文章チェックフォーム 前画面に戻る

対象スレッド 件名: 聖母、健在 第3章3話
名前: 双剣士
誤字を見つけたら
教えてください

悪戯を防ぐため
管理人の承認後に
作者に伝えます
誤った文字・語句 
          ↓
正しい文字・語句 
【参考】対象となる原文

聖母、健在 第3章3話
日時: 2022/02/18 22:26
名前: 双剣士

 一夜明けて眠気と酔いを醒ました3人は、美琴のスイートルームに集まって作戦会議を開始した。神様の力を使えば叶えられない
願いなど無い、と帝の元を飛び出した姫神ではあったが、無為無策のまま思い込みだけを武器に突っ走るほど愚かでもない。
たとえ人外の力を使うにしろ、段取りと勝算は立てておかなくてはならないのだ。
「どうやって紫子を取り戻すかを話す前に、彼女が今どこにいるのか、について認識を揃えておきたい」
 美琴と一条の同意を受けて姫神は昔話を始めた。25年前に猫屋敷で紫子と出会ったこと、彼女の持つ王玉を借りてロケットパンチを
手に入れたこと、それによって王族の力は庭城に帰り猫屋敷の棺桶は消滅したこと。そして一度王族の力を使ってしまった姫神は、
二度とその力を使えないよう、光を持つ王玉に触れることが出来なくなったことを。
「その時はそれでもいいと思ったんだ。子供の僕は世界最強の力を得たと思っていたし、紫子にも格好いいところを見せたかったからね。
 だけどそのとき、紫子が興味を持ったのは僕じゃなくて庭城の神様の方だった。僕じゃない誰かに向かって彼女は言ったんだ。
 『私があなたを助けてあげる。まかせて、オルムズト・ナジャさん』とね」
「その話なら紫子姉さまから聞いたことがあるわ。小さい頃に神様と会ったことがあるって」
 それから十数年後、紫子の父親が神様の力を手に入れようとしていることを知った姫神は彼に協力を申し出る。ロケットパンチごときで
世界を変えられないことを知った姫神にとって、王族の力の管理者という先祖代々のアイデンティティーを取り戻すためには、
複数の王玉を持つ帝と手を組むことが唯一の手段だった。そして研究の結果、王玉を持つ者が大きな願いとその挫折に直面することで
王族の庭城への道を開くことができることを知り、一度はそれに成功する。

「まだ小さかったアテネちゃんの父親の死をきっかけに庭城への道を開くことには成功したんだけど、それは庭城に巣くっていた
 亡霊・キングミダスとの戦いの火蓋でもあった。結局僕と帝じいさんは追い返され、アテネちゃんはさらわれた……僕が実際に見聞き
 したのはここまでだ」
「ちょっと、ここからが肝心な所じゃないの。紫子姉さまの居場所にどう関係するのよ」
「まぁ聞いてくれ。僕はこのとき年齢と記憶を戻されたらしいので続きは伝聞になるんだが……それからしばらくしてアテネちゃんが
 現世に戻ってきたころに、何者かが王族の力を現世に持ち出したらしいんだ。そしてこのころから、紫子の不審な行動が始まる」
 リゾートのために年数回行くだけだったミコノス島の屋敷に紫子はこもりきりになり、娘のナギと養女のマリアと共に暮らす
ようになる。日本に戻ってきたのはそれから実に3年後で、親友だった鷺ノ宮初穂の娘である伊澄と顔を合わせたのはこれが最初。
そして伊澄がナギの初めての親友になったのを見届けて安心したかのように、そのままこの世を去ってしまう。
「そうね、まるで死期を悟ったみたいな行動だったなと今では思うわ。でも紫子姉さまのお葬式には私も参加したのよ? あれが
 茶番だったとでも言うの?」
「そうだ。たぶんナギを含めて全員が騙されてる……実は紫子に初めて会ったとき、伊澄ちゃんは『神様かと思った』とつぶやいた
 らしいんだ。歴代最強の光の巫女と言われているあの子がだぜ? この言葉と直前の紫子の行動、そして25年前の出来事から
 僕はある仮説を立てた……亡くなる3年前に紫子は王族の庭城に入り、そこで神様と入れ替わったんじゃないかって。
 もしこの仮説が正しければ、紫子はいま王族の庭城の中にいることになる」

(続く)