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対象スレッド 件名: Re: 【ハヤテのごとく!×SAO】Badly-bruised
名前: ネームレス
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Re: 【ハヤテのごとく!×SAO】Badly-bruised
日時: 2015/09/20 23:21
名前: ネームレス

【第二話:マリオメーカーの鬼畜ステージ攻略動画見て、徐々に洗練されていく動きを見ていると「これをプレイしている人間って最後目が死んでそう」っていつも思う】

 《片手直剣使い必見! 森の秘薬クエ》

 進むと決めてまず、アイテムなどを買い込むために訪れた店に置かれていた無料の攻略本。恐らくはプレイヤーメイドと思われるそれには、少し驚くほどの情報量があった。
 街、村の位置、フィールドに出現するモンスター、店に売られているアイテム、値段、最初に取っておくといいスキル情報……etc
 こんなものを無料だなんて、随分気前のいい人がいたもんだ、なんて思いながらも製作者に心から感謝する。
 その中にあったクエスト情報の中にあった《森の秘薬》と言うクエスト。それは始まりの街の北西ゲートを出て、広い草原を突っ切り、深い森の中の迷路のような小道を抜けた先の《ホルンカ》という名の村にあるクエストらしい。小さい村らしいがちゃんとした《圏内》らしく、宿屋と武器屋、道具屋もあり《進むと決めた者》の殆どが最初に行き着く拠点として使うらしい。周辺のフィールドでも麻痺毒や装備破壊といった危険なスキルを使うモンスターはおらず、経験値を稼ぐのにもオススメらしい。
 そんなホルンカという村にあるクエスト、《森の秘薬》と呼ばれるものの概要は、病気で寝込んでいる娘のために薬の材料を手に入れたいが、それが危険なモンスターからしか取れない代物らしく、それを取ってきてくれたなら我が家に伝わる剣を冒険者に譲る__といった内容だ。
 そして、危険なモンスターというのはリトルネペントと呼ばれる、ホルンカの近くの森の比較的浅い部分に現れる植物系モンスターのことで、秘薬の材料になるのはその中でもごく稀にしか現れない《花つき》と呼ばれる個体らしい。
 さらにリトルネペントは攻撃力こそ初期モンスターの中では高い部類で、腐食液による武器や防具の耐久力を減少させる厄介な攻撃があるらしいが防御力は低く攻撃もバリエーションが少なく注意すれば難なく避けれる。弱点を正確に狙えばレベル1初期装備でも倒せるらしい。
 もちろん、装備アイテム類はしっかり整えておくに越したことは無いが。

「よし、行くか!」

 攻略本通り、スキルには片手直剣と索敵を選び、アイテムもポーションを買えるだけ買い、僕は少しの間だがお世話になった最初の街から旅立った。


 ◯


 道中、何匹かのモンスターとエンカウントしたものの、最初の街周辺のモンスターはソードスキルさえ使えれば勝てる__これは攻略本ではなくアインの言だ__という言葉通り、特に慌てることなく倒した。
 不思議な気分だった。
 ここはデスゲーム。明確なまでに「命が数値化されゼロになった瞬間に現実世界の自分も死んでしまう」ことが確定されている世界。
 ふわふわした頭で考えていたことがある。もしこれがデスゲームではなかったら。もしデスゲームというのが茅場明菜の嘘であれば。
 すでに何百何千と被害が出ている今、それだけの数現実世界に「帰還」している事になる。なら、僕たちもナーヴギアを引っこ抜いてこの事件はお終い。
 そうならないのはここが本当にデスゲームだから。
 だというのに、僕は慌てなかった。少し前までの僕なら、きっと慌てて、まともにソードスキルも出せず死んでいただろう。
 もしその理由が僕がこの世界に「慣れた」ということなら喜ぶべきことだろう。だが、理由が「現実を直視出来ていない」のであれば__僕は近いうちに死ぬだろう。
 覚悟を決めるべきだ。僕が、「kou」として生きる。その覚悟を……。


