Re: タガタメニ・・・家族〜「憧憬」未来図 |
- 日時: 2017/04/15 09:43
- 名前: どうふん
- とうとう終わっちゃったか・・・。
最終章の駆け足感は半端なかったですね。まあ、エンディングはこれで良かったんだろうと思います。 私の思い描く未来と畑先生のそれが懸け離れていることはわかっていましたし(そもそも設定を勝手に加えている)、ヒナギクさんとナギちゃんの成長をはっきりと感じることができました。あ、それとハヤテもですね。
まだティーンエイジャーの三人の未来、応援してます。 それと、千桜さんやマリアさんなど、私の好きだった数多くのキャラクターたちも。
そして当方の思い描く未来も、完結に向けて邁進したい、と思います。 以下、第二話です。
第二話:金髪の花嫁
アイドルグループが名前に冠して有名となった乃木坂は南青山にある。 ここに旧)日本陸軍の将軍を祀る神社があり、それに由来した比較的歴史の浅い地名であるということは、どれだけ世間に知られているのだろうか。 この坂の元々の名前は何かというと・・・ (へー、ここ、昔は『幽霊坂』って言ったんだ。幽霊坂46・・・。う・・・ん、アイドルグループの名前としては・・・やっぱり問題あるかな) 都内某大学二年生である西沢歩は、一つお利口さんになったような気がして道端の看板を眺めていたが、改めて目的地へと歩きだした。
三叉路の道に行き当たった。 (ええと・・・こっちで良かったかな?)結婚式の招待状を取り出して、添えられた地図を眺めていると、後ろから呼び声が聞こえた。振り向くまでもなく、声の主はわかっている。 「ヒナさん」遥か遠くから駆けてきたのは高校以来の親友である桂ヒナギクだった。最初は豆粒の様だったその姿は見る見る近づいてくる。 (スーツ姿なのに何でヒナさんはあんなに早く走れるんだろう?)かつて完璧超人と呼ばれていた彼女の卓越した能力には拍車が掛かっているように思えた。 さながらテレポーションのような高速移動で目の前に立ったヒナギクは息も切らしていなかった。
歩は半ば呆れつつも、それより聞きたいことを口にした。 「今日は綾崎君と一緒じゃないの、ヒナさん」 「花嫁さんから、今日一日だけハヤテを返してほしい、って頼まれたのよ。だから朝からずっと」 「そうか・・・。まあそうだろうな」歩は遠くを見る様に目を細めた。 「それにね、付き人はもう一人いるわよ」 「え、それ、もしかして」
教会の白い屋根が見えてきた。そのこじんまりした建物に歩はちょっと意外な感がした。 「ねえ、ヒナさん。日本最大級の大富豪がなんでこんな小さな教会で結婚式なのかな」 「披露宴は日を改めて世界中から二千人くらい要人や経済人を呼んでやるみたいよ。でも結婚式は身近な友達にお祝いしてほしいんだって」 「へえ。ちょっとそれ、嬉しいかも。それだけ私たちのこと大事に思ってくれてるんだ」 「ええ、きっとそうね」
教会の敷地に入ると、庭でそれぞれ純白のタキシードとウェディングドレスを身にまとった新郎新婦が記念写真を撮っていた。少し離れて執事服のハヤテとメイド姿のマリアが佇んでいる。ハヤテだけでなく、マリアも花嫁に頼まれ、今日は付きっきりだった。 (あ、メイドのマリアさんは久しぶり。でも、やっぱりこっちの方が似合ってるかな・・・) もっともメイドになる必要はないと思うが、これは当人の気分の問題だろう。
フラッシュが光り、一息ついた花嫁がヒナギクと歩に顔を向けた。 息を呑む程の美しい笑顔がそこにあった。陽光を受けたブロンドが揺れて、眩しいくらいに輝いている。 「ほ・・・本日はお日柄も良く・・・、お、おめでとうございます」 「もう、そんなしゃちほこばるのはやめて下さいな、歩さん」花嫁・・・天王州アテネは苦笑した。 「本当に・・・綺麗ね・・・、あーたん」今では、ハヤテだけでなく、ヒナギクもアテネを「あーたん」と呼んでいる。三人が再会した時、アテネは自分を「天王州さん」と呼ぶヒナギクに向かって言った。 「ヒナも私のことは『あーたん』と呼びなさい。あなたたちは二人で一人ですからね」赤面して顔を見合わせるハヤテとヒナギクを眺めて、アテネは溜飲を下げたように笑っていた。
「ヒナ、西沢さん。花婿の方もよろしく」ハヤテがさっきから微動だにしない花婿に掌の先を向けた。挨拶した二人に、花婿は「ご足労掛けて申し訳ない」と丁寧にしかし不愛想に答えた。 「兄さん、今日は主役なんだから、お客様にはもっとにこやかにしなきゃ」 「別にそれは関係ない。俺は妻の望みを叶えただけだ。これも人助けだからな」 (ずっとこの調子だよ・・・)ヒナギクに向かい肩をすくめて見せたハヤテだが、兄の無表情な鼻の下がいつもよりほんの少しだけ伸びていることには気づいていた。
「僕はあーたんの元カレで父親になって、これからは弟かあ・・・」呑気な口調のハヤテに、アテネとヒナギクと歩の三人から射るような視線が飛んだ。
4/21 一部修正(第二話末尾ほか)
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