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対象スレッド 件名: Re: 想いよ届けA〜恋人はアイドルでヒーローで
名前: どうふん
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2014/11/10  美樹 ⇒ 美希
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Re: 想いよ届けA〜恋人はアイドルでヒーローで
日時: 2014/11/09 21:36
名前: どうふん

異性から憧れられている恋人を得た二人は、心が優しい故に、周囲に気を使う立場でもあります。
ただ、心が通じている友人たちは二人を応援してくれましたが、必ずしもそうではない相手もいます。
からかい、冷やかしくらいならまだしも、悪意との遭遇もそこに。



第五話(アイドルがヒーロー(?)に変わる時)


ハヤテは黙って黒板に向かい、落書きを消そうとした。が、すぐ隣から湧き上がってくる異様な気配に凍り付いた。
ヒナギクの眼は机に座るクラスメイト達に向けられ、全身からオーラが立ち上っている。
更に・・・その右手は正宗を握り締めてわなわなと震えている。
先ほどの天女が、さながらメモタルフォーゼを済ませた如く一変していた。
教室はヒナギクの怒気・殺気に打たれ、身動きする者もいない。

「マズイ・・・」
数秒おいて気を取り直したハヤテは、そっとヒナギクの後ろに回り、有無を言わさずヒナギクを抱きかかえ教室の外にダッシュした。


***********************************************************************:


「全く・・・。何で教室から連れ出したのよ」

たまたま開いていた物理準備室にハヤテはヒナギクを連れ込んでいた。
ヒナギクはまだ怒りが収まらず、目の前のハヤテに仏頂面を向けていた。
もうすぐ始業式となる時刻であるが、それどころではない。

「はあ、済みません。だけどあんな恐いヒナギクさんを久しぶりに見ましたので・・・。このままではと・・・」
今はホッとした気分の方が強いがハヤテの声は少し震えている。
「恐い・・・?久しぶり・・・?何よ、私を時々恐いと思うわけ?」
「い、いえ、決して」時々もへったくれもない。今のヒナギクが恐ろしい。

「大体ね。私が何に怒っているかわかっているの?」
「は?僕たちの仲をああやって暴露されて・・・」
「そんなことはどうでもいいわよ。退院パーティには沢山のお友達が、ましてあの三人組もいたんだから、いずれ知れ渡るとは思っていたわよ」
「え、それじゃあ」
「私はね、最愛の恋人を侮辱されたことが許せないの」

確かに・・・あの落書きの悪意の籠った表現は全てハヤテに向けられていた。
クラスの面々もその辺りは意識してヒナギクを直接侮辱するのは避けたのだろう。
だが、ヒナギクにとっては自分を侮辱されたこと以上に許せないことだった。

「ありがとうございます、ヒナギクさん。そう言ってもらえるのは嬉しいです。だけどあれは大体本当のことですし、僕はそんなに気にしてませんよ」

「ホントのこと、なの?ハヤテ君は不幸が似合うの?」
「ま、まあ客観的に見てそうじゃないですかね」
「主観的に見て頂戴。今ハヤテ君は不幸なの?今居るのは悪い場所なの?」ハヤテは詰まった。

「・・・済みません、そんなことないです。僕は・・・今、幸せです。ヒナギクさんも居てくれますし。
だけどあの場はヒナギクさんが本気で怒っていたのがわかりましたので、止めないと・・・と。それだけです。
済みませんでした、ヒナギクさんの気持ちも考えず。」
ヒナギクは黙った。

「ヒナちゃん、ハヤ太くん、ここに居たの?探したんだよ」

やってきたのは千桜と泉だった。遠く離れた位置で、陰から顔を半分出している美希や理沙も見えた。
「何よ?」ヒナギクの眼光に射抜かれた泉は震えている。
「ご、ごめんね、ヒナちゃん。あの、ヒナちゃんがハヤ太君と付き合っていると皆に言ったのは私なの、ごめんなさい。だけどあんなつもりじゃなくて・・・」

「じゃ、どうしてあんなことになったの」
涙目で怯える泉にヒナギクは幾分口調を和らげた。

「校庭で仲良くしている二人を見た子がいて・・・、『二人はアヤシイ』って・・・。あの、その・・・私が・・・二人お付き合い始めたみたいだよって・・・言ったら・・・。だってパーティでもみんながそんなこと言ってたし・・・。私もショックだったんだけど・・・。そしたら、『冷やかしてやれ』とか、『許せない!』って怒る子もいて・・・」
千桜が口を挟んだ。
「ヒナ、済まない。私はやめろって言ったんだが、群衆心理を食い止めることができないで・・・。雰囲気に流された連中が大半で、皆が皆あんなことを考えているわけじゃない。

ただ、一つ弁解すると、常に品行方正な生徒会長が遅刻すれすれに廊下を突っ走り、当の綾崎君と抱き合うように飛び込んで来たから、余計にあんな雰囲気になったということもあるんだ」

ハヤテにしてみれば、直前に鼻白んだゆきがかりで、ヒナギクをちょっと困らせてやろうかとスピードを上げ、ヒナギクは持ち前の負けず嫌いでハヤテと競り合い、ゴール直前でもつれあっただけだが、周囲にはそんな風に見えたということか。考えてみれば普段、ヒナギクはそんな行為を注意する側なのだ。

「みんなヒナちゃんの怒るのを見て、とんでもないことをしちゃったって慌ててるんだよ・・・。ねえ、教室に戻ってきて」


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二人は教室へ戻った。最前の落書きも異様な雰囲気も消えていた。
本気で悪意を持っているのはごく少数で、尻馬に乗ったり、流されていた連中が正気を取り戻したということだろう。
だが後ろめたさが残っていたらしく、その日二人に近寄ってくるクラスメイトはほとんどいなかった。


こんなこともあって、ほとんどの生徒は理解した。
下手に二人の仲を邪魔しても無駄どころか命取りになることに。
例外と言えば虎鉄くらいなものだが、ハヤテに瞬殺された。
それでも、こそこそと陰でハヤテを睨みつけている男子生徒はいた。

付け加えると、ヒナギクを宥める泉のセリフに、ぽろっと本音が紛れ込んでいたことにハヤテもヒナギクも気付いていない。
ただ、千桜だけが、敏感に気づき、胸に痛みを感じていた。