Re: 朝風が吹く頃に |
- 日時: 2015/09/14 22:16
- 名前: ネームレス
- 「エンディングが思いつかなかった」
「ええぇ……」
最終話「よっしゃ! こいつでメイン書いてみよう! と見切り発車で始めたはいいもののまさに五里霧中状態でありそもそもこんな展開にした時点ですでに詰んでいる」
「で、どういう意味ですか」 「君は動じなくなったな紅蓮ノ王」 「チューしますよ」 「本当に動じなくなったな」
もはやこんな軽口を言い合える仲にまで発展してしまった俺と朝風さん。 しかし朝風さんに俺が朝風さんのことが好きなことはすでに知られてるはずなのにどうしてこんな普通の悪友みたいな関係になっているのか。これがわからない。
「あと君の私への告白だったが来世でも会えたら運命だな。そこで結婚しよう」 「今世でのチャンスはもうないんですね」
詰んだ。俺の人生が詰んだ。 というか返事が軽いよ。
「いいか。……作者はもう疲れているんだ」 「そんなリアルな事情をここに持ってこられても……」
え? じゃあこれどうやって終わるの?
「そこで、だ。私たちの手でエンディングを考えようではないか!」 「「話は聞かせてもらった!!!」」 「だ、誰だ!」
いや、すっごく聞き覚えあるけど!
「だ、誰だ! と聞かれたら」 「答えてあげるが世の情け〜♪」 「学園の破滅を防ぐため」 「学園の平和を守るため〜♪」 「ボケとツッコミの笑いを貫く」 「ラブリーチャーミーな生徒会♪」 「美希!」 「泉だよ♪」 「学園を駆ける動画研究部の三人には」 「エクセレント♪楽しい日々が待ってるよ〜♪」 「にゃーんてな」 「……」
不覚にも朝風さんの「にゃーんてな」に萌えた。
end
「え!? これで終わり!?」 「エンディング1の完成だな。タイトルは『生徒会役員d__」 「ダメだ! よく分からないけどそのタイトルはダメだ!」 「じゃあ『朝風萌え√end』で」 「ならよし」 「そこまでの過程を全てバッサリいったな」 「ふぇ〜ん。いっぱい練習したのに〜!」
済まない。朝風さん以外は帰ってくれないか。 なんていう度胸など無く、そもそも彼女たちに真面目なエンディングを作る気はあるのだろうか。
「ふむ。流石にパクリはダメだったか」 「そりゃあね」 「ならば次だ! 行くぞ!」 「「応ッ!」」 「え!? なにこの流れ!?」
「久しぶり、だな」
何年ぶりだろうか。 今までは突然のことに理解が追いつかず、受け入れることが出来ず、逃げるようにその事実から目を背けてきた。 しかし、何時までもそんなのでは悲しいではないか。 だから、今日私は数年ぶりに“彼”の前に立った。
「今まで会えなくて済まない。でも、いろいろあったんだ。本当にいろいろなことがあった。その物事の中で私も成長した……と思う。……やはり、あまり変わってないのかもしれん。だが、今日君に会いに来た。この事だけは私が成長した証ではないかな」
返事はない。当たり前だ。 “石”に会話をする機能なんてない。
「こうやって線香を上げれるようになるまで、本当に長かったな」
彼は、死んだ。 数年前。事故で亡くなった。 誰も悪くはない。そんな事故だ。 私はその時の自分の中に溢れる感情に名前をつけることが今でもできない。ただ涙を流し続けていたのは覚えている。 彼が死んだという事実を受け入れられず、私は彼の話題を避け、彼を忘れようとし、彼から離れようとした。 今にして思えば、あの時の時間をもっと上手く使えたのではないかと思う。それこそある程度は成長し、時も経った今だから言えるのだけれど。
「君との思い出が今でもまだ私の中にあるんだ。どんなに消そうとしてもこの思い出だけは消えてくれなかった」
なんでだろうな? 分かりきった疑問を口にする。それだけ私が彼を大切にしていたということだ。
「……また来るよ。次からは、ちゃんと来れる」
そう伝えて、私は去る。
「じゃあな。“石田”」
歩く足は平常。心の中は凪いでいる。 私はもう大丈夫だ。 見上げた空は快晴で、柔らかく吹く風は髪を揺らす。 彼との思い出がこれからの道行もきっと照らしてくれるだろう__。
end「あの日仰いだ夏の空」
「誰だ石田ぁあああああああああああああああああ!!!」
俺じゃねえのかよ! 何のエンディングだよ! というか何があったんだよ!
