文章チェックフォーム 前画面に戻る

対象スレッド 件名: 竜狐の対決 第4章
名前: 双剣士◆gm38TCsOzW.
誤字を見つけたら
教えてください

悪戯を防ぐため
管理人の承認後に
作者に伝えます
誤った文字・語句 
          ↓
正しい文字・語句 
【参考】対象となる原文

竜狐の対決 第4章
日時: 2013/02/08 06:56
名前: 双剣士◆gm38TCsOzW.

 こうして不本意な形で時の人になった桂ヒナギクは、教職員に向けた理事長室での事情説明と、全校生徒に向けた新聞部主催の釈明会見に引っ張り出される
ことになった。影の共犯者ともいえる理事長と霞愛歌の口添えもあって前者では『おとがめなし』の裁定をもらえたが、後者はそう簡単には行かなかった。
「では会長、今回の報道内容を否定されるわけですね? 隠し子騒動も男子生徒H・Aとの同棲も事実無根、身に覚えの無いガセネタだと?」
「……それは……ええ……そう見られても仕方ない状況は一時期ありましたけど、報道されている類の行動は全く……」
「全面的に否定されるわけでは必ずしもないと?! そこんとこ詳しく!」
「ですからその……外国からきたお姫様になつかれて、少しの間でいいから一緒に暮らして欲しいと頼まれまして……」
「それがなぜ、同級生男子と同じ家でなければならなかったのでしょうか?」
「それは……成り行きというか何というか……私にもよくわからない事情があったみたいでして……」
 いつもの凛々しい桂ヒナギクの姿とはまるで違う、辛そうに唇を噛みながらたどたどしい口調で言葉を濁す生徒会長の姿を見て、取材に当たった
新聞部の面々や会見映像をみた生徒たちは一様に同じ印象を持った。
《ヒナギク会長は何かを隠している!》
 本人からそれを聞き出せないと悟った彼らは会見終了後にヒナギクの友人たちへと矛先を移す。その友人たちの口から飛び出してくる言葉は……。
「う~ん、確かにヒナちゃんと一緒に、男の子の家にご飯を作ってあげに行ったことはありましたけどぉ~」
「ヒナのことを『ママ』と呼んでた可愛い女の子のことなら、私たちも見たよな」
「確かあのとき、ヒナは赤い顔して『子供を産むような行為はしたことない』って言って、でもH君の方は『はっ?! もしかしてあの時……』とか言ってたっけ」
 こうしてゴシップ好きで言葉足らずな友人たちの証言によって、ヒナギクに向ける生徒たちの視線はいっそう険しさを増すばかりであった。


 そんな折、桂ヒナギク擁護の論陣を張る1年生が現れる。

   「桂ヒナギク先輩の、なにが悪いというのですか?
    好きな男の子と一緒に暮らしたい、子供を可愛がってあげたい、
    どちらも女の子なら当たり前じゃないですか! そうでしょう?
    私たちだってそうしたい気持ちはあるし、将来そうする人も多いんです!
    私たちの両親もご先祖様も、ずっとそうしてきたじゃないですか。
    恥じることなんて何一つ無いはずです!
    なのにどうしてヒナギク先輩だけ、こんなに注目され奇異の視線を向けられるのか?
    ……それは彼女が生徒会長だからです。みなさんに選ばれた公的な立場だからです。
    可哀想だと思いませんか? みなさんに選ばれて、みなさんのために尽くして、
    それなのに当たり前のことをしただけでみなさんに責められるなんて!
    先輩は悪くなんてないんです。悪いのは私たちです。彼女に重責を課した私たちです。
    ……もう、いいじゃないですか。先輩を解放しましょう。窮屈な檻から出してあげましょう。
    先輩は会長をもう一期やるって言っています。責任感ある態度はご立派です。
    でも皆さん、先輩だけに貧乏くじを押しつけるのは、もう止めにしませんか?」

 シャルナ・アーラムギルの訴えは、ゴシップを面白がるあまり苛めに近い状況を作ってしまったことに良心の呵責を感じていた全校生徒たちの心に
ジーンと染み渡るものだった。
「学園をパラダイスにするですよ! テストを満点にするですよ! 楽して遊んで卒業証書ゲットなのですよ!」
 正直いって、シャルナの後に演説する生徒会長候補・日比野文の公約には誰もが胡散臭さを感じていた。しかしヒナギクを普通の少女に戻すには
他に選択肢はないし、大盤振る舞いな公約といえど実際その半分も実現してくれれば儲けもの。こうして支持者増加と言うより反対者なしという形で、
毎日昼休みと放課後に催される日比野文の演説会には多くの人が足を運ぶようになった。気を良くした日比野文はますます気前の良い公約を連発し、
その受益者の証ともいえる握手券は先を争うように彼女の支持者たちへと浸透していった。
 こうして一方的な争いと思われていた生徒会選挙は、じっくりと着実にその潮目を変えつつあった。いまだに態度を決めかねている浮動票の動向次第では
日比野文が新会長に選出される可能性もゼロではない。ついに選挙戦終盤にはそんな状況すら生まれつつあった。


「なんだこれ、いったい何が起こってるんだ?」
「さ、さぁ……」
 引きこもりの天才少女・三千院ナギとその忠実なる執事・綾崎ハヤテ。突発的な海外旅行に行っていた彼ら2人が白皇学院に戻ってきたのは、
生徒会選挙の投票を2日後に控えた、そんなある日のことだった。

-----------------------------------------------------------------------

第5章と第6章(完結編)は、シャルナお誕生日に当たる2/10に投稿する予定です。