 そんな僕は今、ホルンカの村の中で隠れていた。

「……ままならないなぁ……」

 理由? あると言えばあるし、無いと言えば無い。

 ただ僕が知らない人の集団にビビってるだけだ。

「情けないにも程があるぞ僕……!」

 頭のどこかで野々村が呆れたような声を出した__ような気がした。
 僕はなぜか隠密スキルも取ってないのにスニーキングミッションに精を出し、無事途中で倒したモンスターの素材を売却し茶革のハーフコートを購入し即装備。予備のスモールソードも買っておく。上位のブロンズソードもあったが、耐久力が低くリトルネペントの腐食液とは相性が悪いらしい。
 そこまで考えて気付く。自分の知識は攻略本ありきの知識だと。当たり前としては当たり前。しかし、生き残ると決めたkouにはそれだけでは足りない。
 今後、もしもっと強い敵と出会ったら装備はどうするか。もし最前線まで行くとするなら、いつまでも攻略本に頼ってもいられない。自分で考え、行動する必要もあるはずだ。
 少し考え、

「金属装備は無い」

 フルプレートの鎧を着た自分を想像。絶望的に似合わないし、なんか着せられてる感が凄い。なにより動きにくいし、あまりモンスターの攻撃を受けたくないkouとしては当たる前提の装備はしたくない。
 なら部分的に金属をあしらった装備なら? どこか勇者然とした自分を想像する。__ダメだ。黒歴史だ。命の危険をギリギリまで減らせるにしても着てるだけで正気度が減って行く気がする。
 やはり革装備。これなら地味でいいし動きやすい。攻撃をあまり受けたくないkouとしてはベストだ。

「今後、可能な限りは革装備を貫こう」

 __今装備してるコートのような。
 そこまで考えてから早速店を出て、隠れながら圏外へと向かう。
 これから自分のこと全てを自分で考えていくというあまりにも普通で、それでいてとても難しいことをしていかなければならないことに心が折れそうになるkouだった。

「あ、クエスト」

 クエストを忘れていることに気づき、さらに未来への不安が高まるばかりだった。


 その後、僕はすぐにクエストを受ける。
 その時、実際に今にも消えてしまいそうな寝込んでいる少女を見てしまったせいか、僕は昔のことを思い出し泣きそうになってしまった。
 昔、僕が風邪で寝込んだ時、野々村がそれはもう慌てふためきながら__しかし看病は完璧だった__世話をしてくれた。
 そのことを思い出したせいか、例えNPCだとわかっていても、邪険に扱えるはずもない。

「待ってて。今、薬の材料を持ってくるから」

 理解できるはずもない。何故なら彼女はNPCなのだから。ただ決まった行動を繰り返すだけの、ゲームを円滑に回すための存在。
 でも、そんな僕の言葉を聞いて、その少女は笑った__気がした。
 幻想かもしれない。ただ、そうであってほしいと願う自己満足。それでも、僕はその笑顔に勇気をもらい、森へと駆け出した。



「おい、あれ」
「そうだな。あいつにするか」



 森につき、すぐに索敵を開始する。モンスターは倒れることでリポップする。つまり、リトルネペントを狩り続ければレアな花つきとも出会えるはずだ。
 索敵は自分と敵の簡単なレベル差もわかる。カラーカーソルが白に近ければ余裕で倒せるレベル。赤に近くなる程強く、黒が混じったような色になると現在のレベル差ではまず勝てない、というものだ。
 あくまで簡易的なもので、パーティを組むなり装備を新調するなりとその差を埋めることは可能だが、今現在においてはかなり心強い。
 早速カーソルが近くに現れる。色はちょっと濃いめの赤。油断しなければ倒せるレベル。僕はそこに向かい、案の定というかリトルネペントを発見した。カーソルの周りには狭いイエローの縁取り。つまり、クエストのターゲットであることを示す。

「……よし」

 覚悟は決めた。武器を手に取り、不意打ちの準備。
 弱点はウツボ部分と太い茎の接合部……!

