Re: 想いよ届け 〜病篤き君に |
- 日時: 2014/08/25 22:49
- 名前: どうふん
- 誰よりも優しくて他人を気遣う、という点で、ヒナギクさんはハヤテと同レベルかと思います。
そんなヒナギクさんが、ハヤテと付き合うにあたり、ハヤテを好きな友達のことが気にならないわけはありません。 ハヤテを譲る気はなくとも抱え込まざるを得ない罪悪感にも似た感情、第9話で「鉛のような感情」と表現しましたが、適切かどうかは自信ありません。ご意見が頂ければ幸いです。
また、その友達がヒナギクの「朗報」に対し、どう反応するか、考えてみました。
第11話
久し振りにみる三千院家のお屋敷は、やはり凄かった。 ハヤテとヒナギクは圧倒されつつもSPに一室に案内された。 「へ、ここ?ここ会議室ですよね」それも大勢が集まる大会議室。 ハヤテが聞き返すのとほとんど同時に部屋の扉が開き、クラッカーが鳴り響いた。
「おめでとう、ヒナさん」 「ハヤテ君、お疲れ様」
大勢の声が響いた。 そこにいたのはマリア、アパートの住人やルカ、ワタル、サキ、生徒会三人組といった、二人の友人たちだった。雪路や薫もいる。
正面には「祝 ご退院。お帰りなさい、ヒナギクさん」と横断幕が掛かっていた。 普段の会議室はさながらクリスマスパーティ会場のように飾り付けられ、所狭しとごちそうが並んでいる。
やっとわかった。SPが迎えに来たことも、わざわざ会議室に連れてこられたことも、このサプライズパーティのためだったのだ。 普段の舞踏会などに利用される会場を使わず、わざわざ会議室を会場に仕立て上げたのはサプライズ効果を上げるためか、人数の関係か。
ヒナギクもハヤテもしばらく言葉が出ない。特に何が起こるかと悪い予想(妄想と言うべきか)ばかりしていたヒナギクは全身の力が抜けてハヤテに寄りかかって腕に掴まった。
「ヒューヒュー」 「お熱いことで」会場のあちこちから歓声が飛んだ。
慌ててハヤテから離れたヒナギクに向かい、真っ先に駆け寄ってきたのは歩だった。 歩は飛びつくような勢いでヒナギクの首にしがみついた。 「ヒナさん、良かったね、良かったね」それが単に退院を意味しているのではないことは明らかだった。
「歩、私は・・・」 「いいのよ、ヒナさん。 ヒナさん、今まであれだけ頑張って苦しんできたんだから。 ヒナさんがやっと報われたのなら親友の立場として私も満足かな」 「でも、それは・・・」 「ヒナさんだってそうするでしょ。 ハヤテ君が私を好きだとしたら親友を祝福してくれるでしょ」
自分の想いを仕舞い込んで、他人を祝福する、応援するという行為がどれほど苦しいものか、ヒナギクは身をもって知っている。
しかし、ヒナギクの元に集まってきたのは歩だけではなかった。
「そんな仮定の話をすることはありませんわ。 現に私はその状況でヒナに助けてもらったのですから」 いつの間にか足元にアリスが来ていた。
「今までずっとヒナギクさんは周りのみんなを助けて幸せにしてきたんだから。 今度はヒナギクさん、あなたが幸せになる番よ。 あたしたちのことが気になるなら、あたしたちの分まで幸せになりなさい」 ルカもいた。
「まあ、そうでないと、身を引いた私たちが馬鹿みたいですわ」 「あ、私は諦めたわけじゃないから、隙あらば奪っちゃうからね」 「歩ったら諦めが悪いわね。こんなにかわいいアイドルちゃんも身を引くって言ってるのに」
「みんな・・・」ヒナギクは涙ぐんでいた。
ハヤテが三人に話をしたことは聞いている。 しかし、それはハヤテが言ったようなあっさりとした話ではなかったはずである。 三人それぞれ、あるいは涙を流し、あるいは迸りそうになる想いをこらえたのだろう。 それでも、皆自分の想いや感情を抑え、こうしてヒナギクの幸せを祝ってくれている。
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私は、いや私とハヤテ君は二人だけじゃないんだ。こんな素晴らしい仲間たちの想いを背負っているんだ。
この仲間たちのためにも、私はハヤテ君と今から本物の愛を育まなきゃ。
私とお付き合いしてハヤテ君が不幸になったら、それこそみんなに申し訳ない。
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この状況でも、自分よりハヤテのことを考えるヒナギクだった。
あ、そういえばナギは・・・?ハヤテ君もいない。
しかしヒナギクは、入れ替わり立ち替わり押し寄せてくる友人たちに遮られ、人探しができる状態ではなかった。
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