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対象スレッド 件名: Re: 想いよ届けB〜王族の庭城が滅びるとき
名前: どうふん
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Re: 想いよ届けB〜王族の庭城が滅びるとき
日時: 2015/02/04 21:38
名前: どうふん


まあ、ここまでやる気はなかったんですが・・・
書きながらエスカレートしてしまいました。

前回投稿のことです。

私が言うのも変ですが、今読み直して、複雑な気分です。

ただ、ハヤテとヒナギクさんは一度、本気でケンカさせないと、とかねてから思っていました。

ハヤテ君。我慢するだけが優しさではないよ。




第10話 : 天女の苦悩 女神の微笑


何故この人は必ず唐突に現れるのだろう?ヒナギクでなくとも不思議なところである。

しかし世話が焼けるとはどの口が言うのだ。今回の仲違いの元凶が。
しかし、つい先ほどまで生死不明で心配していた相手のいきなりの登場に動転しているヒナギクはそのあたりに頭が回らない。
「み、見てたの?じゃなくて無事だったの」
「見なくても、大体想像はつきますわ。大方、二人で『好きだ』『好きだ』と言い争った挙句、お互い自分より相手を大事にしすぎて喧嘩別れしたってところでしょう」
アテネは後半部分をスルーした。

ヒナギクは朱に染まって動けなくなった。
(い・・・一体何なのよ、この洞察力は)

「まあ、いいですわ。久しぶりに二人でガールズトークでもいかが」
「え、でももうすぐ授業が」
「今さら何を言っているのです。理事長と生徒会長の重要会議は授業より大切に決まっていますわ」
「重要会議?今、ガールズトークって言っていなかったかしら」
「まあ、細かいことにこだわることはありませんわ」


******************************************************


理事長室の応接椅子に腰かけ、二人は向き合っていた。

「まず、あなたには謝らなければいけませんわね、ヒナ。本当にごめんなさい。ひどい怪我をさせてしまって・・・。この上もしハヤテに万が一のことがあったら、私はあなたにどれだけ謝っても済まないところでしたわ」
「あの時私は・・・本当にハヤテ君が戻ってこないかも、と思っていたの」
「では、戻ってきたことはちゃんとわかっているのね。いや、戻った、というのはおかしいわね。ハヤテの心はずっとあなた一人のものでしたわ」
「本当に・・・そうなのかしら」
「あら、自信が持てないの?」

ヒナギクは答えられない。
ハヤテから告白されて以来、ずっと信じていたものが実は曖昧であったような気がしていた。
それほど、今回の出来事は衝撃が大きかった。左足だけでなく、心を傷つけていた。
しかも、事情はどうあれ、その原因を作りだしたのは正に今目の前に居るアテネに相違ない。鼻白むような思いもあった。

アテネは頓着せず、話を続けた。
「いいこと、ヒナ。ロイヤルガーデンに向かう前、ハヤテは私にはっきりと言っていました。
『ヒナギクさんはきっとわかってくれるから大丈夫』
この重みがわかるかしら?喧嘩別れをしたそのすぐ後でも、ハヤテはあなたから愛されていると信じて疑っていないのよ。
ハヤテにとってのそんな存在は、私の知る限り誰もいませんわよ。もちろん、この私を含めてね」
「え、そう?」ヒナギクは首を傾げた。ハヤテはむしろ他人をすぐに信じる方ではないのか。
「ちょっと違うわね。ハヤテは他人の言うことを信じる度が過ぎて、ぶつけられた言葉を真剣に受け取ってしまうのよ」
(た、確かにそうね・・・)身に覚えがありすぎる。

「結局それはその人を信じ切ることができないということでもあるの。特に自分が愛されている、ということにハヤテは自信が持てないの。

実際にハヤテは愛してくれるはずの人、身近な人たちに裏切られ、傷つけられて来たのよ。
そればかりか、騙されて自分では気付かずに手を汚したことさえある。

そのハヤテがそこまで言うのです。それをヒナがわかってあげないといけませんわ」
「わ、私が怒っているのはそんなことじゃないの。ハヤテ君が天王州さんとロイヤルガーデンに向かう時、私には何も本当のことを教えないで、天王州さんと一緒に・・・」
「わかっているわよ、ヒナ。だけどあなたもわかって上げて。まず、ヒナに知らせまいとしたのは私よ。責めるなら私を責めなさい。」
「だけど、だけど・・・」
「ヒナ、ハヤテはね、私にも来ないでほしいと言ったのよ。自分一人で決着を着けたいって」

アテネのセリフにヒナギクは混乱した。もともとはアテネの始めた戦いではなかったのか。
「どういうことなの?」
「キング・ミダスが欲深い人間の肉体を乗っ取って蘇ったということは聞いているわね。その人間というのがハヤテの良く知っている人間なのよ。切っても切れない関係の」
ヒナギクはハッとした。

「まさか・・・ハヤテ君の親?」
「ええ、両親。キング・ミダスが言ってたのよ。どういういきさつかはわからないけど。
大方、悪事のツケが回って追われている最中に、付け込まれて誘惑されたんでしょう。

あなたも知っているわね。かつては私も疑心暗鬼に陥っている心に付け込まれてヤツに呑み込まれそうになったからわかります」
疑心暗鬼の原因については、ヒナギクは知らないし教える必要もない。

「ハヤテはこれを知った時、初めて行くことを決断してくれたの。乗っ取られて意思を失っているとはいえ、もうこれ以上両親に悪事を働かせることはできない、子である自分が引導を渡す、と。
だけどいざとなると迷った。あんなろくでなしでも、憎んでいても。だからあれだけキング・ミダスに止めを刺すのを躊躇ったのよ。

ハヤテは自分自身の決着を着けることはできた。
その代わりに親殺し、という業を背負って、自分のやったことに傷ついているのよ。

恥ずかしいけど・・・責められても仕方ないけど、私も終わってから気付いたの」

「だからハヤテ君は個人的な問題って・・・。そんな・・・ハヤテ君・・・・。何でそんなに何もかも自分で背負おうとするのよ」
「何でかしらね・・・。それは私にもわからない。でもヒナ、あなたならいつかわかって上げられるのじゃなくて」
「私が・・・」
「あなた以外に誰がいるの。そして支えてあげられるのも。
ヒナ、あなたはハヤテと恋人になってどれくらいになるの?」
「・・・4ヶ月くらいね」
「友達だった時間を合わせたら?」
「1年、いや11ヶ月」
「それは羨ましいわね。私がハヤテの恋人でいたのはせいぜい2ヶ月よ。しかもこの世界の時間で言えば1週間も経ってはいない。そしてそれが、私とハヤテが会っていた全てよ」

(あ・・・)
ハヤテに十年間も想われたアテネ。それを羨んでいたヒナギク。
しかし、アテネにしてみれば・・・。
ヒナギクは初めて気づいた。


ヒナギクを見つめるアテネが優しく微笑んだ。