「石田一成。死亡時17歳。好きな子と結ばれるため一念発起し、数々のイベントをこなし遂に思い人である京子ちゃんと付き合うも、初デートに京子ちゃんの上から落ちてきた豆腐の角を京子ちゃんの代わりに受け、その豆腐が高野豆腐だったこともあり死亡した」 「京子ちゃんって誰だよ! あと高野豆腐の風評被害やめろ!」 「京子とは私の演じた役だ」 「ついでに私が地の文担当」 「私が盛り上げ役だよ♪」 「何のエンディングだぁあああああああああああ!!!」
あと盛り上げ役って絶対必要ないよね。遠回しな戦力外通告だよね。気付いて!
「なら君とわたしが出ればいいんだな」 「まあ、そうですけど」 「わかった」
そう言うと朝風さんは二人とこちらに聞こえないように話し合う。 少し経ち。
「よし。では行くぞ」 「え。急に?」
「私。結婚するんだ」
神は死んだ__。
end「選ばれたのは__」
「まあ嘘なんだが」 「っ!? ぷはぁ! 息止まってた……」
危うく死ぬとこだった。
「あっはっは。君は面白いな」 「朝風さん。何回俺を殺す気っすか」 「まあまあ。生きてるんだからいいだろう?」 ((今までもあったんだ……))
ん? なんか二人からの視線がドン引きの視線に変わったぞ。 まあ俺は朝風さんと話せりゃいいんだけど。
「全く。君は退屈しないな」 「そりゃよかったよ」 「私のお気に入りNo.2の称号をやろう」 「ありがたしあわ……No.1は?」 「綾崎ハヤ太くんだ」 「綾崎ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
その時の俺の叫びとはなんだ。 この世のあらゆる怒りを、憎しみを、悲しみを込めた怨嗟が白皇内に響いた。
「ひぃ!」 「どうしたハヤテ?」 「いえ……なんか今、見も知らぬ人からの殺気が……」 「……流石に気のせいではないか?」 「だといいのですか……」
「おお、驚いたな。一瞬鬼にでもなるかと思ったぞ」 「ええ。俺も今、自分が人間から外れた何かに変わるような気がしましたけど気のせいでした」
あ、なんだろう。凄えスッキリした。追肥出すとスッキリするんだな。これからは定期的に会ったこともない綾崎ハヤ太なる人物に恨みをぶつけていこう。 こう見ると、俺凄え傍迷惑だな。
「全く」
朝風さんはそう言ってこちらに近づくと
「これから長い付き合いになるのだからこんなことで怨んでいては身がもたんぞ?」
と。 俺の頭をわしゃわしゃしながら言った。というか撫でられた。 ……へ?
「「……へ?」」 「む? どうした」
え。いや。どうしたって……。
「む。……あちらに今にも告白しそうな女子生徒と鈍感そうな女子生徒が! これはキマシタワーの気配! 行くぞ下僕!」 「おう! ……いや待て。下僕ってなんだ! あとカメラ忘れてるぞ! おい!」
先ほどのことなどまるで無かったかのように駆け出す朝風さんを追い、朝風さんが常に持っている盗撮道具を持ちそれを追いかける。 なんかいつもこんなんばっかだなっ!
「もしかして、脈アリ?」 「いや。理沙は意外と異性との接触に緩いところがあるからまだなんとも」 「でも「長い付き合い」って」 「……春、か」
後ろで追いかけてきてる二人の会話を聞き取ることは出来なかったが、まあさして重要でもないだろう。 そんな事より今は朝風さんとキマシタワーだ!
「早くしろ紅蓮ノ王(スカーレットキング)!」 「その読み方やめろ!」 「紅蓮ノ王(インフェルノロード)でもいいぞ?」 「どこのボスだよ!」
なんて。 好きな人とするような会話でもないいつも通りの掛け合いをしながらその人の背中を追いかける。 いつか彼女に並び立てる日は来るのだろうか? まあ、そのためにはまず下僕からランクアップしないといけないけれど。 佐藤紅蓮ノ王。今日も元気です。
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どもどもー。ネームレスです。 見切り発車の物語の結末ほど大変なこともない。 さて、この作品はこれで一応の完結となります。使い慣れないキャラは使うもんじゃないっすね。 実に3ヶ月の期間をおいての最終話となりましたが、結局最後まで勢いで書き切った! 見切り発車なんてそんなもんよ! さて、長くなりましたがこれにておさらばとなります。また次の作品でお会いしましょう。 あばよ〜。
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