Re: 想いよ届けA〜恋人はアイドルでヒーローで |
- 日時: 2014/11/14 07:59
- 名前: どうふん
- 周囲のなんやかんやはここで一段落とします。
まあ、あまり引きずるような問題でもないと思いますので。
本作はこれから後半に入りますが、二人の関係性についての手前勝手な考察を交えて進めてみます。
第6話(愛が生まれた日:ヒナギク編)
「新学期早々、いろんなことがありましたね」
「全く。朝は折角いい気分だったのに台無しよ」 帰り道の途中、二人は肩を並べて公園のベンチに腰かけていた。 ちなみに、二人はわずかに間を取り、ぎりぎりで触れない様に座っている。 知り合いがいつ通ってもおかしくないエリアで、人目を気にしているせいか。
「まあ、今日が始業式で良かったんじゃないですか。午前中に学校は終わったし、明日はみんな普段通りになると思いますよ」 「まあ、そうかもね。でも、邪魔が入らなければ、あの落書の実行犯には一撃食らわせてやりたかったわ」 あはは・・・とハヤテは空笑いする。
「しかし、あれが・・・『釣り合いが悪い』というところが世間の評価なんでしょうね。」 「そんなこと言ってほしくないわね。大体ずっと片思いしていたのは私の方じゃないの」
「それ、考えてみれば不思議ですよ、ヒナギクさん。僕は今でも時々疑問に襲われるんです。 ヒナギクさんは僕なんかのこと、どうして好きになってくれたんだろう、って」 ヒナギクはしばらくハヤテの顔を眺めていたが、やがて、ふっと笑った。 「知りたい?」 「はい、是非とも知りたいです」 「だったら教えてあげるわ。ホントは今日『会った』ことの意味を気付いていたらわかってくれると思うんだけどな」 「え、今日『有った』ことの意味、ですか?」
首を傾げるハヤテに、ヒナギクは笑いかけた。 「初めて『お・会・い』した時のことよ。 私があの木の上からやっとの思いで飛び降りたとき・・・。ハヤテ君はこう言ってくれたでしょ。『呼んでくれればいつでも助けにいきますよ』って。 私ね、あんなこと言われたのはずっとなかったの。ちょっと変な言い方だけど、いつも助けを求められる側だったから。 でもね、昔、私が泣き虫で弱虫で、いつもお姉ちゃんに助けられていた時、お姉ちゃんが私にいつも言ってくれていたのよ。『困ったときは、大きな声でお姉ちゃんを呼びなさい。いつでもどこでも助けに行くから』って。 それを思い出しちゃった・・・。 嬉しかったのよ。今でも私を守ろうとしてくれる人がいるんだ、って。
そしてチャー坊がカラスに襲われて、私が何も出来なかったとき、助けてくれたのはハヤテ君。あの子が今元気なのは二人の共同作業みたいなものじゃない。
あの時ね、漠然とだけど・・・うーん、何と言ったらいいかしら。 そうねえ、この人となら一緒にいろんなことをできるんじゃないかな、って思ったの。 何となくこのまま別れるのが惜しくて生徒会室にご招待したのよ。 まあ、それだけじゃないけど」 (このまま、この男の子に弱みを握られたままお別れするのが癪だったってこともあるんだけど)
朝は(もしかして・・・)、と軽い気持ちで桜の木に向かったハヤテだが、ヒナギクはそこまでの想いをその場所に持っていた、ということに初めて気付いた。 チャー坊をずっと大切にしていた理由もわかり、胸が熱くなった。
(そんな昔からヒナギクさんは僕のことを想っていてくれたんだ。 それに全く気付いていなかった僕は一体何なんだ・・・。それどころか、僕はずっと・・・ 今日だってそうだ。「『有った』じゃなくて『会った』ことの意味」か・・・。 だから待っていてくれたんだ、ヒナギクさんは)
「その時からハヤテ君のことが気になっていたの。 ハヤテ君も気付いているでしょ。初めて会ったとき、あんなこと言ったけど、本当は私を名前で呼んでいる男の子はハヤテ君だけよ。
そして、旧校舎で私がハヤテ君に助けて、と叫んだ時、本当に助けに来てくれたわね。 はっきりとハヤテ君のことが好きになったのはこの時と思うわ。まだ自分では気付かなかったけど。
気づいたのはその後しばらくしてからね。まあ・・・その話は勘弁して」 「え。そこまで聞いたら最後まで聞きたいです」 「だったらいつかは教えてあげる。今日はここまでよ。ところで・・・」 ヒナギクの瞳が怪しく光る。
「ハヤテ君が私を好きになってくれた経緯も聞いておきたいわね」
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