、好きな人がいるの。…大好きな人が。
それって、素敵な事だよね。
…きっと、そうよね?



「スキだよ、ハヤテ君…」



今日という忘れられない一日を見守ってくれていた月に向かって、ぽつりとつぶやいた。



おわり


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【あとがき】

ヒナ誕生日の帰り道のお話でした。
完全オリジナル展開として、告白までさせちゃおうか悩みましたが、最終的には原作に準じた形になりました。
ハヤテの借金への認識。ヒナの歩への律儀さを考えたら告白ルートへは行けませんでした。

ハヤテの言う「大切な人」→アーたん
ヒナの思い出した少女→歩
です。一応…。

最後のモノローグは、アニメ2期13話のものをそのまま使っています。
あのくだりは大好きで、初めて聞いた時はホントに感動したものです。懐かしい。

「勇気とは〜」のくだりはジョ●ョ1部のセリフです。

あと、細かい所ですが「この景色と同じ。側にあったのに…怖くて見られなかったなんて…」のセリフ。
原作だとヒナは「見れなかったなんて」と言ってますが、アニメではら抜き言葉が修正されてます。
頭の良いという設定のヒナという事で制作様が手直ししたのか、はたまた伊藤静さんのアドリブか、とりあえず印象に残ったセリフでした。


さて、今回多用したワード、「今いる場所(ここ)」。
ハヤテにとって、過去は拭い去りたい負の遺産、未来は「今」を生きた延長線上という考え方から、今が一番大切といった形になりました。
キザなセリフだなと最初は思いましたが、今では大好きなセリフです。


長くなりましたが、こんなところで失礼いたします。
ご感想・ご質問などお待ちしております。
ありがとうございました!