Re: 憧憬は遠く近く 第2章〜 紫色の風が |
- 日時: 2015/09/12 11:27
- 名前: どうふん
- オペレーション・パープル始動。
しかし、それはハヤテとヒナギクさんだけに対するものばかりでは不十分です。 もう一人、ナギの存在は重要だと思っています。 果たしてナギが二人の仲を認めることができるのかどうか。
【第4話:決意と迷い】
「何の用だ、マリア。お前まで私を馬鹿にしに来たのか」 「そうじゃありません、ナギ。私はあなたに謝りに来たんです」 部屋に一人で閉じこもろうとするナギに、マリアは繰り返し話し掛け、ナギの方が根負けして中に入れたような形であった。
「お前が私に謝ること?そんなものがあるのか。念のため言っておくが、ハヤテのことはお前には関係ない話だぞ」 「それが、あるのですよ、ナギ」その厳しい表情にナギは気圧され沈黙した。
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そして、30分ほど後。
「ナギ、今言ったことが本当のことなの。あなたの気持ちをわかっているから、それを踏みにじるようなことはできなかった・・・。本当にごめんなさい。ずっと隠していたことについて、どんな責めでも私が負います。 ハヤテ君はね・・・、あなたを騙すつもりなんかは全くなくて、ただ・・・本当に言いにくいんだけど、あなたの気持ちに全く気付いていなかったの」
一言も口を利かないナギはさっきからずっとそっぽを向いてゲームをしている。 だが、その動揺しきった心情はその惨憺たるスコアが雄弁に物語っていた。 マリアの話が終わっても、ナギはゲームの手を休めない。息が苦しくなるような時間が過ぎていく。
しかし、ナギの口から出て来たのは意外な言葉だった。 「私を馬鹿だと思っているのか、マリア」 「え」 「そんなこと、とっくに気付いていたよ・・・。時間が過ぎても、どんなシチュエーションでもハヤテにそんな意識らしいものは何もなかったし、考えてみれば、愛の告白と思い込んでいた言葉だって、あの鈍感男がどういう意味で使ったのか・・・。
まあ、誘拐するつもりだったというのは初めて知ったがな。
それでも私は・・・、ハヤテが振り向いてくれると信じていた。 私は特別な何かになり、ハヤテから愛される・・・そう思っていた。 ギリシャで私は王玉を壊した。これからお前が私を守ってくれるなら遺産なんかいらない、と。 お前さえいれば、他の全てを投げ出してもいい。そういう意味だったんだ。
ハヤテは私を抱き締めてくれた。『お嬢様の元へ必ず戻ってきます』と言ってくれた。 信じてて良かった、想いは届いた、そう思ったよ。 だけど、それさえ、全てを投げ打って届けた想いさえ、気付いてもらえなかった・・・。
私はそれだけの存在でしかなかった・・・。それだけの話なんだ。それだけなんだよ」 「ナギ・・・」
「私は諦めない。ハヤテは言ったんだ。『僕が君を一生守る』と。言葉に責任は取ってもらう。ヒナギクもムラサキノヤカタも全員敵に回しても、私はハヤテを手に入れる。 借金をタテにとってでも婚姻届を提出させる。
マリア、私が卑怯と思うか。私の言っていることは許されないことか・・・」 「それは・・・」
「もういい。マリア、話が終わったんなら出てけ」
マリアはそれ以上何も言うことはできなかった。苦い思いを抱いて部屋を出た。 (きっとわかってくれる。わかって上げられる・・・はずよね。あなたの大好きなハヤテ君と・・・それと大切なヒナギクさんのことなんだから)
ナギは戸の閉まる音を聞いて、ベッドに寝っ転がった。 これ以上ゲームをする気もしない。 「あんなこと言ったけど・・・どうすればいいのだ」ポツリと呟くと、心の中にぽっかりと穴が開いたような気がした。穴から水がもれるように涙腺が決壊した。 ナギは枕に顔を埋めて声を殺して咽び泣いていた。
ナギは、ふと部屋に座敷わらしの存在を感じた。 顔を上げて辺りを見回すとアリスがすぐそこにいた。澄ました顔を崩すことなく黙然と突っ立っている。
「な、なんらあ、おまいは。いったいいつからそこに」慌てふためいて涙を枕になすりつけるナギだった。 「マリアさんの隣にずっといましたわよ」 「・・・だったらなぜマリアと一緒に出ていかない?」 「ナギはマリアさんに『出ていけ』と言いましたが、私は言われた覚えはありません」 「それはそもそもお前に気付いてなかっただけなのだ、ちっこいの。わかったらさっさと出てけ」 「まあ、そう言わず。私はあなたに話があるんですから」 「はなし?大人の事情に口出しする気か、お前は」 「ま、そんなところですわね。同じ男に恋した女として」 「はあ?」
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