竜狐の対決 第2章 |
- 日時: 2013/02/03 15:22
- 名前: 双剣士◆gm38TCsOzW.
- 勝ち目がないのは分かってる。この子が底抜けのアホだというのも分かってる。だけどこのままじゃ悲惨すぎる。せめて文ちゃんが立ち直れなく
なる程のダメージを受けない程度には善戦させてあげなくちゃ……そう思って日比野文の参謀役に名乗りをあげたシャルナだったが、担ぐ神輿の スカスカっぷりは彼女の想像を超えていた。 例えば生徒会長の立候補用紙には、推薦人2名の名前を書く欄があるのだが、 「私の名前が勝手に書かれてることには今更ツッコまないけど……もう一方の『アルマゲドン』って誰?」 「ふぁい、文が飼ってる犬なのですよ! チョココロネをあげるって言ったら気持ちよく名前を貸してくれたのですよ!」 「……せめて人間の名前にしなさいよ。しかも最初から買収してるし……」 また立候補にあたって、新生徒会の政策について聞いたところ、 「せーふくですか? さすがはシャルナちゃん、文がさりげなくジャージに履き替えたのを見抜かれてしまったのですよ!」 「制服じゃなくて政策。学園をパラダイスにしたいんでしょう? どんなパラダイスを、どうやって作るのか、よ」 「そんなの決まってます、文が何もしなくても宿題やテストで満点がもらえるような学園ですよ! これぞ学生にとって究極のパラダイスですよ!」 「……文ちゃん、本気で言ってる?」 「ふぁい! 働くとか頑張るとかは下々の輩に任せておいて、時計台の上から天下国家を論じるのが真のセレブであり、上流階級の子弟が集う 名門学院で身につけるべき教養なのですよ! これこそがNEET革命の第一歩だって、文のお兄ちゃんも力説していたのです!」 《だめだこいつら、早くなんとかしないと》 なんで遠い異国に留学に来て、こんな子のサポートをしなきゃならないのかしら……インドの王族出身のシャルナにとっては悪夢としか思えなかった。 だが考えてみれば、責任の一端は自分にあると言えなくもない。ゴールデンウィークを利用して日比野文と一緒に旅行したとき、インドの実家に 寄った彼女を『異国からはるばる来た友人』として歓迎してしまったのがマズかった。あの召使に囲まれた上げ膳据え膳な日々の思い出が、 文のパラダイス構想に影響を与えてしまったことは想像に難くない。きっと帰国後に大喜びで家族にしゃべり、引きこもりのお兄さんと意気投合して しまったのだろう。
とにかく。 こんな有様ではヒナギク会長に勝てるわけがない。付け焼刃でまともな政策を覚えさせたって初日からボロを出すのは確実だろう。 シャルナは正攻法をあきらめ、搦め手から反撃することにした。 「こうなったら、握手券商法を取り入れましょう」 「え、なんですかシャルナちゃん?」 「文ちゃんの演説を最後まで聞いてくれた人には、握手のついでに回数券を渡すの。もし文ちゃんが会長になった暁には、その券を沢山もってる人から 順にセレブの仲間入りをさせてあげるって言って……こうすれば耳を傾けてくれる人もいるんじゃないかしら。元手はタダだし、結果がどちらに転んでも リスクはないし」 「なるほど、それで文が会長になったら、なにその紙切れ?とか冷たく突き放して文だけが特権独り占めというわけですね! さすがです シャルナちゃん汚いです、でもそこにシビれる憧れ……」 まずはグーパン、続いてチョップ、アイアンクローを決めた後、最後のとどめはしょーりゅーけーん。 息もつかせぬ4連コンボで文の軽口を封じたシャルナは、引き続いてもうひとつの打開策を口に出した。 「でもね文ちゃん、どんなにサービスが良くても、それだけじゃ足りないの。実績の欠片もない私たちが現役の会長さんを倒すのに、 欠かせないのはなんだと思う?」 「ほぇ? 文の絶世の美女スマイルですか?」 「ちがうわ、敵失よ。スキャンダルとも言うわね」 文の首筋に冷たい風が吹き抜けたが、もともと色黒であるシャルナの表情はさほど変わったように見えなかった。 「まぁ、そっちは私に任せてもらうわ。文ちゃんは明日の朝までに、握手券を100枚ほど用意しておいてちょうだい」 「かいちょーさんの弱点なら、あの時のパンツ丸出し……」 「……ああ、文ちゃんは余計なこと考えなくていいから」
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