鬼か人か 〜第一章 曙光のひとかけら |
- 日時: 2019/03/14 22:31
- 名前: どうふん
- ご無沙汰しておりました。初めまして、という方の方が多いかもしれません。
当方、過去二作品を投稿した「どうふん」と申します。
「ハヤテのごとく」が完結してもうすぐ二年。 その間何もせず過ごしておりましたが、この度二次創作に再挑戦してみるか、と思い立ちました。 その切っ掛けは「トニカクカワイイ」にハマったから・・・といいたいところですが、実は某リメイクアニメです。 このアニメに「ハヤテ」の登場人物と最終回の状況を組み合わせてみれば・・・。 つまり本作はコラボ作品となりますので、その点お含みおきください。そういう次第で、過去二作品とは全く別の世界です。
できるだけ原作の設定を大切にして、とは思っておりますが、正直あやふやな記憶に頼って書いておりますので、ツッコミどころが多数あるかもしれません。その点はご容赦。ただしツッコミは大歓迎です。
鬼か人か 〜 プロローグ
鬱蒼と茂る森の中にその古い祠はある。普段は訪れる者もない。 だが、古くて傷んではいても掃除は常になされており、周りにはゴミ一つ落ちていない。それが誰の手によるものか知る人はいなかった。 ただ、祠に忍び込もうとしたホームレスや酒盛りをして騒いでいた暴走族がすぐにそこから逃げ出した、といった噂は今も絶えない。
その日は雲が多かった。普段より薄暗い静寂に囚われた森で二色の足音が祠に近づいていた。 高校生くらいの少女とその弟のように見える少年。一言も発しないで歩く二人の表情は硬かった。 祠を目の前にして、わずかに前に立つ少年が口を開いた。外見とは不相応なほど大人びた声だった。 「本当に・・・いいのか」 「今更そんなこと訊かれたくないわね」 二人は祠の横へと回り込み、少年はそこで立ち止まった。一歩遅れて少女も。 「ここから先は・・・」 「戻ってこれるかわからない、だったわね。それも何回も聞いたわよ」 無表情の少女の声が再び素っ気なく響き、少年はふっと笑うように唇を歪めた。 「訊くだけ野暮だったな。君はそういう人間だ」 「だったらね。私に言うことは他にあるでしょ」
少年はしばし黙りこんでいたが、やがて大きく息を吸い真横に顔を向けた。 雲の切れ間からわずかに陽が差した。ひと時の明かりに照らされた少年の顔はかすかにはにかんでいるように見えた。 「僕と・・・、僕と一緒に来てくれ、ヒナギク」 「どこだろうとついていくわよ、キタロー」少女は少年が差し出した手をしっかりと握った。顔をほころばせた少女の瞳には強い光が宿っている。 手をつないで歩き出した二人の姿は森の中に溶け込むように消え、あたりに静寂が戻った。
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