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対象スレッド 件名: Re: 憧憬は遠く近く 〜 不思議の姫のアリス
名前: どうふん
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Re: 憧憬は遠く近く 〜 不思議の姫のアリス
日時: 2015/07/15 21:54
名前: どうふん

アリスが眠った後、二人が残されます。
もう少し、この話を続けることにしました。
今ハヤテは胸に湧いた奇妙な感情に振り回されています。
一方のヒナギクさんは、そのハヤテに・・・

それにしても・・・ちょっとまずいな、と思っています。

当初構想の第一部がまだまだ終わりそうにない・・・。



【第6話:ふたり・・・】


ヒナギクの瞳がハヤテに向いた。
目が合ったハヤテはどぎまぎして目線を外した。
灯りを消しているため、ヒナギクはハヤテの表情の変化に気付かない。

「ねえ、ハヤテ君」
「な、なんでしょう」視線をヒナギクに戻しながら心臓が激しく鳴っている。
「ハヤテ君は、もちろん知っているのよね、アリスが天王州さんだということ」
「え、ええ。ヒナギクさんも、ですね」ちょっと気が抜けたような感じがした。
「でも、何で子供の姿に?」
「それは僕にもわかりません。というより本人にもわからないようです」
「じゃ、何で私たちのもとに?」
「それもわかりません。ただ、ヒナギクさんの力が必要だ、とは言っていましたね」
「それは聞いたわ、私も」
「だけど・・・それだけじゃないと思いますよ」
「え?」

ハヤテはアリスを見た。ヒナギクの瞳から目を逸らした、というべきか。
「力を取り戻すだけなら、もっと簡単な方法はあるはずです」別に根拠はないが。
「じゃあ、何でよ」
「今のあーたんは、記憶も力もほとんど喪っているようです。ただ、少し残っている記憶で、自分を大切にして守ってくれるものとして、ヒナギクさんを選んだんじゃないでしょうか」さっきのヒナギクの姿を見て、ハヤテは本当にそんな気がしていた。
「それはどうかしら。ハヤテ君はともかく、私は違うわよ。ハヤテ君と違って天王州さんとそう大した関係はなかったし」
また思い出してしまった。ハヤテとアテネが抱き合っている姿。
胸が詰まるような思いがしてヒナギクは黙った。


そんなヒナギクを見ながら、ハヤテは全く別のことを考えていた。
「あの・・・ヒナギクさん」
「ん、何かしら」
「朝まで、ここにいてもいいですか?」
ヒナギクは言葉が出ない。唖然とした瞳でハヤテを見詰めている。
別に、ハヤテはおかしなことを言っているわけではない。三人で寝ることになった時はそのつもりでいた。
しかし、それを改めて言い出されると、全く違った意味を感じてしまう。


しばらくの沈黙。
ハヤテとしては、アリスも寝たことだし、自分の部屋に戻った方がいいのかな、と思っただけなのだが、意識してか無意識か口から出た言葉は逆だった。
さらに深読みすると・・・。

ハヤテは自分の言葉の意味に気付き狼狽した。
「も、もちろん、境界線を越えたり、ヒナギクさんが身の危険を感じるようなことはしませんから・・・。あの、別に下心とかやましい気持ちは決して・・・。

な、何を言っているんですかね、僕は。きょ、今日はヒナギクさんやあーたんと一緒で凄く楽しかったのでつい。
これで失礼します」
「ま、待ちなさいよ、ハヤテ君。わ、私は別に構わないわよ」
「え、え、その・・・」
「アリスは良く夜中に目を覚ますのよ。その時にハヤテ君がいないことに気付いたら、面倒だし・・・。


でも、領空侵犯はなしよ、絶対。

そ、それと今日だけ・・・だからね」


ハヤテはそこに留まった。しかし、会話は止まった。
結局二人ともまんじりともせずに朝を迎えることになった。

ふと、ヒナギクは思った。
(『今日だけ』なんて言わない方が良かったかしら・・・。って、な、何を考えてるのよ、私は)
一方のハヤテはこう思っていた。
(『今日だけ』か。そりゃあそうだよな・・・。い、いや、それより変な意味はないってことはわかってくれたのかな)


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翌朝−日曜日のムラサキノヤカタ
昨日から一転して、外は雨音に包まれていた。
「今日は一日降りそうですね、ハヤテ君」
隣で料理をしているマリアの声が耳に入ってこない。
朝食の準備をしながらハヤテは悩んでいた。


(一体なぜ僕はヒナギクさんにあんなことを言ったんだろう)
『朝までここにいてもいいですか』
アリスがいた、それ以外の理由は思いつかない。しかし、相手がマリアや西沢歩だったとして、あんなことを口走るとは思えない。
大体あの場面で言うことは、『あーたんも寝たことですしこれで失礼します』となるはずだ。


もう一つ、愛歌から以前言われたセリフも胸に蘇ってきていた。
「ヒナがハヤテ君にとって特別な存在ってことね」「特別の意味はいろいろあるけど」
(僕は・・・そんなつもりはないけど・・・ヒナギクさんを女の子だと見なしていないんだろうか。だったらヒナギクさんが僕に怒るのも当然かもしれないなあ)

ヒナギクのことが好きなんだろうか、という方向にハヤテの思考は働かない。
しかし、違和感は感じていた。
(何か違う・・・。何かがおかしい・・・)
ハヤテはそれ以上考えるのが怖くなり、折角のヒントを生かすことはできず、考えるのを止めた。