愛しい虹へ〔完結〕 |
- 日時: 2015/03/31 22:47
- 名前: タッキー
- どうも、タッキーです
今回はいろいろあって一話完結ではなく二話完結です。これとあと一本でやっと中編って感じです(結構長かった なんだかんだで今回もオリキャラが出る・・・というか、オリキャラが必要なので一応簡単な説明をば
竜堂 岳(りんどう がく) 面倒くさいので単刀直入に・・・神様です。今回ばかりはこの神様の力が必要なのでまた登場。あとは黒髪のイケメンくんとだけ言ってきます
竜堂 レナ(りんどう れな) 岳くんの奥さん=神様。白っぽい桜色の髪でツインテール(ナギちゃんと違って後ろ髪は下ろしてます)。
竜堂 心(りんどう しん) 上の二人の子供ですが、前回同様寝てるだけです(おい
これくらいかな?あと一人でてくるけどあえて説明は抜きで。 ぶっちゃけるとハヤテとヒナさんの子供であるアカリちゃん(←例のあと一人)の出産話なんですが、いろいろあって1ヵ月以上の早産なので、病院とかより神様の力を頼ったほうが安心ということで岳くんたちが出てきます。
それでは「愛しい虹へ」の前編・・・
更新!
決して広くはない、かといって狭いとも言えない微妙な間取りの部屋。現在その部屋にあるモノと利用している人物といえば一つだけ寂しく設置していてあるベッドに、それに腰かけている女性。そして彼女の目の前でビデオカメラの調整をしている男だった。
「じゃ、まずは名前と年齢から言ってもらえる?」
「あ、綾崎ヒナギク・・・18です。・・・ってハヤテ?これ必要あるの?」
「いや、お嬢様がせっかくの記念だから撮影しとけって・・・」
「はぁ・・・。なんとなく予想してたけど、ナギったらまったく・・・」
思わず頭を抱えたヒナギクは盛大にため息をつき、ハヤテはカメラを放置して彼女の隣にゆっくりと腰かけた。
「やっぱり怖い?」
「・・・ちょっとね。でもハヤテが側にいてくれるから大丈夫・・・だと思う」
「はは、なんか弱気なヒナって新鮮かも」
「なっ!そ、それぐらいで笑わないでよ・・・」
「ごめん、ごめん。でも、なんか普通に喋ってるだけだと緊張しちゃうっていうか・・・」
ハヤテはクスクスと笑うことすらやめたが、決してその微笑んだ顔が崩れることはなかった。ヒナギクもハヤテにつられるかのように顔をほころばせ、二人はそれまでお互いに当たっていただけの指をそっとからませた。
「大丈夫。ずっと手を握ってるから・・・」
「うん」
「痛いときはちゃんと言って」
「うん。・・・でもそんな余裕あるのかしら?」
「そ、それはどうなんだろう?お互い初めてなわけだし・・・でも、ヒナが少しでも楽になるようにちゃんと努力するよ」
「あたりまえよ。努力しなかったら怒るんだから」
「はは、じゃあ余計に頑張らないと。それに・・・」
ハヤテはヒナギクのお腹を、彼女の身に宿った新しい命の分だけ大きくなったお腹を、そっと・・・本当にそっと撫でた。
「アカリのためにも・・・ね」
「うん」
12月12日、今日、綾崎ハヤテとヒナギクの娘が、綾崎アカリが・・・生まれる。
〜Prequel〜
『 冒頭で「あ、これアレな感じなんじゃね?」とか思ったヤツ今すぐ腹筋100回な 』
コンコン・・・
「ハヤテく〜ん、ヒナちゃ〜ん。今入っても大丈夫?お取込み中なら後でもいいんだけど」
「い、いえ!大丈夫です!」
繋いだ手は離さず、顔だけをドアの方に向けてハヤテが返事をするとまずはレナ、そのあとに彼女たちの子供をおぶった岳とで合計で三人が入ってきた。ハヤテたちはヒナギクが妊娠してからの世話は産婦人科や公共の病院ではなくレナと岳に一任していて、出産だからといってその例に漏れることはなかった。さらに言うとハヤテたちは出産だけは絶対に自分たち以外に任せるなとも言われていた。
「じゃあ、ちょっと余裕はあるけど別の部屋に移動だね。こっちだから、ヒナちゃんはついて来て」
「あ、僕も・・・」
「ハヤテくんはちょっと待機ね。ガウスが話があるって」
「あ、はい・・・」
隣でヒナギクがレナに手を引かれるのを盗み見たあと、ハヤテは岳のほうに焦点を合わせた。彼はときおり我が子のほうへ顔を向けてはそっと背中を揺らして寝心地のよい場を作っていて、それを見ているだけでハヤテは岳がどんなに自分の子を大事にしているか分かったような気がした。
「あの、話って・・・」
「まて。レナたちが出ていってしまってからだ」
岳はヒナギクがいなくなって少し広くなったベッドに子供を寝かせると肩まで覆うようにシーツをかぶせ、女性二人が開けっ放しにしていったドアを閉めた。
「で、話なんだが・・・」
