Re: 想いよ届けA〜恋人はアイドルでヒーローで |
- 日時: 2014/10/29 22:42
- 名前: どうふん
- 前回投稿において、ヒナギクさんのセリフが前作と若干変わっていますが、単なる言葉遊びで大した意味はありません。
ヒナギクさん、ごめんなさい。
夏休みの終了と共に、ハヤテもヒナギクさんも自分の家庭に戻ります。 そして、そこには彼らの戻りを待っている人たちが。
<第二話:待ちわびた想い>
同日同時刻−、三千院家のお屋敷
ナギは部屋のバルコニーで星空を眺めていた。 「まだ起きていたんですか、ナギ」やってきたのはマリアだった。 「ああ。この星空をハヤテも見ているのかな・・・と思ってな」 「明日、ハヤテ君が帰ってきますね」 「ああ、そうだな」 気のなさそうな返事であったが、「待ちきれない」想いは表情に満ちている。 それでもハヤテやヒナギクの気持ちを考え、自分の想いを整理するため、ずっと我慢をしてきた。
そんなナギを優しく見つめるマリアは、 「ナギ、成長しましたね」 「もういいよ、聞き飽きた」ナギはすねたように横を向いた。
しばしの沈黙の後、ナギは口を開いた。 「何でだろうな。ハヤテというのも不思議な奴だ」 マリアは黙って聞いている。
「何でハヤテは、私をあれだけ必死になって守ってくれるんだろう」 「決まっているじゃないですか。あなたはハヤテ君の命の恩人で、大切なご主人様で・・・」 ナギは、マリアのセリフを手を振って遮った。 「そんなことはわかっている。だけど、ヒナギクより私を優先する理由にはならないだろう。 あのヒナギクが、ずっと私にヤキモチを焼いていたと言っていたぞ」 ナギの表情に自慢げな、しかし口惜しげな色が浮かぶ。
(これからも優先してくれるとは限らないですけど)マリアはそんなセリフを呑込んだ。
「ナギは幸せ者ですね。それだけあなたは愛されているんですよ」 「幸せ者?それはヒナギクだろう。あれだけの恋愛音痴が最高の男を手に入れたんだから」 (誰が見ても逆じゃないかしら) マリアは突っ込みをいれたくて仕方がなかったがこらえている。
代わりに言った。 「愛というのは何も恋愛だけではないのよ、ナギ。例えば子供を思う親の気持ちは、恋愛とはかけ離れているけど何より純粋な愛ですよ」 「そ、それでは私はハヤテにガキ扱いされているみたいではないか」 (やれやれ、やっぱり全然わかっていませんね) 「例えば、よ。ナギ。そんなムキになるところはちょっと子供ですけど」 「うう・・・。人を成長した、成長したと煽てておきながらあ」 (あなたに無償の愛を捧げているのはもう一人いるんですけどね。本物の娘のように) マリアはこのセリフも呑込んだ。今、ナギはハヤテのことしか考えていないと思ったから。
「ところでね、ナギ」マリアは話を変えた。 「明日、久しぶりに三人揃いますけど、お祝いにとびっきりおいしいディナーを作ってあげますわ。何がいいですか」 「カレーだ。」 苦笑したマリアが尋ねる。 「本当にカレーでいいんですか」 「いいのだ。三人で同じ鍋のカレーを掬って食べるのだ」 あらあら・・・とマリアは微笑んでいたが、その笑顔はすぐに凍り付いた。 「そのカレーは私が作る。ハヤテの奴にお祝いなんか一言も言ってやらないが、おもてなしだけはしてやる」 (全く・・・。一言お祝いの方がどれほど良いか) 無下に断るわけにもいかず、マリアはため息をついた。
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「では、お休みなさい、ナギ」ナギをベッドに寝かせてマリアは去ろうとしたがナギが呼び止めた。 「なあ、マリア・・・。久しぶりに一緒に寝ないか」 「あら、甘えんぼさん、一人じゃ眠れませんか」 「そんなんじゃない。ハヤテが帰ってきたらもう一緒には寝てやれないからな。お前と一緒はこれで最後だ」 「はいはい」
マリアはパジャマに着替えてナギの横に滑り込んだ。 ナギの手がマリアの手に伸びた。 「どうかしましたか、ナギ」
ナギはそっぽを向いたが、マリアの手を握ったまま離そうとしない。 「マリア、一度しか言わないぞ・・・。 ありがとう。本当に、本当にありがとう・・・」 マリアは胸が熱くなった。 「ナギ・・・。本当に成長したんですね、あなたは」 「マリア、そのセリフは・・・本っっっっっ当に聞き飽きたぞ」
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