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対象スレッド 件名: Re: 想いよ届けA〜恋人はアイドルでヒーローで
名前: どうふん
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Re: 想いよ届けA〜恋人はアイドルでヒーローで
日時: 2014/11/06 23:04
名前: どうふん

ハヤテとヒナギクさんが初めて会った場所。
そこには出会いを演出したキューピッドがいました。
原作に再登場したことはないと思いますが、ヒナギクさんは、そのキューピッドに今でも愛着を持ち、見守り続けているのではないでしょうか。




第四話(想い出の木の下と上で)


「チャー坊はまだ元気にしているんですか、ヒナギクさん?」
チャー坊とはハヤテとヒナギクが初めて会ったとき、二人で助けたスズメのヒナのことである。
「ええ、元気よ。もう両親は出て行っちゃったけど、チャー坊は元気に過ごしているわ」
言うまでもなく、この二人にとってはあまり他人事ではない話である。
「え、まあ、鳥ですからね。人間とは違いますよね」
フォローになってないが、ヒナギクに気にする様子はない。
そんなことより・・・、といった感じでハヤテに語り掛ける。

「ここで、私とハヤテ君は出会ったのよね。そしてチャー坊を二人で助けて」
「いきなり木の上から声を掛けられたときはびっくりしました。そして飛び降りて僕は強烈な蹴りを顔にもらっちゃいましたね、あはは」
「もう。やなことばかり思い出さないでよ」
空気の読めないハヤテに、ヒナギクはちょっと顔をしかめた。
(確かにロマンティックな出会いじゃなかったけど。全く鈍感なんだから)


今朝のハヤテの推測は概ね間違っていない。
ヒナギクは今朝、今から1時間も早く学校に着き、しばらく校門でハヤテを待った。
(まあ、ナギもいることだし、さすがにこれは無理よね)
そして生徒会室で貯まっていた書類を片づけながらハヤテが来た時に備えて紅茶を用意していた。
(まあ、仕方ないか)
そして今。今度こそハヤテは来てくれると信じてここに佇んでいた。
(まあ、来てくれたから良しとするか)


「毎朝、チャー坊と会っているんですか?」
「学校に来る日はね。私とハヤテ君で助けたヒナだもん。元気に育ってもらわなきゃ。夏休みはたまにしか学校にきてないから10日振りになるわ」
しかし、今は姿が見えない。
「朝の散歩に出ているのよ。もう戻っている頃なんだけど」
ヒナギクの顔に少し不安がよぎる。
そろそろ始業時間が近づいている。もう教室へ行った方が・・・とハヤテが焦りだしたころ、スズメが飛んでくるのが見えた。
しかし・・・

「二羽・・・ですね。違いますね、ヒナギクさん」
しかしヒナギクはハヤテの声が聞こえないかのようにじっと二羽のスズメを見つめている。そして叫んだ。
「あれ、チャー坊だわ」
「え、え?」
「チャー坊には首周りに白い模様があるの。あれは間違いなくチャー坊よ」
(ヒナギクさんはそんなにチャー坊を見守っていたのか。でも二羽一緒ということは・・・)

「チャー坊、彼女ができたのね。おめでとう。」
ヒナギクの弾んだ声のトーンが上がる。
チャー坊たちにぶんぶんと腕を振っている。
もっともスズメの雌雄を判別するのはなかなか難しい。正確には彼女か彼氏かわからないが。

チャー坊もヒナギクのことがわかるのか、ヒナギクとハヤテのすぐ近くを飛び回っている。
「チャー坊。私もね、こんな素敵な彼氏ができたのよ。あなたを助けてくれた人よ」
そんなヒナギクに釣り込まれたハヤテも、笑いながら手を振っている。

二羽のスズメは一しきり空中を戯れた後、巣へ戻って行った。
「まるでお披露目会みたいですね」
「ええ、お互いにね。お披露目してくれたのかしら、それとも私たちがしたのかしら」
ヒナギクがハヤテに向かってウィンクした。

それだけでハヤテは胸が締め付けられ意識が飛びそうになる。
ハヤテは両手を伸ばしてヒナギクを抱き締めようとした。
ヒナギクも両手を伸ばし・・・

ハヤテの胸を掌で押しとどめた。
「ここは学校よ、ハヤテ君。私は生徒会長なんだから」

ヒナギクはいたずらっぽく笑っていたが、ハヤテは気分を台無しにされた感がしてちょっと鼻白んだ。
(そりゃないでしょ、全く・・・。まあこれもヒナギクさんらしいというか・・・良いところ・・・なの・・・かな)
もっとも、自分が先ほどヒナギクの気分を台無しにしかけたことは気付いていない。


その時、始業の10分前を示す予鈴が鳴りだした。
この場はとりあえず終了となり、二人は教室に向かってダッシュしていた。

もともと超人的な体力を持つ二人のこと、予鈴の鳴り終わる前に教室へと飛び込んだ。


「間に合いましたね、ヒナギクさん」
笑いかけたハヤテだが、教室の雰囲気がおかしいことに気づいた。

クラスメートの大半、正しくは男子生徒の全員+女子生徒の半数がハヤテに向かい、怒り、嫉妬、或いは不快感といったネガティブな視線を向けていた。
一人、泉が立っておろおろしている。

黒板には、いわゆる相合傘の落書きが書かれている。
向かって傘の右側には、「桂ヒナギク」、左側には、「綾崎ハヤテ」。

ご丁寧にも相合傘にはヒナギクとハヤテそれぞれに向けた書き込みがなされていた。ヒナギクの枠には「完璧超人」「不釣り合い」「今からでも遅くない」「考え直して」、ハヤテの枠には「借金執事」「お前には不幸が似合ってる」「身の程を弁えろ」「会長を巻き込むな」といった内容が様々な筆跡で並べ立てられていた。
一人や二人の仕業ではない。
 
(なるほど・・・。ヒナギクさんの恋人になるとはこういうことか)