ハヤテは一瞬目の前のことが理解できなかった。いや、理解したくなかったのかもしれない。自分の目の前で岳が頭を下げたということがどんな意味を表しているのか、想像もしたくもなかった。
「すまない。アカリちゃんのこと・・・」
「岳さん!!アカリは無事に産まれますよね!!?ヒナも大丈夫なんですよね!!?」
突然掴みかかってきたハヤテに岳は何も言わなかった。彼は決してハヤテから目をそらさず、ただ静かにハヤテを近くの椅子に座らせただけだった。
「シンが起きるから、静かにしてくれ」
「そんなことどうでも・・・!!」
岳から睨まれる。それだけでハヤテは何も言えなくなってしまった。
「黙って話を聞け」
「・・・はい」
岳はハヤテが頷いたのを確認するとため息をついて自分の黒髪をガシガシと乱暴にかいた。
「結論から言うとアカリちゃんが無事に生まれる確率は100パーセントだし、ヒナに何かある確率は0だ。さっき謝ったのはアカリちゃんについて少し黙っていたことがあったからなんだが、誤解させてしまったようだな。すまん」
「は、はぁ・・・。でもアカリのことって・・・もしかして早産なのとなにか関係が?」
「ああ。ぴったしそのことだ」
それまでずっと立っていた岳だったが、ベッドにゆっくり腰を下ろすと自分の子の髪を、母親譲りの白に限りなく近い透き通るような桜色をしたサラサラの髪を、そっと撫で上げた。 一般に妊娠してから出産までの期間は十月十日、約42週程度とされている。しかしヒナギクの場合、彼女が妊娠してから今日の出産に至るまでおよそ36週。早産は一般に妊娠22週から37週未満とされ、その中ではあまり重大なほうではないと思えるかもしれないが結局は出産予定日より早ければ早いほどリスクを伴うので、ヒナギクの出産にもそれなりのリスクがあるのは確かだった。
「まぁ、早産って言ってもアカリちゃんのほうはちゃんと体ができあがってるから問題ない。俺がいいたいのはその理由だ。」
「理由?」
「ああ。それには二つあるんだが最初の一つがこいつ。俺たちの子供のシン。そしてもう一つがヒナの持っている白桜だ」
正直まだピンときていないハヤテに構わず岳は話を進めた。
「白桜の能力はアテネとかから聞いてるだろ?庭城の外で使われた王族の力を庭城に戻すってヤツ」
「ええ。でも庭城はもうなくなってますし、それとシンくんの関係なんて・・・あっ」
「なんとなく分かっただろ?王族の力って言っても元をたどれば俺とレナの持ってる神様特有の力と変わらないし、その力を息子のこいつが持ってないわけがない。シンはまだ幼いから力を若干垂れ流してた状態だったんだが、お前たちはシンとの接触も多かったからうまい具合にそれを白桜が吸収してしまったわけだ」
「つまりその力の影響でヒナのお腹の中にいたアカリの成長が促進されたってことですか?」
「まぁそういうことだ。多分アカリちゃんが過去に飛んでこれたのもそれが大きな理由なんだろう。だからヒナには出産で少し辛い思いさせなくちゃならんかったんだが、本当に悪かったと思っている。すまなかった」
岳は目を伏せて顔をあげようとしない。こんなに弱い雰囲気の彼をハヤテは初めて見た。
「岳さん、もう一回聞かせてください。アカリは無事に生まれて、ヒナにも何もないんですよね?」
「ああ、絶対だ。保障する」
ハヤテは少し息を吸い込んで呼吸を整えると岳に向かって手を差し出した
「なら僕から言うことはありません。顔をあげてください」
「・・・」
「僕たちは岳さんたちに感謝してるんです。少し叱られたこともありましたけど、アカリと同じくらい僕とヒナを惹き合わせてくれたのはきっと、あなたたちだから・・・」
「それはお前たちが自分の力で成したことだ。俺とレナは何もしていない。それに感謝するんならヒナと・・・ナギちゃんや歩ちゃんとかほかに沢山いるだろ」
岳が不愛想に答えるのは照れ隠しなんだと前にレナから聞いたことあったハヤテは少しおかしくなってしまい、思わず微笑んでしまった。
「そうですね。アカリが生まれたら、ヒナと一緒にみんなのとこを回ってきます」
「それはいいけどヒナは一日以上安静な」
「あ、はい・・・」
いい感じではしまらなかった会話に岳は大きなため息をついたが、再び自分の子を撫でる彼の顔はとても嬉しそうだった。
「そういやそろそろヒナのところに行った方がいいぞ。ここを出て右隣りの部屋にいるから、ずっと手を繋いでいてやれ」
「はい!それじゃ、本当にありがとうございました!」
もうすぐと聞いて少し興奮しているのだろう。ハヤテは少しうるさいくらいに勢いよくドアを開け、それ以上の勢いで飛び出していった。
