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件名:
Re: 想いよ届け 〜病篤き君に
名前:
どうふん
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2014/11/04
天王洲アテナ
⇒ 天王州アテネ
【参考】対象となる原文
Re: 想いよ届け 〜病篤き君に
日時: 2014/08/04 05:20
名前:
どうふん
第4話です。
うまくまとまらず少々長くなりました。
ヒナギクさんのご両親によって多少状況がつかめたハヤテです。
しかしハヤテにはクリアしなければならない自分自身の問題があります。
本作でも乗り越えたのかは不明ですが、私なりの解釈でモノローグを入れてみました。
<第4話>
ハヤテは病院を出てとぼとぼと海辺を歩いていた。先ほどから力なく同じことを呟きながら。
「ヒナギクさんが僕のことを好き・・・?」
ヒナギクのあの優しい母親が目に涙を一杯ためてハヤテに平手打ちを食らわせて言ったのだ。
「まだ気付かないの。ヒナちゃんとずっと一緒に住んで、傍にいて、それでもヒナちゃんの気持ちに気付いてないの」
「あ、あの、済みません、何のことでしょう」
「私が何で、ヒナちゃんがハヤテ君と一緒に住むことに賛成したと思っているの。ヒナちゃんがハヤテ君のことを好きだからに決まっているでしょう」
「・・・・・」
「私は反対したんだけどね。妻がどうしてもヒナギクのために、と言い張って押し切ったんだ」
割り込んできたヒナギクの父親は、母親を押さえて落ち着かせようとした。
ハヤテは居たたまれず、病室から逃げるように去ったのだ。
「僕は馬鹿だ。救いようもない馬鹿だ」
ヒナギクがハヤテのことを好きだとしたら、ヒナギクが必死になってハヤテを助けようとすることも、時々おかしくなることも大体説明がつく。
だが、最もハヤテに重くのしかかってくるのは、天王州アテネと再会したときのこと。
あのときハヤテはヒナギクに向かって、「(アテネは)僕の好きな人です」と言い切った。ヒナギクの気持ちに全く気付かずに。
ヒナギクはどんな思いをして、うじうじと躊躇うハヤテの背中を押したのか・・・。
そして、今さらではあるが、気付いた。アテナを助けるために一緒に戦ったあのヒーローのコスプレをした女性(声でわかる)はヒナギクだったに違いない。
「ヒナギクさん・・・。あなたはいつも自分より周りのことばかり・・・。少しくらいワガママ言わなくっちゃ、ってあなたが教えてくれたんですよ・・・。」
もっとも今考えてみると、あの時、ヒナギクに言ったことは正しかったのだろうか。
アテネと会えなくなって十年の間、いろいろなことがあった。
ずっと悲惨と不幸が続き、人に愛されることもなかった自分が、ナギお嬢様に助けてもらった後は、概ね仲間と幸せな時間を過ごしている。
マリアさんやヒナギクさんにちょっとときめいたこともある。
しかしそれでもアテネの笑顔や最悪な別れを思い出してはしばしば気持ちが沈んだ。
アテネは元気でいるんだろうか。せめて会って謝りたい。これができないと、僕はいつまでたっても・・・、そう思っていた。
実際そうだった。
ほんの数か月前、アテネに再開して相手にされなかった時、僕は周囲に憂鬱な雰囲気をまき散らしていた。
だからこそ、僕にとって他の人とは違う存在であり、「好きな人」と言った。
嘘なもんか。僕はアテネが大好きだった。
その時から僕の時間は動いていなかったんだ。
しかしアテネを闇から助け出すことができた後では、当のアテネから別れを告げられると、自分でも驚くくらいあっさりと受け容れることができた。
その時から、僕の時間はようやく動き出したんじゃないだろうか。
だからと言って、今ハヤテはヒナギクが好きなのか、と言えば違うような気がした。
恋愛対象ではないにせよ、ナギお嬢様に現在も未来も僕が守る、と誓ったことも忘れていない。
「いったい僕はどうしたら・・・」
考えが何一つまとまらないまま、ハヤテは当てもなく海岸を彷徨っていた。
「どうした、ハヤテ。さっきから」現れたのはイクサであった。
「兄さん。僕は、僕はどうしたら・・・」ハヤテは縋るようにイクサに事情を話した。
「お前は幸せ者だな。そんなことで悩めるお前が羨ましい」
「でも、でも、僕は悩むよ、兄さん。僕のせいでヒナギクさんが・・・」
「お前はあの賢そうな子が好きなのか」
「・・・わかりません」
「でも、その子はお前を好きで、お前はその子を助けたい」
「そうです」
「だったら何を悩む?傍にいて看病してやればいいじゃないか」
「・・・そうだよね。・・・・・ありがとう、兄さん」
それしかない。何としてもヒナギクさんには元気になってもらわないと。
重い足を引き摺るようにして病室に戻ったハヤテは、ヒナギクの両親を見つけるなり土下座した。せずにはいられなかった。
「お願いします。ヒナギクさんの看病をさせて下さい。こうなったのも僕のせいです。だからその償いだけでも」
ヒナギクの父親は椅子に座ったまましばらくハヤテを見下ろしていたが、口を開こうとした母親を手で制してただ一言「男が簡単に土下座なんてするもんじゃない」と意外にあっさりと頷いた。
「あ、ありがとうございます」
「土下座はやめろといったろう」
「は、はい」
「では、私たちはしばらく休むから、ヒナギクを見てやっていてくれ。」
ヒナギクの両親は去り、後に沈黙が残った。
5分後、ヒナギクの両親は病院の休息スペースにいた。
「あのヒナギクがあれだけムキになって綾崎君を庇うとはね」
「あの鈍感さには呆れるけど、だけど綾崎君はいい子なのよ。わかったでしょ」
「俺にわかったのは、『恋は盲目』ということだ」