Re: リレー小説〜ハヤテとアテネのラブコメ〜 |
- 日時: 2021/10/21 23:46
- 名前: 双剣士
- タイトルに「ラブコメ」と入っているのにイチャラブ展開ばかりなのが納得いきません。
DARKNESSさんには悪いですけど、ひっかき回してみます。 --------------------------------------------------------------------------------
「あの……綾崎君よね……?」 周囲からの粘っこい視線にいささか居心地の悪さを感じていた綾崎ハヤテに、別の方角から可愛らしい声がかかる。 ハヤテが振り向いた先にいたのは、グレーの髪を左右にまとめた少女。つい先日までハヤテの母校だった潮見高校の 制服を着た、自転車を押しながら近づいてくる元クラスメイトの名は……。 「西沢さん?」 「やっぱり綾崎君! 心配したんだよ、新学期になってから急に学校に来なくなって……先生は学費が払えないから 退学になったって言うし」 「あ、あぁ……ちょっと親といろいろあってね。いまは僕、親元を離れて別の高校に通ってるんだ。心配してくれてありがとう」 「そ、そうなんだ……でも良かったよ、綾崎君が元気そうで。今年初めて綾崎君の顔が見れて、本当に嬉しいよ」 西沢歩は嬉しそうに微笑んだ。野に咲くタンポポのような、華麗ではないが素朴で心温まる笑顔。だがそれを穏やかに 見守っていられない存在が、この場には居る。 「ちょっといいかしら」 ハヤテとの間に割り込んできた黒い人影。ハヤテのことしか目に入っていなかった歩はその姿を目にして思わず後じさった。 長い金髪と縦ロール、黒いドレスと大きな胸のふくらみ……物語の中にしか出てこないと思っていたゴージャスな悪役令嬢が、 いきなり目の前に現れたのだから。 「あ、綾崎君、この人は……?」 「あぁ、西沢さんは初めてだよね、この人は……」 「天王州アテネ。この星で最も偉大な女神の名前よ」 悪役令嬢は天を衝くような尊大さをひけらかしながら歩の想像をはるかに超える豪快な名乗りを上げた。凡人としての人生しか 知らない西沢歩は二の句が継げずに後じさる。マンガの中では意識しにくいことだが、普通の人間の反応はこうなのである。 出会った途端に『金髪喪服女』『化けチチ縦ロール女』と好き放題言える誰かさんの方がどうかしているのだ。 「いま私たちは、とっても大事な時を過ごしていますの。空気を読んでくださる?」 「えっ……?」 ハヤテの左腕を両手でかき抱きながら、勝者の余裕をもって歩を突き放しにかかる黒衣の令嬢。学費が無くて退学になった はずの綾崎ハヤテの隣に、どう見ても大金持ちな金髪美少女がいて、これでもかとばかりに所有権を主張してくる… …歩の脳裏に『人身売買』の4文字が浮かんだ。綾崎君は元気なんかじゃない、このお嬢さまに買い取られて生殺与奪を握られ、 身も心も搾り取られているのだ、と。 「し……しょうがないわ! 今日のところは引き下がるけど、次は必ずもっと強いハムスターを連れてくるんだから!!」 恋のライバルが年端も行かない少女であれば、こんな風に啖呵を切ってハヤテ救出の方法を探すこともできたかも知れない。 だが完全に気押されてしまった今の歩には、あまりにも高く険しい現実に映った。上級国民オーラにぐいぐいと押された歩は、 さっきまでの笑顔はどこへやら、暗い表情をして視線を外しながら踵を返した。 「ご、ごめんなさい、私、そんなつもりじゃ……綾崎君、じゃあね」 勢いよく背を向けて自転車で走り去る西沢歩。その両目には大粒の涙が溜まっていた。
-------------------------------------------------------------------------------- この光景を目の当たりにしたヒナギクが何と言うか、誤解しまくりの西沢さんとの関係が今後どう進むか。 次の方、よろしくお願いします。
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