「ありがとう・・・か。それは俺の台詞なんだが・・・。まぁ、ハヤテがヒナを大切に想ってくれているのなら、俺は満足だ」
シンが小さな手で岳の指をつかむと彼は無意識に微笑んでしまう。それは家族の前以外では決して見せない親の顔で、いずれハヤテとヒナギクも同じ顔をするのだろうかと考えると岳の微笑みはほんの少しだけ大きくなった。
ハヤテが岳から言われた通り隣の部屋に入ってまず連想したことは「無菌」の二文字だった。自分が今までいた場所の空気が異常に思えるほどこの部屋の空気は澄んでいて、それが自分の気管をすんなり通っていくたびに不純物が一切混じっていないことが実感できた。しかし室温は結構高く、自己判断でも30度より高いことは容易に分かった。
「おっ。ヒナちゃん、旦那様のご到着だよ」
「もう、あんまりからかわないでよ」
その部屋に機械などは一切なく、あるモノといえばヒナギクの寝ているベッドのほかにもう一つ少し小さめのベッド、レナが腰かけている丸椅子。それから腰ぐらいまでの大きさのタンスとその上に掛けてある何枚ものタオル、そしてお湯の入っているであろうポリタンクとそのお湯を使うであろうベビーバス。
「ああ、それはアカリちゃんが生まれてすぐ入るお風呂みたいなものだから、あんまり気にしなくていいよ」
「はぁ・・・」
ハヤテが周りのモノを確認するように見ていると、ふいに袖を引っ張られた。振り向くとヒナギクがこっちを見つめていて、ハヤテはなんだか弱弱しいその表情に胸が貫かれるような感触を覚えた。
「ハヤテ・・・手、握って」
気を使って立ち上がったレナの代わりにハヤテは丸椅子に座り、ヒナギクの左手を両手で優しく包み込んだ。ハヤテがふとベッドを挟んだ向かい側で支度をしているレナを盗み見ると彼女はいつものホワホワとした雰囲気ではなく、まるで怒った岳を連想させるほど真剣な表情をしていて無意識のうちに鳥肌が立つのを感じた。そのせいかレナから声をかけられたときは思わず声が裏がってしまった。
「ハヤテくん」
「は、はい!」
「ハヤテくんはヒナちゃんの手をずっと握って、できればお腹を優しく押してあげて。そしてそれ以外は絶対に手を出さないで。ヒナちゃんが苦しそうにしているのが見ていられないからって私を手伝おうとか考えちゃダメ。今ここでキミが出来ることはヒナちゃんを励ますことだけだから、そのほかは全部私に任せなさい」
正直、歯がゆい気持ちでいっぱいだった。自分が一番何かしてあげなければいけない場面で出来ることの少なさを宣告されて、そんなことないと言い返してやりたかった。でもそんな我が儘をぶつけることが許されないことは分かっていたから、ハヤテはただ静かに返事をして頷いただけだった。
「・・・はい」
「うん。よろしい」
レナがは得したように頷くと今度はヒナギクに話しかけた。。
「じゃ、あと30秒くらいで陣痛始まるけど、ヒナちゃん大丈夫?」
「うん。むしろ大丈夫すぎるくらいよ」
(そんなことまで分かるんだ・・・)
レナがカウントを始める。数字が小さくなるにつれてヒナギクの中の恐怖心や不安は大きくなっていったが、それと同時にアカリにもうすぐ会えるという嬉しさや期待も同じくらい大きくなっていた。
「あと10秒・・・」
ハヤテはふいに手に自分以外の力が加わるのを感じた。ヒナギクのほうへ目線を落とすと彼女は微笑んでいた
「私、がんばるから・・。ずっと傍にいて」
5秒・・・
「うん。どこにもいかないよ」
3秒・・・
ハヤテが彼女と同じように微笑んで両手に力を込めると、ヒナギクも安心したようにもう一度微笑み返した。
「ハヤテ・・・」
2・・・
「うん?」
1
「ありがとう・・・。愛してる」
0
「うっ!ううううぅぅぅぅぅぅうう!!!!!」
ヒナギクの声にならない痛みの訴えと同時にハヤテの両手にも無意識に強い力がかかる。ハヤテは祈るようにヒナギクの手を握り返した。
「ヒナ・・・頑張って・・・」
どうも。 失礼ながら、ホント神様って便利だなぁ〜とか思っている今日この頃。便利すぎて登場させすぎるのもアレなんで少し押さえたいけど彼らがいないと話が回らないことが多々。これはいけませんね。
サブタイのほうは・・・まぁ、やりたかっただけなのであまり気にせずに。それから次はマジメなサブタイにするのでお安心を(?)。あと、上にくっついていた「Prequel」は「前編」という意味です。なんか前言った希ガスる
出産の様子については想像とかネットで拾った知識なのでそこはご勘弁を 次回は・・・まぁ、ぶっちゃけレナちゃんがいるのでアカリちゃんは無事に産まれはするんですが、取り敢えずお楽しみにです
それでは
|
|