「はぁっ!」


 あれからたくさん狩った。数は五十を超えたあたりで数えるのをやめた。とにかくたくさん狩った。
 途中、《実つき》と呼ばれる危険なネペントとエンカウントしたりと心臓が破裂するかと思ったけど、なんとかやり過ごしとにかくリトルネペントをひたすら狩り続けた。
 レベルも上がり、今ではレベルは4である。ここまで上げるのに五時間ほどかかったけど。

「……そろそろ出てくれないかな」

 武器の耐久力は限界にきていて、予備の方を現在使っているがそっちも耐久力が半分を切った。流石にキツイ。耐久力回復のために一旦村へ戻った方がいいかも……。
 と、そこまで考えていた時。

「い、いた?」

 《花つき》がそこにいた。
 一瞬幻かとも思ったが、たしかに花つきがそこにいた。
 噂では花つきは花が完全に散ると実つきになるらしい。そうなってしまっては折角のレアモンスターもただの地雷モンスターだ。勝負は短期決戦。一気に行くしかないと覚悟を決める。

「……っ!」

 駆ける。
 敵は花つきが一体、取り巻きが二体。しかし、すでに数多くのリトルネペントを狩り、その途中でブーストの練習もしたkouの敵ではない。

「フッ!」

 短く息を吐き、片手直剣ソードスキル《ホリゾンタル》を放つ。単発水平切りの斬撃は青いライトエフェクトを宙に走らせ、踏み込みとソードスキルに合わせた手の振りで速度と威力をブーストさせる。《ホリゾンタル》は見事弱点へとヒットし、花つきのHPを三割ほど減少させる。

「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 叫び声を上げながら取り巻きとともに蔓を鞭のようにしならせ攻撃をしてくる。しかし、技後硬直がすでに終わり後ろへ下がっていた僕なら避けるには容易。
 目の前で花つきの頭上の実から徐々に花びらが散り、実自体も巨大化していく光景は心臓に悪いが焦らない。
 __大丈夫。これぐらいなら、野々村の方が百倍強い!

「はぁ!」

 攻撃の隙間を抜い、花つきへ追撃のホリゾンタル。さらに三割減少。この調子なら、あと二撃で倒せる。
 自分の中にある最強の存在、野々村を強くイメージする。
 野々村ならどう動くか、野々村ならどう倒すか。
 その動きを常に間近で見てきたkouは少しずつ自身の動きを自身の中にある野々村の動きへとトレースさせていく。
 __もっと早く、もっと鋭く、もっと強く!!!
 その後、三十秒ほどで花つきを倒し、取り巻きも一分ほどで倒しkouはキーアイテムを入手することに成功した。


「疲……れた」

 満身創痍。僕は今まさにそんな状態だった。
 ここはゲーム。意識がある限りは走り続けれるし剣は降り続けられる。だとしても、すごく集中した後は倦怠感がすごい。
 でも、同時に達成感もあった。やり遂げた、一人でもクリアできたんだという、達成感。

「……よし」

 いつまでもその場にいてはモンスターが寄ってくる。
 さっさと帰ってあの少女の元へアイテムを届けなきゃ!
 ……実際にアイテムを渡すのは母親の方だけど。

「おい」
「え?」

 声をかけられた。反射的に振り向く。
 そして、

「っらぁ!」
「っ!? ぐっ!」

 ドン、という衝撃。まともに受けることも出来ず、HPは二割ほど減少。受身も取れず地面へと転がってしまう。
 そして、僕の頭の中はパニックになってしまう。
 __なぜ!? どうして!? マップ上にカーソルは無かった! 油断してたとはいえ、索敵スキルも持ってるのに!
 グルグルと頭の中を駆け巡る思考。ようやく顔を上げれば、そこにいるのは二人のプレイヤー。そこにきて、ようやくカーソルを確認する。

「よう」
「う……ぁ……」

 恐怖。
 ここにきて僕は、ようやく感情が状況に追いついた。
 __マズイ。マズイマズイマズイ!
 __死にたくない死にたくない死にたくない!
 恐怖に彩られたであろう僕の表情を見下ろしながら、プレイヤーは口を開く。

「とりあえず、アイテムよこせや」



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 ども! ネームレスです! 二話目です!
 いやぁ、まさか続くとは。自分でもびっくりなんだなこれが。
 今回はアニメでは無かった原作8巻「始まりの日」を題材にしております。
 弱虫東宮がなんだかんだでゲーム内でやっていく話。果たして、彼の行動は勇気か、もしくは思考の麻痺か。これからも彼には頑張って行ってもらいましょう。
 さて、早速オリジナル展開になってしまったが私は謝らない。そしてもし続きができなくても謝らない。
 それでは次回があればそこでお会いしましょう! ネームレスでした!