聖母、健在 第1章2話 |
- 日時: 2022/02/02 00:16
- 名前: 双剣士
- 「黒服第1班は迎賓館の北側を、第2班は東側を、第3班と4班は南西側一帯を手分けして捜索してください」
「はっ! お任せください、マリアさま」 「もしナギを見つけても危ないことになっていないなら、直接の接触はしなくていいです。こんな夜中に黒服の大人数人が 女の子を取り囲んだとなると事案になりますから……ナギを見失わないよう注意しながら、すぐ私のiPhoneまで連絡をください。 私がすぐ向かいますので」 「……マリアさま、“あいふぉーん”とは何でしょう? 未来のデバイスか何かですか?」(←この作品の舞台は2004年、初代iPhoneの登場は2007年) 「……こほん、失礼しました、私のケータイまで連絡をお願いします。話し中でしたらキャリアメッセージでも構いませんので」 《……なぁ、マリアさまってなんで俺たちの知らないデバイスの名前をご存じなんだ?》 《こういうの1度や2度じゃないよな、やっぱりああ見えて実際の年齢は……》 「ジャンクにしますよ?」 「ひぃっ!! い、行って参ります、うら若きマリアさま!」
ナギを探すよう黒服たちに指示を出したマリアは、自身もコートを羽織って自転車に飛び乗った。黒服たちにはああ言ったが、 実のところナギが行きそうなところは限られている。あの怖がりのナギが人気のない森の中や湖の方角に向かうとは思えない、 おそらくは混みすぎない程度に人が通りかかる場所……公園や商店街があるあたりではないかと。 とは言えそれはナギが一人で居ればの話である。警備の厳しい迎賓館の中から連れ出されたとは思えないが、退屈して自分で フラフラと外に出たところを誰かに誘拐される状況は大いにありうる。なにせ彼女は石油王の直系に当たる孫娘、誘拐されかけた ことは1度や2度ではないのだ。これまでは頼もしい執事が一緒にいたおかげで毎回事なきを得てきたのだが……。 「ナギだけじゃなく私も、姫神君に頼り切っていたということですわね。早く後任を見つけないと」 小さな声で自嘲したマリアは次の瞬間に表情を引き締めると、粉雪の舞う夜の街へと自転車のペダルを踏みこんだのだった。
そして、黒服からの連絡を受けて『負け犬公園』という場所の入口へと自転車を走らせたマリアの前に、雪道に横たわる少年の姿が現れる。 「ああ!! だめです!! そんなとこに寝てたら〜!!」 「え?」 さすがのマリアも雪道の上では避け切れず、豪快に少年の頭の上を自転車のタイヤで轢いてしまう。マリアはすぐさま自転車を降りて少年に駆け寄った。 「あの……だ……大丈夫ですか?」 「ててて……」 「あの……お医者さん呼びましょうか?」 身を起こした少年は最初は痛そうにしていたが、マリアと顔を合わせた途端に表情を凍らせ……やがてゼンマイ細工のように勢いよく立ち上がった。 「あの……体は?」 「体がどうかしましたか?(キリッ)」 「……えっと……」 「ご心配なく。頑丈なだけが取り柄ですから」
姫神の後継者とマリアとの出会いは、このように訳のわからない形で始まった。
(続く)
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